※性行為の描写を含みます。高校生以下の方は閲覧をご遠慮ください。
・セカンド様が当然のようにふたなり
・妊娠します
・誘い受けセカンド様
・若干ですが子供?の容姿へ言及あり
・謎時系列
・その他地雷原増量でお送りしております
・閲覧の際は以上の点をふまえて自己責任でお願いします。
けがれなきこども
長いオレンジの髪が俺の視界で揺れている。初めは女かと思ったが、すぐに、それは気の迷いだということに思い至った。女よりももっとたちの悪い何かだ。「真月零」の幻をその身に宿す人でなし。「究極体ゼアルセカンド」。
ぎり、と歯ぎしりをする。その肉体は、姿は、俺にとっての悪夢の象徴に他ならない。殺したいほど憎たらしい遊馬くんがアストラルに不誠実を呑み込ませ、「真月零」の許容をさせた上で顕現したゼアルセカンドは遊馬とアストラルの複合体でありながらところどころに「真月零」のシルエットを写し込んでいて、俺はそれを認めた時に度し難い感情と吐き気とを催したものだ。
辺りを見回すが、果てのない暗闇ばかりが広がっていて俺とゼアルセカンド以外には何も見当たらない。上手く状況が飲み込めずに生唾を呑んだ。一体何が起こっているのか? 幸いベクターは拘束などは特にされていなかったが、出口がなければ逃げようもない。
ベクターが目を覚ましたことが物音で伝わったのだろう。ふと、ゼアルセカンドが幽鬼のように振り返った。
「あ、起きたんだ。良かった。目、覚まさなかったらどうしようかと思ってさ……」
「は?」
「やっとやりたいこと、出来そう」
にこり、と笑う。その時俺は背筋を駆け上がっていく怖気を自覚し、柄にもなく全身を震わせた。理解せざるを得なかった。かつて奴に焦がされた羽根の付け根が痛む。バリアンという人間より遥かに頑強な肉体を持ってしてもゼアルセカンドの人智を超越した肉体には無力だ。
捕食者とその獲物の構図。――今から、俺はこいつに喰われる。
「ベクター」
ゼアルセカンドの体から厳ついアーマー装備が解除されいずこかへと消え去る。本能的に危険を感じて後ずさったが意味がない。そのまま押し倒され、紫苑のすべらかな硬い肉体に生白い皮膚が触れた。ゼアルセカンドの指の感触は、人間の九十九遊馬のものとそう変わらなかった。だが僅かに細く、長く、あの健康的な少年よりも儚い女に似ていた。
腰布を捲りあげ、穴も突起も何も付いていない肢体を確認して「マネキンみたい」と目を細める。そのまま小ぶりな形のよい唇が股間に近づき、あろうことか、ぴとりと口づけた。
「なっ……テメエ、何考えてやがる……?!」
「ん……ふ、へんなの……ベクターの、人間の体とおんなじ味がするんだ……あ」
「は、はぁ……?」
「ん。出来た」
ちゅぱちゅぱと巨大な飴を溶かすのと同じ舌つきで股間を舐められ、不覚にも真月零として遊馬に奉仕をさせていた頃の記憶がぶり返し、息遣いが荒くなる。舌による愛撫は教え込まれた遊馬のものそのもので、考えるべき疑問を溶かして消してしまおうとする。麻酔か何かか、と毒づいた。あの奇跡の力を使って、どんなろくでもないことを成すつもりなのだ?
