もしもゼロ・リバースがなかったとしたら。
 そうしたらきっと全ての歴史が狂って、みんな、何かが変わっていってしまうんじゃないか。そんなふうに思ったのが多分きっかけだったんだと思います。
 タイトルは「デウス・エクス・マキナ」から貰ってきて「機械仕掛け」のアルカディアにしたらしいのですが、そんなことを考えてから既に三年以上が経ちました。
 遊星の生き様というかそういうものに思いを馳せた時期があって、彼の話を書きたくて、このお話を考えたように思います。そうしている間にやっぱりあれも書きたい、これも書きたい、と欲張りすぎて全部をうまく書けたかどうか不安も残るのですが、精一杯持てる全てを出し尽くしてこのお話に臨みました。
 いつも通り落としどころをあまり想定しないまま見切り発車で飛び出してしまい、実のところ決まっていたのは「ブルーノの願い」と、一番最後の、あの、光よりも早く駆けて行く彼らの姿ぐらいでした。そのうちにルチアーノの葛藤やゾーンの「遊星の一つの末路としての可能性」、海底都市ルルイエ、色々なものがまた書きたくなってきて、ここまで至るのにもしかしたら一番今までで苦労したお話かもしれません。
 ……なんというか、随分と長い間一緒にいたのであとがきに何を書いていいのか既によくわからないんですけれど、今本当にすごく不思議な気持ちで胸がいっぱいです。

 実はサブタイトル(機械人形の見る夢とか)を基本八文字縛りにしていたりしたのですが、どうしても八文字でうまく思いつかなくて最後の章?は「機械仕掛けのアルカディア」になりました。でもやっぱり、総題でもあるこの言葉には思い入れが深いので、結果的によかったなあと思います。並べたときちょっとはみ出してしまうんですけど!
 あと設定的には双子家族の話(Beautiful World)から直に繋がっていて、「イン・ザ・ダーク」はそのあたりを捕捉・補完した部分だったりします。正史〜と作中で表現した歴史です。そういえば確かプロトタイプみたいな形で双子家族ちゃんから繋がるような短いのを書いた気がするんですが、双子ちゃんを本にした時に削ってました。今見ると、結構細かいところが変わってる感じがします。
 イレイティスの眠る地とか、アーク・クレイドルとか、オレイカルコスとか、原作に単語は出てくるもののはっきりとした説明がなされていない部分に関して、またすごく好き勝手に捏造をした気がします。とても楽しかったです。そういえばホルアクティの描写をするときは、パソコンの横にホルアクティのカードを置いて見ながら書いたりしてました。あのカードはすごく神々しい。あれが出てからももう三年になるんだなあ……。
 書き進めている中で変わっていったこと、新しく決めていったことがすごくたくさんある話なのですが、根底にあったものは、きっと変わっていないのだと思います。人と人が出会うこととか、そうして抱く思いとか、とか、とか。恋をすること、星が生まれること、人が生きて、そして死んでいくこと。何かを選ぶことで、何かが失われてしまうこと。願うことと祈ること。うまく言葉にすることが出来ないのですが、そういったたくさんの気持ちをありったけ込めて、彼らの物語を書きました。もしお気に召していただけたのでしたら、それ以上に嬉しいことはありません。

 最後に謝辞を。書いてる間、友人達にたくさんの面でお世話になりました。また、時折頂く感想や拍手にどれだけ励まされたか、わかりません。
 そして、最後までこのお話にお付き合いくださった全ての皆様にたくさんの感謝を込めて、ここで筆を置かせていただこうと思います。ありがとうございました!
2015.06.20 倉田翠




♪作業中BGM
「The Everlasting Guilty Crown」(EGOIST)
「Planetes」(EGOIST)
「海の時間」(谷山浩子)
「Moonlight Shadow」(Mike Oldfield)
「FINAL FANTASY XIII 〜誓い〜」(浜渦正志)


「機械仕掛けのアルカディア」‐Copyright (c)倉田翠.