※性描写を含みます。高校生以下の方は閲覧をご遠慮ください。
※素良に緊縛されて陵辱っぽいことをされるバッドエンド風味
※この後快楽堕ちするっぽい
※嘔吐はしていないですが嘔吐く描写あり
※終始玩具プレイ















ハッピーバッドハロウィーン




「トリックオアトリート遊矢、お菓子をくれないといたずらしちゃうぞ?」
「えっ、ごめん、今特に持ってない」
 数分前にそんな受け答えをしてしまったことを、俺は早くも後悔し始めていた。確かにお菓子は持っていなかった。でも、「今買ってくるからちょっと待ってて」と言うことは出来たし、渡せないと即答する前にどんな悪戯をされるのかぐらいはせめて確かめておくべきだったのだ。口の中にものがこれでもかと詰め込まれていて、息が苦しい。酸欠になりそうだ。俺は段々ぼんやりしていく意識の中でもう一度後悔した。相手はあの素良だ。なんでもっと、警戒しておかなかったんだろう。
 お菓子をあげない、と回答した後の素良の笑顔は、遊矢がここ数日見たものの中でも一番に「やばそうな」ものだった。「じゃ、いたずらで決定だね!」と高らかに謳い上げるその声がまるで死刑宣告のラッパみたいだったな、ということを思う。腕から下げていたバスケットいっぱいのお菓子を一つ掴み取り――あれは多分、今日の間に俺以外から貰い集めたお菓子なのだ――パッケージを剥いて、にこにこ笑いながらそれを俺の口の中に突っ込んだ。
「むがっ?!」
 一番手は、キャラメルヌガーだった。あのとびっきりべたついて、喉にひっつくやつだ。しかもちょっと苦い。素良の指先が巷でよく売っているやつより一回り大きめのヌガーを無理くり押し込んできて、俺はとにかくそれを喉につまらせないようにすることで必死だった。
「一番最初にこれって、ちょっと難しかったかな? クッキーの方がよかった? ん〜まあでも最後にはぜ〜んぶ食べて貰うつもりだし、どっちみち変わんないか」
 二番目、クッキー。チョコチップ入りの、これ、多分柚子から貰ったやつだ。柚子が好きなメーカーのやつだった。普段なら俺も好きだしおいしいって食べるけど、今は全然そんな余裕なんかない。次のお菓子のパッケージを剥き始めている素良を見ながら、ひどい表情で必死になって咀嚼をする。
 ひぐっ、えぐっ、とか、そういう情けない音が俺の喉からボロボロと零れ落ちていた。気持ち悪い。お菓子、甘くて、おいしいはずなのにちっともおいしく感じられなくて、甘ったるくて――吐き気がする。
「う、ぇっ、ぐ、ぅ……」
「あーっ、ダメだよ遊矢! 吐き出したりなんかしたら、もったいないじゃん。流石の僕も、この状況でもっと味わって食べてとはちょっと言いづらいけど、頑張ろうよ」
「ん、ぁぐ、ひ、ふ、」
「え、ちょっと遊矢?!」
 泡吹いて倒れそう、と思ったところで意識が急速に遠のいていくのを感じる。それでも最後の力を振り絞って嚥下して……なんか多少こぼれたような気はしたけど……俺はそこで力を失って背後に倒れ込んだ。遠くで素良の声が聞こえる。世界が遠くなる。匂い、空気、気持ち悪いっていう感覚、それら全てが俺から遠のいて、どこかへ転がっていく。
 あ、多分気絶するんだと理解して、俺はそこで意識を手放してしまった。


◇◆◇◆◇


 後悔は先に立たず、一寸先は闇、石橋は叩いて渡れ、そういう警句が数あれど、そのどれ一つ取っても絶対にまったく俺は役立てることが出来ていない。目覚めてすぐにそんなことが脳裏を過ぎったのは、多分現実逃避をするためだった。
 薄ぼんやりとぼやけていた視界が徐々にクリアになってきて、同時に全身の感覚が戻ってくる。眠りから醒めた直後の倦怠感を、四肢の異常が吹き飛ばしていった。痛い。いや、激痛に見舞われてるってほどじゃないんだけど、……この痛みは、なんだろう。上手く身体が動かせない。
「あ、やっと起きたんだ。大丈夫? すっごい顔だけど」
「そ……素良……!」
「ごめんね、やっぱりハロウィンっぽい悪戯がいいかなと思ったんだけど、流石にあれは遊矢には難しかったかなーってちょっと反省したんだ。僕なら全部丸呑みにしちゃうぐらいの勢いなんだけど」
「咀嚼してよ! ていうか、喉にお菓子突っ込まれて丸呑みにするなんて聞いたことないんだけど?!」
「まあ、これ以上は柚子達に貰ったお菓子に申し訳ないかなって。気絶してるところにヌガー詰めたら、どうなるかわかったもんじゃないしね。……だからね」