その疑問の答えは存外早く知れた。有りもしない恥部が勃ちあがるような感覚を覚えて舐められていた股間に視線を落とし、絶句する。
「なんだ……これは……?!」
「見ればわかるだろ。ちんこ。バリアンってちんこないんだな……でも、ないと困るし、今創った。真月の時よりちょっとごつくなっちゃったけど」
「そういう話をしてるんじゃ、ない!」
「えー。だいたい、俺が服脱いでんのにさ、何やると思ってたんだよ。こういうことでもなきゃ武装解除なんかしないもん」
「今創った」らしい男性器に両手の指を添え、舐るようにフェラチオをしながらゼアルセカンドがうっとりとした目でベクターを見てきている。事態が全く飲み込めない。気持ちいい。ヒューマノイド・モードの時よりも幾分も大きくグロテスクな肉の棒を、女めいた外見の奴が口で咥え愛撫している。
どうしようもなく倒錯的な光景だ、と思った。だが快感を得ることは自分の意志では止められないし、巡っているのかもわからない血液が性器に集まっていくのを阻むことも出来ない。ゼアルセカンドが俺に雄としての機能を望み、性交の準備をしていることは嫌でも理解したが、動機が一切読めない。
だいたい何でゼアルセカンドはこう女めいているのだ。中性的な細く華奢な体つきに長い髪を揺らして、全体にふっくらと柔らかいラインを持っている。少年の未熟であどけない遊馬の肉体に興奮していた手前自身の性癖を擁護するつもりはないが――だいいちあれは気紛れの戯れであって――ゼアルセカンドの肢体は恐ろしく艶めかしく、扇情的で、どうしようもなく雄を誘う腰つきをしていた。
性的すぎる。なんだこれは。
こんなの遊馬じゃない。絶対おかしい。
なけなしの理性の叫び声に耳を傾け、そそり立つ男根に舌を這わせるセカンドを引き剥がして投げ飛ばす。セカンドは直前まで淫靡に口に性器を咥え込んでいたとは思えない身のこなしで受け身をとり、軽やかに着地して不思議そうな顔でベクターに向かい合った。
「なにすんだよお」
「だーっ、遊馬みてーな声で話すな! 誰だテメエは!! そりゃ確かに俺は遊馬にあらゆる悪徳を教え込んだ。セックスも教えた、俺に溺れさせるために!! だがそんなふうな、……変態には育ててない!!」
「俺別に偽物とかじゃないし。あと育てられてないし。俺は、ゼアルセカンド――の中の遊馬の意識だよ。ヌメロン・コードもある。ほら」
「世界創世の奇跡を何に無駄遣いしてやがる!! 大体においてアストラルとオーバーレイしてるはずの奴がそんな羞恥のないことが出来るわけが」
『なんだ。年頃の娘を窘める父親のようなことを言うのだな、ベクター……私の遊馬を穢しておきながら……』
「は……アストラル……?」
『しかしそれについては不問としよう。遊馬が服従を強制されていたわけでもなさそうな以上、君ばかり責めるわけにもいかない。……我々は。ゼアルセカンドには、今君の精液が必要なのだ』
「出てきたと思ったら真面目な顔で何言ってるんだお前は?!」
セカンドの背後に透き通る体のアストラルが、薄ぼんやりと浮かんでいる。そういえばゼアル体で遊馬主導の時はアストラルは背後霊のような風体でそこに現出出来るのだったか。
恐らくエクシーズ素材のオーバーレイユニットとして表に出ている感覚なのだろう――いや。今大事なのはそんなことではない。
「というか、俺の精液で何をするつもりで……」
「ん。赤ちゃん産むの」
「――ハァ?」
「ベクターのバリアンの力と……俺のゼアルの力で、新しい創世をしようって。そのためにベクターの赤ちゃん妊娠するから」
「いや、意味が分からん」
『ゼアルセカンドが世界という子を孕むのにバリアンの精液が必要だということだ。君がいやならば、そうだな……ミザエルやドルベ、アリトあたりからセカンドの体に摂取させても構わないのだが』
「ふざけんな俺以外に股開いてみろその首飛ばしてやる」
『だそうだ、遊馬』
「じゃ、いい? 俺もうさ、早くベクターのこれ……」
つんつんとセカンドの指がベクターの男性器をゆるくなぞる。既に先走りを垂れ流しはじめていたベクターの体はそれに過敏に反応し雌を求める本能に抗い切れずにいることを如実に示していた。
