※性行為の描写を含みます。高校生以下の方は閲覧をご遠慮ください。

・誘い受けセカンド様
・遊馬勝利後っぽい
・わりといちゃついてる
・閲覧の際は以上の点をふまえて自己責任でお願いします。














きみと聖夜にくちづけを



「今日のことを、キリスト教では『聖夜』って、言うらしい。なあお前さ、そういうの知ってる? きっと、知ってるよな。人間のこといっぱい勉強してたし。イベントごとになると特に詳しかったよな。だから知らないわけないよな。そうだろ?」
 おんなの似姿をしたものが、あられもなく大股をひらいて押し倒した男の上に馬乗りになっている。恥ずかしげもない。一切の情緒もなく、ただ単にだらしなく股を広げている。慎みも遠慮も当然なく、慮りもない。「なあ」そいつはいつもと同じ調子でそう語りかけてきて、だからこそ男の調子を酷く狂わせてやまなかった。気でも狂わせるつもりか。
「聖夜だって。神聖な夜。で、そんな日に俺達人間は何をしているのかっていうのを、詳しいであろうお前に聞きたいわけ。家族とだったらごちそう食べてケーキ食べてプレゼント開けて、風呂入って寝て、だけどさ。それ以外とはどうするのかなって。恋人と一緒に過ごす人が多いって姉ちゃんは言ったけど、だったら恋人とは何をするんだ?」
 知るか。男は内心で毒づいた。実際は知っている。人間界のことを探る途中で手に入った余分な使いどころのない知識としてしっかり記憶している。だがそれは、まかり間違っても男に必要な情報ではなかったから、気に留めないことにしようとそう決めていたのだ。知らない。だから全然、知らないんだ。
 黙りを決め込んでいるとそいつは「ふーん」と真上から見下ろす体勢になって、身体を丸めてぐいと顔と顔とを接近させまじまじとしげしげと目と目で見つめ合おうとし出す。全力で目を逸らした。が、捕捉され、もう視線を完璧にずらすことが出来ないようにぐいと顔を両手で固定された。
「隠すなよ」
 妙に熱の入った声音。ああ、しくじった、選択肢を取り違えてしまった。後悔するが既に遅い。男が実に嫌そうに目を逸らしたことで入りかけだったスイッチがオンになってしまったらしい。手遅れだ。その気になったこいつは、走り出したら壊れるまでもう止まることのないクレイジーな暴走特急のようなものだったということを知っている。
 それで羽をもがれた。忘れるものか。絶対に。
「おれはお前のその目を見たいんだって……」
 その、きれーな、むらさきの。舌っ足らずに請うように口にする。その後、振り絞るようにほしいの、とか続いた。そんなことは言われなくとも一目瞭然だ。
 金色の目の中に映り込んだ情欲は最早見間違えることなどないほどに揺らめいて。
「……俺とてめえは恋人なんかじゃねえよ」
「じゃ、なんだっていうんだ」
「敵だ。俺はお前の心臓を握り締めて潰したい。お前は、俺を倒そうとする。それ以外にどんな名前があるっていうんだ」
「ともだちとか?」
「それにしちゃ殺伐としすぎだろ」
「そうかも。でも、そういうのさ、恋人同士とちょっと似てるよな。どっちも真剣にお互いに命賭けてるってことじゃん」
 案の定否定を簡単に押し飛ばし、まるでなんでもないことみたいににこにこ笑う。命賭けて殺し合うのを夢見る乙女か何かと同列にされてはたまったものではない。が、言ったって聞きやしないだろう。
