Beautiful World

01:ファミリア(01) 不動遊星の受難

「サンキュー遊星、ここまで見送りに来てくれて。アキ姉ちゃんも合わせてくれてありがとう」
「ジャックやクロウも見送ったしな。三人も行くのに出掛けない理由もないだろう」
 遊星が言った。手にはアキや龍可、龍亞の荷物が提がっている。女性であるアキやまだ十分幼い子供の部類に入る(そうは言っても、今年でもう十四歳になるのだが)双子が重い荷を持っていることを見かねてすっと持ってくれたのだった。スマートでかっこいい。
「何か、こうしてると遊星とアキ姉ちゃんがパパとママみたいに見える」
 龍亞が思った通りのことをぽつりと漏らすとアキが顔を赤くして「な、何言ってるの龍亞ったら」と焦ったような声を出した。アキは遊星にずっと惚れているのだということを龍亞は知っているから、その反応ににやにやして「ねぇ遊星!」と話題を遊星に振る。この調子では未だにアキの一方通行なのだろうか、もうアキは外国へ旅出たないといけないのに? そんなことを考えながら遊星の顔を覗き込むと僅かに赤い。
 ははあ、これはアキ姉ちゃんやらかしたな! と余計ににやにや笑いを深めているとぱしんと龍亞の頬を叩く小さな手があった。龍可だ。
「いってぇ、何するんだよ龍可」
「遊星とアキさんをからかうのはよしなさい。それに、もうすぐ本当のパパとママにやっと会えるのにそういうこと言うの、ちょっとどうかと思うわ」
「だって、ほんとのパパとママより遊星達の方が付き合い深いじゃん……」
「……もうすぐ、ということはご両親がこの空港に来ているのか?」
 あっさりと顔の赤みが引いたらしい遊星が真顔で尋ねてくる。龍可と龍亞は頷いた。
「そりゃ、流石に子供だけで飛行機乗るのは危ないし」
「アキさんと同じドイツに行くって言っても、着いたら目的地は違うしね」
「確かにそうだな。……ご両親とは大分疎遠だったようだが、その、二人は……ご両親のことは、嫌いか?」
 おずおずと申し訳無さそうな感じで遊星はそんなことを口に出した。遊星には両親がいない。二十年前のゼロ・リバースで天涯孤独になってしまったからだ。そのせいで、彼は家族という言葉にちょっと敏感なのだった。家族が仲違いをしているのは良くないというのが彼の持論でアキが両親に反発していた時もこの人は自らの体を張ってそれを咎めたのだ。家族という共同体の形、あり方に彼はわかりやすく夢を見ていた。優しい両親と元気な子供、という理想像を口には出さないがとても大事にしている人なのだった。
「別に、嫌いじゃないよ。五年ぐらいメールでしかやり取りしてないけど、ここ一、二年はメールの回数も増えてたし、内容も良くなってたし。その前の三年ぐらいはすっごい事務的なメールだったんだ。あんなの赤の他人でも書けるよ」
「でも、七歳までは一緒に暮らしてたのよ。……正直あんまり覚えてないけど、嫌だったり苦しかったりした記憶はないわ。なんだかまぶしい陽の光ばっかり印象に残ってる。まぶしくて、優しくて、あったかかったような……」
「……二人とも、もしかしてご両親の顔、覚えてなかったりするの?」
 龍可の口ぶりにアキが驚いて口を挟んでくる。しかしその質問には双子は揃えて首を振った。
「顔は、写真も一応あったし。あんまりないんだけどね……二人とも写真撮られるの嫌いだったみたい。その代わり俺と龍可の七歳までの写真はいっぱいあるよ」
「写真撮るの好きだったのかな。……パパは外国の人みたいで、目も髪も青いの。あと、眼鏡かけてる写真が多かったかも。顔はちょっと龍亞に似てるかな。ママは普通に日本人よ。パパと一緒で目と髪が両方茶色。元気の有り余った感じの人だった」
「そうそう。なんていうかエネルギッシュな感じ。あとデュエルがすっごい好きだったんだ。俺と龍可がデッキ持ってたのもアカデミアに入ったのもパパとママの影響だよ。……ぼんやりしてるんだけど、パパとママは仲が良かった……と思う。二人でよく笑ってた。時々テンション高くなってさ、何て言うのかな、子供っぽいとこが……あ」
