あとがき
少年の聖性というものに惹かれる瞬間が数限りなくあります。少女のもつそれと同じように、時にはより強く、衝撃的なまでに熱狂的に。けれど同時に、惹かれるからこそ、私達は知っているのです。ルイス・キャロルの愛したアリスが少女のままではいられなかったように、永遠に大人にならない少年は、そこで息を止めてしまった子供だけなのだと。
難しいことをごちゃごちゃ言ってみましたが、要するに一過性の過ぎゆく季節だからこそ、私はこんなにも少年に惹かれてやまないのかな……少年めっちゃ神聖……尊い……とかいう、そういうアレです。実はwebで書くつづきものにこんなにセックスシーンを入れたのははじめてだったんですけど、こんなにきれいでうつくしいんだから、悪い男はそりゃもう……抱くでしょう。しかたないね。
レベレーターのストーリーモードを通して観賞して、しばらくはそのあまりのみなぎるパワーに圧倒されて息も絶え絶えでソルカイやばい……とかソファの上で大の字になっていたわけですが、そこから少し時間が経って落ち着いてみた時に一番はじめに感じたのが、カイ=キスクという存在が、もうどこも、子供ではなくなってしまったのだな、ということでした。あどけなさも幼稚さも何もかも抜け、すっかり大人になり、今はソルを諭しさえするカイの姿に私はいたく衝撃を受けました。だって彼も昔は少年だったのに。ソルが彼を坊やと呼んではばからなかった頃、彼が聖騎士団に所属していた時分は勿論のこと、会えば出会い頭に勝負だなんだとふっかけていたカイは、まだ子供の横顔を私達に見せていたはずのに……と、そう思ったのです。
「二言目には『勝負』だのなんだの、あれほど喧しかったお前が、いや……お前だけが、未だに何も訊かねえ。」
「あの頃はお前を剣で打ち負かすことしか考えていなかったからな。他のことはどうでもよかったのさ。」
まさかのピンクフレームの眼鏡を掛けながら書類仕事をしていた彼の、「何をだー?」とか「訊いていいのかー?」みたいなめっちゃながらの気安い声も大分ふじょしの心臓に突き刺さって死にそうだったんですけど(ksoさんありがとう……最高でした……)、この部分が一番心臓抉り抜いてきて、致命傷をいただきました。ゾンビは二度死ぬ。もう三度は死ねる。
もう大分立ち位置も(いい意味で)おじいちゃんになりつつあるソルが自分の過去を開帳したがっている一方で、カイだけは、それを頑なに尋ねようとしない。ああ、ずるいな、と思うわけです。ソルはもしかしたら、いっそそれを詳らかにして共有することで楽になりたがっているのかもしれないし、そうでなくっても、カイにならそれを教えてもいいと思っている。でも訊かない。その上、こうまで言う。——「しかし相手を理解したい気持ちと、全てを知ることは違う。私にとっては、フレデリックという男の過去よりも、ソル=バッドガイの未来の方が大事だ」。
自分は、ギアになったことをまだ誰にも隠しているから。それもきっとこの言葉には暗に含まれていたのかなと思う。
その瞬間彼は決定的に大人になってしまったのだと思い知らされ、結果的に、私は少年時代の彼を想ってなんだかわけのわからん妄想を綴るに至ったのでした。
レベレで衝撃的だったことと言えばあの男こと飛鳥くんの素顔ですが、シンの眼帯と共通する右目の羽モチーフ、額……いばらの冠に被る位置に刻まれた真っ赤な十字の聖痕、そしてなによりカイに似ている(ようにふじょしには見えるのだ)面差し、とどうにもキスク一族に通じる部分が多すぎて、絶対血縁関係ありますよこれ!!と勇み足になってまあそんな感じの妄想をいっぱい膨らませました。飛鳥の顔モデルがカイに似てるような気がするのにはものすごいメタ的な話をすればカイのモデルが流用されている可能性もあるのですが、あの顔はどっちかというと今のポニテ連王より聖騎士団団長に似ている。そうに違いない。そうであってくれ。そんなことを悶々と考え、でもカイのクローンの話はこの前やったので、ちょっと変化球で単為生殖もどきにしてみたりなんだり。全然捻ってないような気もするんですが。