 男――殆ど情けなく組み敷かれている格好の俺は、とうとう観念してそいつを見上げた。九十九遊馬の裏切りとアストラルの諦観の象徴「究極態ゼアルセカンド」。真月零の残り香をその胸いっぱいに吸い込んだ女々しい姿かたちをしたそいつは、俺と同じ色をした未練の塊みたいな長髪をなびかせ、その肢体に纏わり付かせ、熱に浮かされた瞳で俺をじっと飽きもせずに見つめている。セカンドに貶められた人間のからだの俺を、憐れむことも蔑むことも褒めることもせず何が面白いのかうっとりと見惚れて、丁度俺の股間の上あたりにずりずり這って移動してきてその柔らかな尻肉で布越しに敏感な部分を擦りあげた。
「ぁ、っ、」
 漏れそうになった声を何とか歯を食いしばって押し留めるとつまらなそうに頬を膨らませる。お子様丸出しの反応だが、本能的に求めての結果であろう身体の動き、俺へのアプローチの方は劣情をがんがんに煽り立てようとしてきて、酷い。すごく。
 こういう体位を、確か、素股と言うのだったか。既に浮ついてきた意識の中でそんなことを思う。いや、俺の方もまだ服を着てる状態だから正確には違うのかもしれない。ともかく、セカンドの積極性にされるがままに押し流されかけている俺がいることだけはそれはどうしようもなく確かで、そのうち目眩さえしてくるようだった。
「なあ、答え、教えてくれよ」
「ふ……ぅ、ぐ……」
「答え。恋人どーしで、何すんの? ……教えてくれなきゃ」
 くらくらする。意思がぐらついて、妥協して、ぽっきり折れてやってしまいそうになる。既にセカンドの身体についている方もあのぴちぴちのボディスーツの中で形を隠しきれずに存在を主張していて、健康的な尻の割れ目とか、ボディスーツの生地が吸い付いている股部分だとか、それらが中心を擦りあげる度に欲求がせり上がってきて理性を上回ろうと暴れるのだ。
 どうでもよくなってくる。今はとにかく、目の前の艶めかしい身体を割り開き、その未開発の肉を貪ってやらないと。
「この先はやってあげねえけど?」
 舌なめずりをしてセカンドが挑発的に指先を食んだ。ああ、もう、考えるのも悩むのも全てばからしい。強引に誘ってこられた以上言い訳も建前もばっちりだ。やるしかない。今。このまま。
「なあ」
「セックス、だ、遊馬巡査」
「ん?」
「君が望んでいた答えだろう、違うのか。セックス、即ち子孫繁栄を願う行為だ。或いは快楽のための無益無生産の行為であることも、少なくはないが。男女でせねば前者の意味は成せないから我々で行ったところで、後者以上の意味はとれないがな。頭が高いぞ、巡査?」
「え、あ、はいっ! ……って何でだよ! 俺今、遊馬の身体じゃないし。究極態ゼアルセカンドだし。だからそういうのナシ……」
「関係ないな。遊馬は遊馬だ。――大体なァ、俺が優位に立たなきゃつまんねえだろうがよォ。喜べ処女ビッチ、この俺がお前の意味のわからん要求に付き合ってやるって言ってんだから……」
 むらむらする。何と言っても、その気にさせた方が悪いのだ。もう泣こうが喚こうが手を止めてやるもんか、と心に誓った。理性なんかクソ喰らえ。
「まずはその布を破かせろ。いちいちエロいんだよクソ……」
 答えが返ってくるのを待たず、セカンドの腰に手を伸ばして支えながら強引に股間のあたりの布を爪先で引き裂いた。「ひぐぅ?!」というなよなよしい声。性器は上向いているくせにどうしてこう女めいているんだろう。
 仰向けに押し倒された体勢のままで多少手間取りながらも自分の性器を解放して、馬乗りになっているセカンドの尻の穴に宛がった。創造能力を持っているんだから、再生能力も人並み以上にあるだろう。なら大丈夫だ。いける。
 根拠はないが俺はそう確信し、慣らすことも濡らすことさえもせず強引に突き刺した。後から思えば、あれは完全に、思考がトんでいたな、とは思う。しかし全て後の祭りである。



◇◆◇◆◇



