自作でマンキンシリアス20のお題


お題名列
1エスケープ
2双子
3トモダチ
4夫婦
5過去
6未来
7親子
8きょうだい
9きっかけ
10鎖
11選択
12再生
13望み
14花
15呪い
16鬼
17運命
18繰り返す
19闇
20出口



ショートショートです。
めんどくさいので20題全部このページに載せちゃいました。
双子率が異常に高かったり近親相姦くさいのはたぶん仕様か錯覚です。




1エスケープ
 逃げている。
 あいつから。
 逃げている。
 違うことの証明を求めて。
「逃げるなよ」
 あいつは嫌になるくらいの笑顔で
 そう、言う。
 でも、そんな言葉、聞くもんか。
 逃げて、逃げて。
 逃げて、逃げて、逃げ続けて──

 反撃してやる。

「逃げてるのは、お前だよ──兄ちゃん」


2双子
 生まれた時はふたつだった。
 でも、確かにひとつだった時があった。
 今はふたつ。
 たぶんこれからも──ずっと、ふたつのまま。
「僕の為に強くなってくれ、葉。いつか迎えに行くよ……僕の半身」
 迎えになんてこなくていい
 ずっとふたつのままでいい
 “ふたりでひとつ”だなんて、そんな倒錯的な言葉は

 要らないから……

 だから、
 そんな顔でこっちを見ないで。


3トモダチ
 独りきりだった。
 まわりには死体しかなかったから。
 “友達”
 その響きは、世界で一番自分から遠いものに思えた。
 憧れていたのだと思う。
 だが──
「おおい、蓮ー、早くしないと遅れちまうぞー……」
「かまうこたぁねえぞ葉。置いてけあんな奴」
「でもよぅ……」
 “友達”か。
 くだらないことだとは思う。
 だがな。
「……おい。オレを置いていけとか言ったのはこの口か?」
「ひゃひゅひょふぇひょふ!」
「蓮ー、放してやれよぅ……」
 悪くはない。


4夫婦
「ねえ葉」
「ん?」
「あんた、こういう時は似てるわ、あいつに。そのいやらしい顔付きが」
「いやらしいとか言うなよ」
 唇を塞ぐ。
「でも、アンナは──絶対、渡さない」


5過去
 夢を見た。
 昨日より古く、
 去年よりも古く、
 古い古い、夢を。
 その夢は辛気臭い。
 そしてひとりぼっちだ。
 でも、今は。
 だけど、今は──

 ヒトリジャナイカラ


6未来
 大きくなった。
 いろんなものが。
 体も、たぶん器も、──そして傷痕も。
 失うことへの代償は大きい。
 身をもって償わされる。
 だから。
 些細なものでも、守りたい。
「ごめんな……」
 簡素な謝罪のコトバ。
 それは、守りきれなかったものへの鎮魂歌。


7親子
 同じ日に産まれた二人の息子はどうしようもない宿命を抱えていた。
 産まれて間もない極々小さな体に、自分が見たこともない闇を孕んで。
 子を守るのは親の務めだ。
 けれど、そんな義務感ではなく、心底わたしは彼らを守りたいのだと感じた。
 母性からなるものか。
 それとも、もっと深い本能的なものからか。
 そんなことはどうでもよかった。
 ただただ、幸せになってほしいと。
 わたしは祈った。


8きょうだい
 姉さんは甘い。
 ホロホロの妹は厳しい。
 葉の兄は──よく分からない。
 まわりには、意外な程兄弟持ちが多かった。理由は特に無いだろうが。
 兄弟がいるということは、それだけ家族が増えるということだ。
 以前はそれがうっとおしくてならなかった。
 “家族”という言葉は酷く欺瞞に満ちているようだった。
 姉さんにすら──時には辛く当たった。
 今思えば笑いものもいいところだ。傷つけることでしか表せないだなんて──甘ったれている。
 だが今は違う。
 そう、胸を張れる。

 ……少しばかり、気恥ずかしいが。


9きっかけ
 引金を引かせるのは簡単なことだ。
 だけど引かせないのは難しい。
 きっかけは単純なもので出来ている。
 そこらへんに転がっているがらくたが次の瞬間には狂気の理由となり得る。
 どんな理由でも、元を辿ればくだらないがらくたに過ぎないのだ。
 ヒトを否定するようになって気付いた。
 優れた人類しか認めない──自分の掲げたその意思こそが、がらくたで形作られたエゴなのだと。
 気づかないでいるのは簡単だ。
 やはり、気づく方が数倍難しい。
 ならば何故、気づいたのか。
 そのきっかけはおそらく。
 愛すべき人類……弟の、真摯な眼差しなんかなのだろう。