 素良の顔から貼り付けたみたいな笑顔が消える。顔に翳りがかかって、何かはかりごとをしている時の表情になる。無邪気さなんかどこにもなくって、こんな顔、素良は絶対に母さんには見せないだろうなと思えた。塾長にも見せないだろうし、柚子や、アユ達にも見せたがらないと思う。そういう類のやつだ。まるで、ゲームで悪役が舌なめずりをする時にしているような……。
 小さめの手のひらがぴとりと俺の足に這わされて、それで俺はようやく自分がまともに服を着ていないことに気が付いた。ズボンは跡形もなくどこかに行ってしまっているし、パンツさえない。シャツは一応まだ身体を守ろうとしてくれているし、ゴーグルは頭についてるみたいだったけど、あんまりこの状況を好転させてくれるようには思えなかった。
 目だけをなんとか動かして、自分の情けないこと極まりない姿を確かめていく。どうやら四肢が――手首と足首が縄で縛り付けられているようだ。身体が動かないとさっき思ったのはそのせいに違いない。
 下半身に走るむずむずとした違和感からはその時敢えて目を逸らして、俺は恐怖にも似た感情を抑えて素良の顔をもう一度見た。
「素良、お前……」
「ね、悪戯の種類、変えてみたんだけど、どう?」
「俺に何をしたいの。こんなの、もうお菓子をくれないからってするような悪戯じゃ……」
 だがその先に続けようとした言葉は、突然の衝撃によって全部跡形もなく吹き飛んでしまった。
「何って、遊矢と楽しいこといーっぱいしたいなぁ。デュエルも楽しいけど、それはまあいつでも出来るでしょ? せっかく悪戯するきっかけがあったわけだし」
「そんっ……なの、理由に、なって、なッ――?!」
「ずーっと、遊矢とこういうことしたかったんだよねえ……」
 でもほら、遊矢って妙にガード固いし。素良が溜め息混じりに言う。不規則な振動が俺をがんがん下から突き上げるように襲って、うまくそれに反論してやることが出来なかった。呂律が回らない。変だ、こんなのおかしい、頭の中ではそうやってクラクションが鳴り続けているのに身体は動かないし全然喋れないしで、素良の暴走を止める手立てがちっとも思い浮かばない。
「あ、心配しないで。遊矢が痔で悩まされたらかわいそうかなって思って、気絶してるあいだに準備は全部しておいたから。遊矢のお尻の穴、ぴっちり締まっててかわいいけど綺麗に広げてあげるのは大変だったよ〜……」
 素良が何かスイッチを手にしていて、楽しげにそれを操作している。「お尻の穴」という台詞で下半身の違和感の理由がようやく掴めてきたけれどその先を考える余裕が全然ない。「ねえバイブ、どうかなあ」と暢気に問いかけられて、頭の中が沸騰しそうだ。バイブ? 俺の尻に今刺さってるっぽい謎の物体は、バイブって言うんだ?
 素良が寝ている間に何をどうしたのかは知らないが、そのバイブは今俺の身体の中にすっぽりと埋まって、中でぶるぶる振動して、だけど痛くはなくて、どんどん、変な気持ちになってくる。なんだこれ、俺、どうしちゃったんだろう。そのうち頭の中をふわふわしたものがいっぱいに満たそうとしはじめて、慌てて首を振った。首はまだ、自由に動く。
「まだ慣れてない感じかな。まあ、そんなもんだよね。あ、遊矢の乳首かわいー。舐めてもいい?」
「い、いいわけないだろっ……」
「えー、聞こえない。いただきます!」
 動いていた首も素良の手で固定し直され、その直後に素良が俺のシャツをたくし上げてべろりとその生温かい舌で俺の身体を舐め上げた。宣言通り、乳首だ。何でそんなところを? 信じられないけど目の前で起きている光景から目を逸らす事は許されてなくて、信じるより他にどうしようもない。
 右の乳首をあめ玉を口の中で転がすみたいに舐められて、空いていた左の乳首には素良の左手が伸びてきて遠慮も何もなく人差し指でぐりぐりと苛めてくる。いつも持ってるペロペロキャンディを舐めている時と同じ仕草。ひっ、と身体じゅうが強張って引きつった。自分の股間が、いやな感覚を覚えはじめている。
「あはは、乳首がピンク色につんつん立ってて、女の子みたい。かわいいよ? とーってもね……あ、そうだ。そろそろそれじゃ、物足りなくなってくる頃でしょ。心配しないで、ちゃんと次の『悪戯』も用意してあるから」
「待って……これ以上、俺に何をするつもりなの……」
「別に酷いことはしないってば。でもさあ、この状態でほっとかれるの、しんどくない? どうせなら楽しく気持ちいいことしようよ遊矢。悪い話じゃないと思うんだけど」
 悪い話だ。絶対に、それもすごく悪い類の。