 多分この状況の大元の元凶ってやつは、散々足掻いた挙げ句に結局俺が敗北し、遊馬が最終的な勝者となり、あの胡散臭い大嫌いな博愛主義者の両腕に抱かれてひとの世界に連れ出されたことに起因しているのだと思う。直接の原因はまた別かもしれないが。ゼアル究極態となった遊馬とアストラルは全てに勝利し、また、全てを救わんとした。アストラルというよりそれは遊馬の意思なのだろうが。
 それから度々、遊馬は俺の面倒を見に顔を出したがやることと言えば何の足しにもならない雑談とか簡単な確認ばかりで、今日のような頭のおかしいことは一度もそれまでにはなかった、そのはずだ。遊馬が遊馬として以外の姿で訪れたことすらまずなかった。それが何故か今日に限ってゼアルセカンドのあの姿をしていて、嫌な予感はしたのだ。
 正直もう二度と見たくないと思っていた姿だった。ゼアルサードもあまり拝みたくないが、セカンドはとみに嫌いなのだ。生理的嫌悪、と言って差し支えなかった。
 そう。生理的嫌悪だ。ゼアルセカンドの姿はあまりにも「真月零」に似通い過ぎていた。九十九遊馬と真月零の遺伝子を、まるで、足して二で割ったかのような。偶像崇拝に近しい何かをそこに見出し、俺はそいつを嫌悪した。気持ちが悪かった。
 だが、それと同時にそのフォルムが女性めいて扇情的なのもまた一つの事実であった。
「あ、ふぁ、やッ……ア……そこ、すご、イイ、よぉ……!」
「そうかそうか。それはよかった、なッ」
「?! あっあっあっあっあ、あ、だめ、はや、きゅーに、そんな、なんで、」
「なんで、だと? いいんだろ? お前がそう言ったんじゃないか」
 騎上位のまま突き上げると、口をだらしなく開いたまま魚のように跳ねて悦がる。顔中を真っ赤に紅潮させて、女のように長い髪を振り淫らに腰を振って俺を焚き付けた。まったく何という顔をしているのだ。開きっぱなしの口からは喘ぎ声が漏れっぱなしで、唾液がこぼれ落ち、もうぞろ、こいつは舌を突き出して啼くんじゃないかとそう思われた。
 性欲に溺れて快楽を貪るその肉体は、それでもやはりかなり強靱で、強引に中に突き進んだ最初こそ血を流したものの俺から精気でも吸い取ったのかすぐに修復して、腸壁を張り詰めた男根に沿わせ絡め取った。侵入者の形に沿って拡充し、いとも容易く全体を呑み込んでしまう。つくづく便利な身体をしている、と思う。便利だ。どれだけ深く抉ろうと残るのは快楽だけときた。
 自重でより深く突き刺さる姿勢を取ったことを後悔させる暇さえ与えず、犯しに犯す。串刺しにせんばかりの勢いで抽挿を繰り返すとだんだん内部がほぐれてきて、やがて女さながらに吸い付いてきて先をねだるようになる。引き抜けば名残惜しそうに引き留めて突き刺せば歓喜に色めき立って襞という襞で熱烈に雄を抱擁する。実にいやらしい。
「きちゃう、きちゃうっ、しゅごいの、しゅごいのきひゃうぅっ」
「雌のくせに早漏すぎんだろ」
「おすとか、めすとか、そーゆーのかんけーない、だろっ……ん、あ、も、だめ、いっちゃう……!」
 だから、べくたーも、ちょうらい。舌っ足らずに懇願し、同時に胎内の律動で搾り取るべく責め立てる。ぞくぞくするような快感が下半身から背筋を伝って脳天に到達し、ぶるりと震えると請われた通りに独りでにベクターの雄が淫らな襞の動きに誘われて一度目の精を吐き出した。待ち侘びたものの到来に弓なりにしなっていた身体を痙攣させ、セカンドが絶頂を迎える。搾り取られた精液はしなやかな肉体の奥に吸い込まれるようにして流れ、入りきらなかった分が逆流して零れふたりの身体に染みを作る。
 結合部から吐精してくったりした精気を引き抜くと、じゅぽん、と卑猥な音がして、更に白濁した液がだらだらと漏れ出た。