セカンドの体が馬乗りになる。そうして抵抗の余地を残さないまま、
「ほしくて、仕方ないんだけど……」
上からの重圧で無理矢理ベクターの自身をセカンドは自らの胎内に受け入れた。
「テメッ……この、アバズレが……ッ!!」
「あ、ん、やっぱおっき……すげぇな、バリアンの体って人間よりずっと頑丈で……おっきいのに……気持ちいいのに弱いのは……はぁ、一緒なんだ……?」
「お前がそういう風に作ったんだろうが! こんなに酷い奇跡の無駄遣いは俺は初めて見たぞ!!」
「いいんだよ。世界一個作るんだから」
騎乗位の態勢のまま、セカンドがベクターの上で腰を降っている。主導権を完全に握られ尊厳を踏みにじられている状況であるのにも関わらず受胎のためだけに生み出された男根はセカンドの肉体のいやらしさにすっかり魅了されてしまっているらしい。きゅんきゅんと内壁に締め付けられる度に質量を増していく。ベクターの意思を無視して性器だけが肉欲を持っているかのような理不尽さがそこにはある。
そもそもにおいてバリアンに性交などというものは必要がない。子供をなして繁殖する必要がないのだからそれは必然であり、従って性欲もバリアンの体には宿らないのだ。人間の肉体を持てば肉体年齢相応の肉欲が宿るので、であるからこそ辱めて視覚的に楽しむという題目もつけて遊馬には性的な奉仕を強要したりもしたが――
こんなことは望んでいない。何故ベクターが翻弄されねばならないのだ。
「つうか妊娠とか出産とか遊馬のその頭で本当に意味を理解してんのか。お前は男だろうが。ゼアルセカンドも、……外性器があるように俺には見える。男じゃないのか――アストラル!」
『ベクター。人間世界の多くの神話には、創世という母性的な能力を備えながらも、性差による権威等の問題で外見的特徴は男性に分類される神が多く存在する。後に母性部分が女神として分裂するパターンもあるが。……君にならわかるのではないか、この意味が……』
無言でそばに浮かびベクターを蹂躙するセカンドの姿を澄まし顔で眺めていたアストラルに半ばキレかけながらも問いかける。するとアストラルはフッ、とそれが些細なことであるかのように笑いそんな意味深な言葉を語った。ベクターの頭の中を下半身から伝いあがってくるぞくぞくとした快感とアストラルの言葉へのさっ、という青ざめとが入り混じり、ぐちゃぐちゃに乱れてかき乱した。
「まさか……セカンドの肉体は……」
『さあ? どうだろうな?』
「え、おれのからだ? ァ、ふ、んん……アストラルが、はぁ、りょーせーぐゆーだって言ってた! だから今ベクターが入ってるのは女の器官らしいんだってぇ……あ、ぁ、ここきもちいぃっ!」
「もうお前大事なこと喋りながら変に喘ぐのやめろよ畜生! 俺は冷酷で残虐なるバリアン七皇のベクター様だぞ! それがなんだってこんな小娘みたいな野郎にいいように使われなきゃならねえんだ!!」
「でもベクター気持ちいいの好きだろ? だって、俺に……遊馬にいっぱいえっちなことさせてたじゃん。ちんこ舐めさせたり、お尻の穴に突っ込んだり、あれ、ベクターの趣味だろ? なぁ……」
「そォいう問題じゃ、ン、ねぇんだよォ!!」
畜生抜けよ、などと叫んでからまるで立場が逆だということをまざまざと思い知らされ頭を抱えたくて仕方なくなった。普通これはレイプされた女とかが絶望を露わに嘆願するような台詞ではないのか。なんでゼアルセカンドは俺の上で腰を振り肉を絡ませ精液を搾り取ろうとしているのか。それも俺の意志はお構いなしに……もしかしてこれが噂の逆レイプってやつなのか。意味が分からない。
ふつふつと怒りにも似た感情が快楽の隣で沸き上がってくるのを感じた。正直に白状すれば遊馬とのセックスに俺はいつもひどく興奮していた。遊馬を抱いてあられもない姿に変えていくのに堪え難い劣情をもよおした。セックスは嫌いじゃない。……ただしそれは、俺が遊馬を支配し翻弄する場合に限って、だ。
こんなものは望んじゃいない。