でも実際カイが飛鳥と血縁関係あったら、結果的にシンにはアリア・フレデリック・飛鳥全員の遺伝子が混ざったことになってしまい、ただでさえソルとカイの遺伝子が合法的に混ざってて業が深すぎるのに、これ以上あの業が深まることなんてあるのだろうか……とも思ったんですけど、同人だから好き勝手やりました。それにしても第一の男が飛鳥コンプレックスすぎてあとで本当に第一の男が出てきた時に(私が)もんどり打って死んでそう。
聖騎士団時代のソルカイというかカイという少年の在り方が好きすぎて常に死んでいるんですが、あの頃のカイは、ドラマCDとかだと今と変わりのない凛と張り詰めた大人びた声で部下に指示を出していたりしたように感じつつも、あれってよそゆきの「公人としてのカイ」の殻にすぎなくて、その中身はまだもっと幼く、うぶで、やわらかく、未熟だったのではないかな……ということに定期的に想いを馳せています。今のカイなら、もしソルの腕の中で果てることがあるとして、後を頼むだなんて、言えるのかな。
しかしその一方、そんな少年のカイを支えたのは紛れもなくソルだったと思うのですが、彼を大人へ変えて行ったのは、ソルではなくディズィーだったのではないかと、漠然と思っています。ソルの知らないうちに坊やは大人になっていて、いつの間にか酒を酌み交わす約束なんかもしたりして、そういうところに、彼らの関係性が持つあたたかみと歳月を感じるのです。
ところで親友とずっと一緒にいたい! という100%善意の行動理念で勝手にフレアリをギアに改造した挙げ句(いやアリアは許可取ってたかもしれないけど)結果的に聖戦を引き起こして人類を六十億から二十億まで減らした飛鳥くんも大概サイコ入ってると思うんですが、「人類の永遠に続く幸福」などというものすごい理想を掲げて慈悲なき啓示を創った第一の男はそれに輪を掛けてやばい存在のような気がしています。更に恐ろしいのは「人類の永遠に続く幸福」という考えの指向性がカイにやや被っていることで、そういうのもあって飛鳥の遺伝子からカイを創ったのは第一の男という設定に落ち着いたのですが、それを考えている時ふと疑問に思ったのが、何故飛鳥だけがギアメーカーとなり、他の使徒四人は元老院になったのか、ということです。背徳の炎とユノの天秤という二つの重大な種を、第一の男は飛鳥だけに渡している。そこにはやっぱり大きな意味があるのではないだろうか。もちろんこの話の中で描いたような飛鳥コンプレックスからではないと思うのですけど……。でも個人的には第一の男×飛鳥はめっちゃありですね……。
……書きたいことはまだたくさんあるのですが、これ以上お見苦しい話を続けても後で顔から火を噴くだけなので、ここらで終わりにしておこうかと思います。
最後に、謝辞を。あっちこっち迷走する内容をチェックしてくれた友人、いつもありがとう。そろそろフォルトレスディフェンスを覚えたからまた対戦つきあってね。それから、トップページにイラストを使うことを快諾してくれた波吉、いつもお世話になってます。最後のほうの眠っているカイの顔のイメージまんまぴったりで、最高です……。
そしてここまでお付き合いくださった皆様に感謝をこめて、ここで筆を置かせていただきます。ありがとうございました!!
2016.06.13 倉田翠
作業中BGM♪
「Sheep Will Sleep (,if You Become Fatigued)」(石渡太輔)
「DAN DAN 心魅かれてく」(ZARD)
「Blind Justice それぞれの正義」(Zectbach)
「Ark」(Sound Horizon)
「貴方に花を 私に唄を」(Re:nG)
他