 は、と軽く息を吐き、幾度か瞬きして見遣るとまだ足りないというふうな顔をして物欲しそうに人差し指を咥えて舐めている。ちゅぱちゅぱと自らの指をしゃぶるだけのその動作がのろのろと身体にまた火を点すのがはっきりわかった。お互いにまだまだ満足していない。何しろ聖夜だ。一度きりの交わりなど、その名に恥じているのではないか。
「……もっかい」
「あー……」
 どうしたものかと眺めていると目を細めて掠れた声でねだってくる。しかしそのまままた同じ体勢を許すのもつまらないので、一先ず馬乗りになったままのセカンドを引きはがして上体を起こした。割と、腰が重い。軽いとはいえそれなりの重さがあるものを乗せていたから、仕方ないのだが。
「しゃぶれ。上手にご奉仕出来たら続きをしてやるから」
「ん」
 いい子で頷いて躊躇なくついさっきまで自分の尻穴で咥えていた性器を頬張る。その姿にいじらしさを覚え、頭をくしゃくしゃに撫でてやると気持ちよさそうに喉を鳴らして性器への愛撫を強めた。
「んっ……んぅ……んむ、ん、んーっ」
「そう……それでいい、ぜ……お前のせいで汚れちまったんだからしっかり綺麗にして貰わねえとなぁ」
「んんん……ん、ん……」
 柔らかい舌先に嬲られるごとに性器が力を取り戻し、セカンドの温かな腔内に包まれたまま質量と硬度を増していく。ここらで上出来だろう、と判断したところで一度頭後とぐいと引き寄せて喉を突いてやると息苦しさと圧迫感からか声にならない悲鳴を上げ、ぶるりと身体を震わせた。喉奥から引き抜き、改めて座り込むセカンドの姿を上から下まで見回す。
「は……エロ……」
 知らず、嘆息が漏れた。女のようなポーズで、上向いた性器の鈴口からはとろとろと先走りを零して上気した肌に潤み蕩けた瞳を乗せている。仰向けに押し倒すと一切の抵抗を見せず、なされるがままに両腕を開いた。尻たぶに指を突っ込むと、切なくひくついているのがわかる。
「なんだよぉ」
「……悪くねえカラダだな」
「へ?」
「何で俺のとこに来たのか知らねえが……俺がんなもん目の前に膳立てされて指咥えて正座していられるようなタマじゃねえことぐらいいくらなんでも想像は付いただろ。なんだ。お前は、喰われたくて来たのか」
「えー……」
 浅い呼吸を繰り返す入り口にフェラチオですっかり逞しさを取り戻した先端を宛がうと奥へ誘うように肉が吸い付いてくる。たまらない。最早セカンドの身体の反応は、いじらしいと言っていいほどのものだった。焦らすように入り口を円を描くようになぞると張り詰めた吐息が漏れる。
「えー、じゃ、ねえだろ」
「うー。それがさあ……わっかんねえんだよなぁ……俺もさ、最初は、確か、そういう話を誰かとしてて。恋人同士は何するんだって。で、気がついたら来ててさ……」
「ハァ?」
「だからさ……今は、ベクターのおっきーの欲しいってことしか、わかんねえの」
 ふと、セカンドの両腕が俺に向けて伸ばされた。油断しているところを一息に掴み取られて引き寄せられる。一瞬で目と鼻の先程度のところにまで距離が縮められて、呼吸さえ皮膚を掠め合う。
「ちゅーしながらしたいな……」
 熱っぽい声音。たまらず、貪るように口づけて舌を絡め取った。
 そのまままた深く交わって、切れ切れに呼吸を繋ぎながら口づけを繰り返す。視界いっぱいに映るオレンジとピンク。その中央に金。どろどろに溶けた甘ったるい蜂蜜のようなその色が、皮膚にべたべたと広がっていくような錯覚を覚えて首を振る。遊馬のあの血のような赤も捨て難いが、この金色も交わってみるとなかなかそう悪いものでもない。素直に喘ぎ、腰を揺らめかせ、くねる肢体を絡めてくる姿にどうしようもなく感じ入ってしまう。