「あはッ……べくたぁ、おまえ、さ……ちんこガチガチなのにまだふとくて、ん、おっきくなるの……は……すご……」
「おい、遊馬ァ……いや、セカンド、か? まあこの際、んなのはどうでもいい。お前、自分から脚開いて……咥えといて……今更ギブアップなんぞ認めねえからな……」
「ふぇ? えっ、や、なんで、抜いちゃうのぉ……ッ?!」
「今更後悔しても遅えからな、精液搾り取るための機械みてぇな扱いされて黙ってられるかこの……淫乱売女野郎が……!!」
ぶつりと理性の鎖が切れて落ちる音がした。ずるりと男根を引き抜き、セカンドの体を無理矢理うつ伏せにひっくり返す。肉の柔らかさは女そのものだ。だが股間の男性器は上向き興奮を示している。両性具有。よくわからないし、理屈など理解したくもないが、今なら目の前の人でなしは俺の子を孕む。
もうそれで全ていいと思った。
この女でも男でもない、遊馬とアストラルと、そうして俺の幻想で形作られた神擬きが、俺なんぞの精子でその腹を膨らませるというのなら、その喜劇を見届けない手はあるまい。
「お望み通り孕ませてやる。感謝しろよ……なぁ……腹が壊れるまでぶちまけてやるぜ……!!」
そのまま尻を突き出す格好で固定し、今一度性器をねじ込んだ。
「?! ひぁ、あ、あ、あっ、ア、ッ――――――?!」
声にならない悲鳴と、嬌声が混じり合ったつんざくような声音が俺の聴覚を満たした。自分で動かしていた分据わりが悪かったものが急に自らの意志を離れて不随意に律動を始めたので一息に持っていかれてしまいそうになっているらしい。がくがくと膝が震え、しかし、胎内は浅ましく屹立した雄に絡み付きねっとりと膣壁をうねらせている。搾り取る気だけは今なお健在か。内心でそう毒づいた。
態勢を入れ替えてすぐにセカンドに異変が生じるのが結合した陰部越しに伝わってくる。主導権を奪われ、後ろから先より激しく突きを繰り返されることで呼吸が乱れ余裕がはげ落ちていく。覆い被さるように腰を引き寄せると切羽詰まった嬌声とだらしのない涎が口から漏れ、髪の穂先がベクターの胸部をくすぐった。オレンジの長い跳ね気味の髪の毛。跳ねっ返りの角度が、真月零にとてもよく似ている。
「ああ、クソっ……」
「ひゃぅっ?! いじわる、いじわるやだよぉっ」
「そんなに真月零に抱かれるのが好きだったかよ遊馬……その結果がこれか? ン? 強欲だなまったくよぉ……まぁ、そうでもなきゃ、ふっ、こんな手段は取らねえだろォ、なァ、」
「ちがうのぉっ、おれぇ、ぁん、ふぁ、あっ、そこしゅきいぃぃきもちいいっ」
「ハァ? 何が違うんだ? 答えてみろよゼアルセカンド様よぉ!! それとも喘ぐだけの能なしか?」
「ひがうのおぉ赤ちゃんつくんの、ぁ、――ッ、いちばんエネルギーこーりつが、ひぐっ?! いーから、」
「へー、そうなんですか。僕もっと違う理由かと思ってました……よッ」
ドス、と一番奥深くまで叩き込むと一際高くセカンドが啼いた。目を見開き、舌を口からはみ出させて、歓喜の産声を上げるように体中を色めきだたせている。体中が火照るだなんて言葉で済まされないほどに高い熱を帯び、その身に宿る女の部分ばかりでなく全身で雄を――俺を熱烈に歓迎している。なんでこんなのが俺より高位の存在で俺をデュエルで負かしあまつさえ創世の力を持っているんだ。絶対おかしいだろ。こんなのただの色情狂か何かに相違ないぞ。
いわゆる子宮口を探り当ててしまったらしく、セカンドのよがり方は先ほどまでの比ではないぐらいに酷くなっていた。遊馬しか抱いたことがなかったから知らなかったが、前立腺をこれでもかと責め立ててやった時よりも感度やら何やらがいい気がする。女の体はよくわからない。そういえばクリトリスなんて探してすらいなかった。少し勿体ないような気がしないでもない。
「ひゃだ、かたくてふといの、おれんなかいちばんおくにあたって……あぁ、ダメんなっちゃうぅ……」
「最初からダメダメでしたよぉゆうまくぅん……だから心配しないでいっぱい気持ちよくなってくれればいいんです。ほらぁ、おちんちんの先っぽと遊馬くんの子宮口とで、今、僕たちキスしてるんですよぉ。正常位に戻せば、ふふっ、一度に上でも下でもキス出来るんですねぇ。便利なからだ、ですっ、ね!!」
