#2 ふたりのハオ


「葉が、危ない・・・・・・?!」
「そう。かなり危険よ。・・・・・・この数値を見ればただごとじゃないってことがわかる」
 ピッ、という音がして各自のオラクルベルにある数値が送信される。
「・・・・・・・・・・・・なんじゃと・・・・・・・・・・・・?!」
 その場にいた皆が驚愕に目を見開いた。
 オラクルベルに表示された数値とは、すなわち葉の巫力。
 それが今。
 止まることなく上昇を続けていた。
「87万・・・・・・96万・・・・・・104万・・・・・・122万・・・・・・」
「上昇が止まったわ。これが今の葉の巫力値だと思って差し支えないはずよ」
 アンナが静かに言う。
「しかし、そんなことを言われても、」
「信じられるものではないぞ?!」
 誰かの言葉を、また誰かが引き継ぐ。
「しかしオラクルベルは嘘をつくまい。・・・・・・もちろんアンナも」
「と、言うことは・・・・・・麻倉葉の巫力は現在・・・・・・」



「135万8000中129万8000。・・・・・・というところだろうな」



「アンナ。こうなったことのおおよその予想はついているのだろう?」
 葉明がアンナに聞く。
「そうね、だいたいなら」
「ならば・・・・・・今ここで、我々皆に話してはくれんか」
「・・・・・・わかったわ」
 ゆっくりと、アンナは頷いた。





◇◆◇◆◇





「う、あ、ああああああああああ!!」
「葉?! おい葉!!」
「葉君!!」
 葉は苦しみ続けていた。その様はまるで見えない何かに蝕まれているようで――実際のところそうだった。
 葉は確かに蝕まれていたのだ。「葉王の記憶」という目に見えぬ荊に。
「っ・・・・・・オパチョ!」
「なに、ホロホロ」
「おめぇ・・・・・・ッ葉にいったい何したんだよ!」
「落ち着けってホロホロ!」
 ホロホロが激昂してオパチョに詰め寄り、それをすんでのところでチョコラブが引き留める。
「オパチョはハオの野郎に言われたことをしただけで、何も知らねぇ可能性だってある!それに何よりこんな小さい子をいじめてどうするんだよ」
「う゛っ・・・・・・でもなぁ!!」
 なお引き下がらないホロホロの頬に、スパン、と短い平手が入った。
「いい加減にしろ。見苦しいとは思わんのか貴様は」
「蓮・・・・・・」
「理不尽な思いを抱えているのはお前だけではない。ここにいる皆が、同じ気持ちだということをさっさとわかれ」
「・・・・・・・・・・・・」
「れん」
 オパチョが唐突に蓮に呼びかける。
「オパチョしってる。ようさまがどうなってるのか、しってる」
「なんだと?」
「オパチョいわれた。ようさまのなかにあるハオさまのきおくをよべばいいって」
「葉の中にある・・・・・・ハオの記憶・・・・・・?」
「みんな!」
 オパチョの意味深な言葉に固まっている皆に、リゼルグが呼びかけた。
「あんまりそこにこだわってる暇はないみたいだ・・・・・・葉君が」
 見遣れば――葉は動きを止めていた。長く続いていたうめきも止み・・・・・・だが心の侵蝕はまだ続いているのであろう、表情に若干の空虚さが見て取れた。
「あの状態は、どう見積もってもプラスには働かない。どうにかして葉君を元に戻さないと・・・・・・!!」
「・・・・・・!!」
 リゼルグの必死の呼びかけに、皆もそちらを振り向く。



 その時。
 空を裂くような、鋭い葉の声が響いた。
「みんな・・・・・・後ろにさがってくれ!!」
 その後は一瞬だった。
 葉の表情が虚ろさを伴ったやるせない表情から一転、強い感情のこもった瞳になった。





 そして、




「焼き尽くせ、スピリット・オブ・ファイア」



 確かに葉のはずなのに――まるで葉とは違う、冷たい声がして
 爆音が響きわたり、全てが終わった。





◇◆◇◆◇





「へぇ・・・・・・なかなかやるじゃないか、僕の弟は・・・・・・」
 満足そうにハオは微笑む。
「待っているよ、葉・・・・・・早くおいで。僕の元へ」



続く




あとがき
一体どうしてしまったのだ麻倉葉。みたいな話を目指しました。
感触としては灼願のシャナ14のような。「なんてこったい!」と書いてる本人が思ったのでまあよし。
ちなみにタイトル書いててふっと「二人のロッテ」を思い出しましたがそちらは無関係。
しかしいつまでこんな痛い話書いていられるかな・・・・・・ほんと

途中でさじ投げ出さないように頑張ります。

次は葉様真・覚醒編にしたい。





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