 うっすらとした記憶を手繰り寄せていた龍亞の声が止まる。龍亞は「あー」、と小さく呟いて遊星の手を引き、「あっち見て」と視線を変えるよう促した。
「あの、こっちに向かって爆走して来てる人みたいな感じ。中央の。ていうか、あれたぶんママ」
 龍亞が言い終わるかしないかのうちに「龍亞! 龍可! 会いたかった!!」というよく通る声が響いて龍亞と龍可の体を細い腕が包み込む。綺麗な茶髪が双子のエメラルドグリーンの髪の毛に埋もれた。ぐりぐりと頬擦りされる。くすぐったいし埋もれて息がし辛いしであっぷあっぷしていると急にひょいと軽い調子で双子から母の体が引き剥がされた。見上げると、眼鏡を掛けたサファイアグリーンの髪の男性が母を摘みあげている。
「やめなさい。子供達を呼吸不全に陥らせる気か」
「うっ……だって五年振りだぜ、嬉しくって……」
「お前なぁ、お前が恥ずかしい行動を取って困るのはほかでもない子供達だぞ。ここ日本だし。家に着いてからやれ」
「だってよぉ……」
「パパ、ママ」
 コントのような遣り取りをしている男女が、そう呼ばれてふっと押し黙る。何かまずいことでもあったのかと龍可は身構えたが母が感極まったかのような顔になったのでまずいわけではないのだと理解する。もう一度両親を呼ぶと二人は小さく「龍可」と名を呼んで頭を撫でた。
「ずっとほったらかしでごめん。愛想尽かされててもしょうがないと思ってた。パパとママだって、親だってまだ思っててくれてありがとう。大好き」
 母がそんなことを言う。父も頷いて龍可のおでこにキスをした。びっくりして目を丸くしていると、母がずるい、と父にせがんでキスをしてもらっている。唇にだ。初めて見る光景に何となく龍可は目を背けてしまい、その先でとんでもないものを目にした。
「ゆっ、遊星?!」
 遊星が顔面蒼白になってぶつぶつと何かを呟いている。それを龍亞とアキが両脇から必死に宥め、あたふたしていた。遊星は浮言を言う精神不安定患者のようになっている。龍亞が龍可の視線に気付き手招きをした。
「あっ、龍可、こっち応援来て!」
「う、うん。行くわ。……遊星は一体どうしちゃったの?」
「それがさあ、なんか、よくわかんないけどショック受けてるみたいで……」
「え、遊星?」
 双子の会話を聞き付けた母が父から離れてこちらに寄って来る。遊星の肩がびくりと震えた。直視したくない現実と向き合うことを余儀なくされている子供のような反応だった。
「あ、本当だ。よぉ遊星、久しぶりだな!」
「え、ママ遊星のこと知ってるの?」
「ちょっとした縁でなー。どうしたんだよ遊星、震えがすごいぜ」
「じゅ、じゅうだい……さん……?」
 震える声で遊星が言う。母は気安いふうに「そうだけど」と腰に手を当てて言った。母の、アキと比べると見劣りするが(という比ではなくアキが大きすぎるのだが)それでも女性と一目でわかる胸部を声と同じように震えている指で力なく指して、遊星は「うそだ」と泣きそうな子供みたいな声を出す。
「あなたが、龍亞と龍可の、母親?」
「うん。父親はあそこのヨハン」
 その返答が駄目押しになったのだろうか。ヨハンという名を耳に入れぬ間に遊星は失神してばたりと倒れた。



◇◆◇◆◇



 遊星が目を開けると、そこには見知らぬ天井と見慣れた少女の顔があった。心配そうに目を細めてアキが遊星の顔を覗き込んでいる。ああ倒れたのだったと自らの失態を思い出して遊星は呻いた。あまりにも情けない姿だった。
「……ここは」
「空港のすぐ傍のホテル。あなた、丸々四時間は眠っていたわ。何がそんなに衝撃的だったの」
「……後で話す。それよりアキ、そんなに時間が経っているのなら飛行機は……?」
「私も龍亞達も明日にずらしたわ。あなたが心配でいてもたってもいられなかったもの」
 このホテルも二人のご両親の御好意で取って貰ったものだから後でお礼を言ってね、と告げてからアキはまた心配そうになって「二人のご両親に、あなたお会い出来る?」とまた心配そうな顔になって尋ねる。会ったらまた倒れてしまうのではないかと危惧しているようだった。気分はなんとか落ちついてきていたが、遊星はそれには「わからない」と首を振る。