10鎖
 繋がれている。
 重く冷たい、鎖に。
 因縁よりも深く。何よりも永く。運命のしがらみに。
 繋がれているのは自分
 繋いだのはあいつ
 だけどあいつもまた、繋がれている。
 互いを互いが束縛しあう、皮肉なぐらい複雑な繋がり。
「お前は僕のこと嫌いなの?」
「……よくわからん」
「じゃあなんで逃げるのさ」
 誰か、誰か。
 この鎖をほどいてください。
 シンプルじゃない関係
 自由になりたいから
 誰か──


11選択
 彼には選択をする権利がありました。
 友を見殺しにするか。
 己を捨てるのか。
 結論として、彼は後者を取りました。
 それは愚かなことなのだとマルコは言いました。
 けれどその選択は彼の生きざまそのものを映しているのでしょう。
 だからとても残念です。
 彼をハオと同等に裁かねばならないことが。


12再生
 廻る。
 幾度経験しただろう。
 感慨なんてとうの昔に忘れた。

 肉体が腐敗して大地に還っても魂はなくならない。
 浄化されるだけで、根底には前の生が残り続ける。
 延々輪の中を廻り続けて、つまらないときを過ごす。
 耐えられたのは理想があったからだ。
 1000年廻って良かったことなんて数えるほどもない。
 1000年の中で初めて血を──いや、文字通り魂を分けた存在に出逢えたことが良かったのかどうか──
 それはまだ、分からない。


13望み
 何を望んで生まれてきたのだろう。
「還っておいで。ひとつに成る為に」
 そう、望まれた。
「あの子はわしらの希望なのじゃよ」
 そう、望まれた。
「約束破ったら、たぶん許さない」
 そう、望まれた。

 望まれるばかりで。
 自分から望んだことなどあっただろうか。

「誰も傷付けたくない」

 ならば、この想いは、
 望みなのだろうか?
 それとも、唯の我が侭にすぎないのだろうか。


14花
 蓮には蓮の花
 アンナには彼岸花
 彼らには花がよく似あう。
 人は存外気丈に出来ている。
 だからまた、花だってだいぶ丈夫だ。
 落ち込んだって、すぐには折れない。
 なら、自分は?
 強いと言えるのか。
 彼らのように
 花のように
 気丈であると言えるのか。

 答えはたぶん、すべてNOだ。
 そうでなきゃ──

「おに……ちゃ……」

 逃げたりは、しないだろうから。


15呪い
 あたしの呪いは葉が全部解いた。
 葉の呪いのうち、ひとつはまん太が解いた。
 残りの呪いは、あたしには解けない。
 それはひどく強力だから。
 触るだけで、彼を壊してしまいそうで。
 恐ろしくて恐ろしくて──とても触れたものじゃない。
 あたしには見ていることしか許されない。
 そうしている内に──
 今日もまた、呪いが彼を蝕んでいく。


16鬼
 あたしの中には鬼がいた。
 その鬼は紛れもなく自分自身。
 でも、わからないふりをした。
 どうせあたしのことなど誰もかまってくれないのだ。真実を見据える必要なんてない。
 そう、思ってた。
 だけど、突然降ってきた光は眩しすぎて。
 否応なく、あたしを現実に引き戻す。

 眩しい光に恋をするまで、
 そう時間はかからなかった。


17運命
 “運命”だなんてふざけた言い訳は、知らない。
 根拠のないてかてかした理由。
 理屈も何もあったものじゃない
。  だけど不思議なくらいに心を掴む響き。
 理想と現実の相反する事象。
 理性とは正反対の衝動。
 全部ひっくるめて。
 それまでの道筋とはおよそかけ離れた結末すべてを、無責任なその一言で片付けられるのならどんなに楽だろう。
 それならば。
 こんなに心は、苦しくないのに──


18繰り返す
 繰り返す。
 毎日を。
 規則正しく割り振られてはいない。
 ただ、曖昧で、
 今日と明日の境界線は見えないけれど。
 けして無意味にすぎていくわけじゃない。
 集まって騒いだり。語らったり。時には空を、眺めたり。
 過ごした時そのものが輝いているはずだから。
 だから繰り返す。
 できうる限り。
 許された時間内で、
 楽しかった時間を。


19闇
 光があるから闇が生まれる。
 闇は孤独を生み、やがて鬼を生む。
 鬼を浄化するために光が寄ってくる。
 そしてまた、より深い影を落として光は消える。
 何処までも続く堂々巡り
 消えない光がやってくるまで
 あたしの鬼はいなくはならない。


20出口
 G.Sの中の、
たくさんの記憶の中に。
 懐かしいにおいを見つけた。
 覚えのない記憶。
 だけれども、懐かしい
。  それはきっと遺伝子に刻まれた記憶
 魂が憶えているにおい
 思わず伸ばした手は、記憶を掴むことは出来なかったけれど。
 もうひとつの柔らかい手に、包まれた。

 出口はすぐそこにあるけれど
 もう少しだけ……微睡んでいたい。