「へへ……ベクター今日はやさしいじゃん……」
「うるせえ」
「聖夜だもんな。あてられちゃった?」
「何にだよ」
「なんだろ。わかんないや」
 てきとー。子供っぽい言い方に性器に血液がまた集中していくのを感じた。それに応じてまた遊馬の身体も如実に反応を示す。ああ、こいつを、あとどれだけ犯してやろうか。そんなことをぼんやり考える。
 きっとお互いに気が済むまでだ。今日ぐらいはそういう日でもいいような、そんな気分になってもう一度組み敷いたキスを落とした。



◇◆◇◆◇



 清々しい朝の匂いがする。俺達はどろどろの身体をベッドシーツの上に横たえて、ぱちりと目を見開き、ああ、しまった、と頭を抱えた。いつの間にかセカンドの姿はなくなっていて、代わりに遊馬が剥き出しの裸体を晒して全身を羞恥から赤く染め上げている。悪戯心がわいてきたので少年らしい寸胴をいやらしい手つきで撫でると「うひゃぁ!」と何の色気もない悲鳴が上がった。昨晩とは雲泥の差だ。
「それで、結局あれはなんだったんだよ」
 問うと恥ずかしそうに目を逸らしたりなんかするので、今度は俺の方が遊馬君の顔をがっちり正面で固定してやった。
「なんか理由ぐらいはあんだろ」
「う……」
「言え」
「……お、おれ、たぶん、酔ってた、っぽい……」
 問い詰めるとしどろもどろになってそう消え入りそうな声で白状する。俺は面食らって険しい顔になった。こいつ、大丈夫なのか。
「はぁ?」
「クリスマスのさ、ワインあるじゃん。姉ちゃんが飲んでて。で、いい匂いだなーって嗅いでた。ら、匂いで酔っちまったのかな……だってそうとしか思えねーし……セカンドになんでなってたのか、わかんねえし」
「普通そのぐらいで酔ったりするか?」
「だからわかんねえんだって!」
 必死の形相で何故か涙目になりながら睨み付けられた。尚も猜疑の眼差しを向け続けると顔を背けられないことに対してのせめてもの抵抗なのか目を瞑り出す。キス待ち顔にしか見えない。
「……誘ってんのか?」
「はぇ?! ち、ちげーし!!」
 そのくせ問うとぶんぶん手を振って全力で否定する。ちょっとむきになってしまい、わざとらしく口角をつり上げて「へぇ? そうなんですか? 遊馬くんは僕とのセックスは勿論キスも嫌だったんですね……僕、ショックです……」そう煽り立ててやるとわかっているだろうに「わーっごめん、ごめんってば、そういうつもりじゃ……」なんてしおらしく謝罪した。
 ふん。ちょろいもんだな。
「で、どうだったんだよ。原因はともかく、結果は」
「と、ともかくって……あー……でも……」
「でもなんだよ」
「でも、すごい、幸せだった気がする……」
 これが恋人同士の聖夜ってことなのかなぁ。気恥ずかしそうに、しかし満更でもないふうで小さくぼそりと呟かれた一言を耳ざとく拾い上げて、何故だか俺まで気恥ずかしい気持ちになってきて思わずぷるぷると肩を震わせた。遊馬の頬がかわいらしい苺色に染まっている。
「――何恥ずかしいこと言ってやがる!」
「?! 何がだよ?!」
「聖夜の前に言ったことだよ!」
「え、何、なんで、ベクター怒ってる?!」
 別に怒ってるわけではない。でも、それにしたって。
 俺ははー……と溜め息を吐き、首を横に振って頭を抱えた。遊馬がぽかんとして理解の追いついていない阿呆面で俺を見ている。
 だから、俺達は恋人同士なんかじゃないっていうのに、まったくこいつは!


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