 ご無沙汰していた素良の右手が俺の中に埋まっていたバイブをずるりと引き摺り出した。異物がなくなったことによる僅かな開放感と――大きな喪失感。嫌になって目をぎゅうと閉じる。目を閉じたところで何か現実が変わるわけじゃない。だけど、この時目を閉じていてよかったと少しだけ後になって思う。
「遊矢の顔、もっと見せてよ」
 直後、抜け落ちた場所に新しい異物が無理矢理――気絶する前にそうされた、お菓子達みたいに――押し込められて遊矢は声にならない悲鳴を上げる。
「いたぁ、あっ、ひっ、んぐ、ぅう、」
「あれ、やっぱりまだこのサイズだと痛い? ちょっと我慢してね、すぐ良くなるから」
「や、むりっ、だか、らぁっ……ひぁあっ!!」
 大きくて、固くて、冷たい。つるつるした材質で、でもでこぼこが沢山ついているみたいで、表面は全然なめらかじゃない。そのでこぼこが、ぐいぐい俺の中に入ってきて、俺の身体の奥の無防備な場所を苛む。痛い、痛い、こんなの、変だ。閉ざした瞼をもう一度開く気には、とてもなれそうになかった。
 灼けるような痛みと熱さが足下から駆け上がってきて、脳みそまで到達し、ぐらぐらに頭を揺らす。一番奥まではまだ無理だねとかなんとか素良が言って、その固くて太いやつが俺の中に出たり入ったりを繰り返すようになった。でこぼこがこすれる。こすれると、変な気分になって、変な声が出る。
「あっ、ぁ、あァ、ん、は、ふ、」
「そうそう、力抜いて……あと、余裕なくってもちゃんと僕のこと見て? 遊矢の綺麗な目がこれじゃ見えないもん。僕ねえ、遊矢の目の色、だぁいすき」
「や、やだぁ、やっ……」
「――血の色みたいで。遊矢が生きてるって、わかるから……」
 手が動かないから声は抑えられない。自分のものじゃないみたいなうわずった高い声に羞恥が張り詰めて爆発しそうになる。その上、口から出る声だけじゃなくって下半身の方からも恥ずかしくていやな音がひっきりなしに流れ落ちていて、もう頭がまともにその事実を処理出来ないのだ。
 じゅぷじゅぷという泡立ってるみたいな水音、ぐち、ちゅぐ、と柔らかい肉をねじ込んでいくような奇妙な音。それが俺の口から漏れてる音と混じり合い、一つになり、何もかもを滅茶苦茶にする。
 奥の奥をごつごつ突かれるようになった頃には頭はぼーっとして全然何も働いてなくて、声を出しているのが恥ずかしいっていう認識さえ欠け落ち、俺は素良に「悪戯」されるままに身体を仰け反らせて、襲い来る感覚に身体を震わせる。
 何かが来るっていう、予兆みたいなものが電流のようにびりびりと全身をかけずり回って、俺のずっと閉じていた目を開かせた。視界が滲んでぼやけている。多分泣いていたんだと思う。その向こうで素良が興奮した様子で、「やっと目、開いた!」と目を輝かせ、とびきりの笑顔で俺に飛びついてくる。
 一際強く、素良が手にして動かしている(恐らく)プラスチック製の何かが俺の身体の中を貫いた。その途中で何かを掠めるような感触があって、その勢いのまま、予感した通りの感覚に呑まれていく。爪先から髪の毛のてっぺんまで、その全てを塗りつぶしていくみたいな強烈な衝動。何か液体みたいなものが飛び散って、びちゃびちゃと俺の身体に付着する。
「あ……はぁ、は……」
 霞んだ目でぼやけたまま鮮明になろうとしない視界を呆然と見ていた。指先がぴくぴくと痙攣して、異常を知らせてくる。理由のわからないぐったりとして倦怠感が全身をくまなく包み込んでいた。ひくひく蠢いている尻のあたりの肉だけが、まだプラスチックの固まりを呑み込んでいるという感覚を鮮烈に俺似知らせて来ようとする。肉がその無機質な物体に張り付いているようで嫌な気分だった。柔らかくないし、暖かくないし、こんなのじゃ、ちっとも……
「あーあ、遊矢ったら、そんな顔しちゃって。すっごいよ。僕以外の人が見たら、卒倒しちゃうかも。ね……遊矢。どうかなあ、悪戯の続き、しようよ。僕まだ全然悪戯し足りないんだ……遊矢もでしょ……?」
 素良の声もなんだか右から左に抜けていくみたいで、半分も聞き取れない。だけど俺は素良の問いに対して首を横に振ることが出来なくて、項垂れるように、縦に一つ首を振ってしまっていた。素良の目が歓喜に沸き立って、怪しい色になる。でもそんなことはまったく気にならなかったし、している場合じゃなかった。
 身体中火が付いたみたいに火照って仕方ないのだ。その時俺は、それをどうにかしたいということばかりに気を取られていて、何もわからないまま素良の手を取るしかなかったのだった。