ぱちゅん、ばちゅん、ぐちゅ、ぷちゅ、ずちゅ。激しい交接の繰り返しですっかりセカンドの膣口は泡立ち、愛液はカウパーと混じり最早判別がつかない。ぐずぐずに解けて濡れそぼった胎内の柔らかさにはいっそ罪深さすら感じるようだった。とろとろにとろけきったセカンドの表情が時折、視界にちらつく。その処女を奪われた聖女のような顔に、遊馬に初めてセックスを教えた時よりも強い苛立ちと背徳を覚え、舌打ちした。
それを見かねてか、スッ、とアストラルが寄ってくる。
『どうでもいいが何故君は今真月零の口調を用いているのだ』
「だーっうるせえなテメエまだいたのかアストラル! そんなのなんだっていいだろ!」
『うむ。あの体に戻って人の快楽を味わうのも魅力的だが、こちらの方が興味深いのだ。……これが、嫉妬というものなのか、ベクター』
「……!!」
『何故、究極体ゼアルセカンドがあの姿なのか。私も初めはわからなかった。以前のゼアルは私と遊馬を掛け合わせた外見として納得が出来たが、今回のこれはどうもそればかりではない。……私は考え、そして気がついたのだ。「真月零」という存在に』
「……何が言いたい」
『遊馬にとって、彼の存在は耐え難く失い難い大きなものだった。――今でも』
余計なお世話だ。腰の動きは止めないままで吐き棄てる。ねめつけてやるが涼しい顔で受け流され、余計に腹が立った。その間もセカンドはあんあん喘ぎ雄にその先をせがんでくる。射精が近いということを自ずから悟った。
「おい、遊馬」
「ん、なぁに、ベクターおれもう限界っぽい……!」
「だろうな。見てりゃわかる……出すぞ。お前が欲しがるから、仕方ねえんだ。手加減しねえし、全部中にぶちまけてやる。何度でも」
「ほんと? ほんとに、おれんなかに……赤ちゃん出来るとこに全部くれる?」
「ああ」
セカンドが薄く笑った。こういう時、確か人間は、玉のような汗を滲ませ妖美に微笑んだ――だとか、そういうふうに形容するのだったかなということを漠然と思った。改めて向き合ってみると、セカンドのあられもない姿が視界に大写しになる。必死になっていたせいでうっかり弄ってやるのを忘れていた乳首は薄っぺらい男の胸の上で勃起しぷるぷる震えているし、顔も体も体液に塗れてお世辞にも綺麗だとは言えない。赤らんだ顔で生理的な涙を目の端からこぼし、汗を含んでじっとりとした髪の毛が汗ばんだ肢体にべちょりと纏わりついていた。皮膚は弾力に富み柔らかく、ボディスーツと同じ位置に描かれたボディペインティングのような紋様が神聖と淫靡との両側面を描き出している。
そうして上向きになった外性器がぴとりと張り付いた薄い腹をまじまじと見つめた。撫でてやるとびくんと海老反りになって跳ねる。ここでも感じ入ることが出来るらしい。便利な肉体である。
この、腹部が、膨らんで何かを宿す。不思議な心地がした。
「注いでやるよ。お前のそのろくでもねえ子宮に全部だ」
口づけると、ゼアルセカンドはうっとりと目を細め舌を絡め返して寄越した。
「あっ、あっ、でてるっせーしどぴゅどぴゅ出てるっ、お腹んなかいっぱいにされてるしゅごいの!!」
「そうかそうか。どうだ? 調子は?」
「あうぅ……こんなの、も、ぜったい、妊娠しちゃうってぇ……」
「妊娠したいんだろ」
呆れた、というふうに言ってやるが精液を腹に注ぎ込まれ感覚でいっぱいいっぱいで上手く聞こえていないらしい。貪欲に搾り取られ、それでもしかしそう簡単に萎える勢いを見せない男根にヌメロン・コードのおぞましさを思う。恐らくセカンドが受胎するまで萎えないとか、そういうふうに出来ているのだ。身に覚えのない絶倫ぶりである。
こちらとしても精を流し込み、熱くうねる肉を感じながら呂律の回らない様子で懸命に受精しようとしているセカンドを眺めているのはそう満更でもなく、まあ悪い気はしない。そのうち、むくむくと性欲と支配欲とがせり上がってきて、まだ全然食い足りないという気さえしてくる。
気持ちいい。
