双子だって知らされた時、ああ、そうか、と納得する自分がいた。



それは絵空事でしかないけれど。



ずっと一人っ子として育てられてきて、やっぱり兄弟が欲しいと思ったことが何度かあった。
それは自分の孤独を埋めるためかもしれなかったし、もしかしたら、もっと違う何か──例えば、漠然とした憧れといったもの──があったのかもしれない。
どっちにしろ、今はもう分からないし関係ない。
 考える気もしないし、考える必要も無かった。


 “自分”という曖昧な自我について考えることがある。
自分は麻倉葉という一人の人間で、でも本当は麻倉葉王っていう瓜二つの兄がいて──途中で頭がこんがらがって、何がなんだかもう分からなくなってしまう。
それは分かりたくないっていう暗黙のサインなのかもしれない。でもよく分からない。
何が分からないかって聞かれたら、自分のことが一番分からなかった。



逆に、兄の孤独は分かる気がした。



単なる傲りなのかもしれない。

分かってなど、いないのかもしれない。

兄に話したら、笑って否定されるかもしれない。



 それでも、



自分が哀しい時はきっと一緒に泣いてくれただろう、そんな気がした。


例えそれがただの絵空事でしか無かったとしても。


夢を見たいのかもしれない。

暖かな思い出を、
有る訳の無い記憶を、
そこに見いだそうとしているだけなのかもしれない。

そこにあるのは、


壊れた玩具の残骸なのかもしれない。

信じられるものなんて無いんだよって

あの時あいつが哀しそうに笑ったように




“人は皆僕達を裏切る。裏切らなかった奴なんていない。人間は何と愚かなのだろう。
……葉、この世に信じられるものなんて無いんだよ。あえて言うのなら葉、それは僕にとってお前だけなんだ。僕は、お前だけは──”



信じられるもの、それはすぐそばに有るような気がしていた。

真っ向から否定されても、


まだ、


手を伸ばせばそこに届くような気がした。

それは絵空事なのだと、兄は言うのだろう。

それならば、



隣にいる貴方はなんなのと



貴方の言葉が正しいとするのなら



いずれ貴方も、



裏切るのですか、と






「……だったら、いつか、お前もオイラを裏切るんか……?」



 答えはきっと、こうなのだろう



「そんなわけないだろう? お前は僕の、たった一人の弟なんだから」





これは夢?
都合のいい幻?
……それとも、受け止めなければいけない現実?



残された、本当の答えは──







end?



あとがきー
もうカップリング表記ハオ葉にしたい衝動。
ただのガチじゃないかこれ・・・・

昔ものすごく欝だったころに書いたというのを漠然と覚えています。私はこういう欝いのも好きなんですが。