「まだ欲しいか?」
髪の毛を梳いてやりながら問いかけるとこくこく頷いた。どこまでも貪欲で強欲。謙虚さなんかこれっぽっちもない。当たり前か。それがどうしてだか嬉しくなって、多少衰えてきていたものがまた力を持ち始める。
そうでなくてはならない。遊馬は、そうでなくては。誰か一人を選ぶことが出来ず、全ての救済を願うような愚か者はそれぐらいで丁度いい。
「喜べよ……望んだ通りになるんだから……」
子宮があるぐらいの場所に手を当て、甘噛みをするようにゆるく爪を立てて引っ掻くとセカンドの快感に溺れた瞳が開き、目に入った。アストラルの金を受け継いだセカンドの瞳に、しかし今は遊馬と、情欲と、その二通りの赤色が映り込んで濁り、俺たちバリアンの赤にも似た滲み方をしていた。
「ゆうま」
「ふ……あ……べく、たー?」
「ゆうま……」
何度この赤色を殺したいと思って、何度抱きたいと願い、そうして何度実際に穢してやったのか、もう上手く思い出せない。
◇◆◇◆◇
やってしまったという倦怠感と賢者期特有の冷えわたった思考がベクターの脳味噌を支配していた。真っ裸に剥けたゼアルセカンドが横で寝息をたてている。恥部からはどろりとした粘液がはみ出して、生臭いにおいを放っている。俺の精液だ。そんなことはわかりきっている。
わからないのは、セカンドの腹だった。まっ平で美しくくびれていたはずの腰あたりに異変が起きている。腹部が大きく膨らみ、まるで子を宿した女のようだった。人間でいうところの妊娠七ヶ月ぐらいの妊婦の姿。だがおかしい。セカンドを抱いたのは昨日のはずである。
恐る恐る手を伸ばし、腹に触れた。あたたかい。そのまま耳を当て、感覚を研ぎ澄まさせると二つ分の心音が聞こえる。――出来てる。何が。子供が。
「どういう、ことだ……」
早すぎる。そりゃあれだけ中に出せば受精の一つぐらいしていてもおかしくはないが、それにしたって異常だ。ぽってりとなだらかな膨らみを見せる腹をもう一度撫でて溜め息をついた。
ヒューマノイド・モードの人間の体に姿を変え、体のべたつきを確認してから衣服を纏う。セカンドの体を抱え上げるとずしりと重い。中途半端な神のなり損ないめ、と毒づいてキスをした。長い睫毛に、白い肌を晒す姿にどきりとする。
改めてまじまじと見つめるほどにセカンドの裸体は美しかった。遊馬の少年特有の美しさを残しながら無駄を削いですらりと伸び、完成され、それ故にぐちゃぐちゃに乱してやりたくなるようなそういうシルエットを持っている。思う様に蹂躙したくなる肉体。乳房こそないものの、それはそれで美味しい。
「その美の一端を、担っているのが真月への憧れと幻か」
滑稽なことだ。もう一度口づけてローブを掛けてやりながら耳元で囁いた。
死者の束縛に近いものがあったのだろう。真月零は、あのいつもにこにこ笑顔で遊馬につきまといその偽りの全てを捧げられた存在は遊馬の中で死と再生を迎えたのだ。死したものは美しい。儚い。
だからゼアルセカンドはうつくしい。
「ベクター」
「……起きてたのか?」
「今。揺れたから。……おなか、おっきいだろ? この中に新しい世界のコアがある。人の、赤ちゃんの姿をしている。どんな顔、してると思う……?」
「さあな。どんな化物みてえな憎たらしいツラでも俺がぶち込んだ遺伝子で出来たお前の子に相違ない」
「はは。そんなすげー顔はしてないよ。無垢なんだ。新しいものは」
そのうつくしさこそが、セカンドの脆さであり強靱さの源だということをきれいさっぱり敗れた過去のある俺は理解していた。矛盾しているが、事実だ。そもそもにおいてゼアルセカンドはそういう脆い土台の上に生まれ落ちた。遊馬の裏切りとアストラルの猜疑、その上に。
「俺の中にあるこどもはな」
遊馬が言った。その言葉は、セカンドの姿をしていても、どうしようもなく疑う余地なしに、九十九遊馬の言葉だった。
「真月の、姿をしているんだよ。ベクター」
――本当に、心底ろくでもない。
/けがれなきこども
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