「まだ上手く呑み込めてないんだ。十代さんが、まさか、」
「仲間の母親だったなんてなあ。まあ、驚く気持ちはよくわかる。君の記憶の中では十代は男なんだもんな。話は十代から聞いた」
「……あなたは」
「始めまして、不動遊星君。うちの子供達がお世話になりました。父親のヨハンです。……ああ、十代なら当分来ないと思う。子供達を握り締めて放さないもんで」
 気が付くと、ドアの方から歩いて来る人物がいた。眼鏡をかけた若い男性で、見た感じ歳は二十代後半からいいとこ三十歳といったところだ。十三歳の子供がいる親としてはやや若過ぎる風貌だったが、若く見える性質なのかもしれない。
 雰囲気が何となく自身の父を連想させた。白衣を着なれているようなそんな錯覚を覚える。
「十代さんは、本当に龍亞や龍可の母親なんですか」
 遠慮なしに歩み寄って来たヨハンに遊星は恐る恐る尋ねる。ヨハンは「ああ」と大きく頷いて遊星に現実を突き付けた。
「正真正銘、血の繋がった親子だよ。あのお腹を痛めて子供達を産んだんだ。君の中で繋がらないって顔をしているな。無理もない」
 両手を広げて肩を竦める仕草をする。
「俺も最初は男だと思ってた」
「……それはどういう……」
「男装してた、っていうか。色々あったんだ。君達は信用出来そうだから話すけど」
 声を潜めて「あいつ、半陰陽なんだ」そう続けた。遊星は目を白黒させる。半陰陽。聞き馴染みのない言葉だったが意味は何となくわかった。雌雄モザイク。つまりそういうことだ。
 男であり女である。
 そういう存在。
「長いこと男として育ってたんだが諸事情あってちょっと厄介なことになっちゃってな。しかもしょうのないことに俺はあいつに惚れてた」
「……男だと思っていたのに?」
「愛の前に性別は些細な問題でしかない」
 ヨハンは大真面目な顔で言う。面食らってしまって、言葉にならない間抜けな声ばかりが口から零れていく。遊星の中の価値観、倫理観、常識、そういった「世界」を構成しているものががらがらと音を立てて崩れていくような気がした。変わることのないと思っていた地盤を今根こそぎ引っ繰り返されたようだった。
「君の中の十代が、どういうふうに美化されていたのか今の反応でなんとなくわかったような気がする」
「……美化」
「そう。思い出の中で人はより一層輝く。きっと君の中の十代はなんだかすごくて、無性にかっこよくて、明るくてカリスマ性に満ちあふれていたんじゃないか? ヒーローみたいに思ったんだろう。だが君は色々と見落としをしている。まずあいつはものすごく俗っぽいミーハーで、重度の武藤遊戯狂だ。そして弱さのない人間などいない。あいつは完全無欠の超人じゃない」
 ヨハンの言葉は止まることなく遊星の認識を抉っていく。完全な人などいない。理屈では分かっている。だが、遊星の記憶の中で遊城十代は武藤遊戯と並んで燦然と輝いていた。憧れの人だった。一目見て、話して、その人の持つ何かに呑み込まれてしまったのだった。遊城十代は不動遊星の英雄だ。男らしい豪快な人で、気持ちの良い人だった。
 言い方は悪いが、誰かの母親になるような柔らかい人ではなかった。彼は誰よりも自由奔放で型破りな人だった。
「弱さはある。こういうと笑ってしまうが、人並には」
「……それは、まあ、わかります。でも、何故あの人が母なんです。何故あの人が、母になることを選んだのか俺にはわからない」
 遊星は納得のいかない様子で口籠もる。結局遊星の中で問題はそこに行き着くのだった。あの遊城十代が母。悪い夢でも見ているのではないかと疑えたらどんなにか楽だっただろう。思考が錯綜してもつれて上手い具合に線が繋がらない。そもそも十代の胸部の膨らみからして遊星には異次元の出来事であった。遊星が出会った彼にはそんなものはなかった。
 膨らんだ腹を撫でている十代などというものはいっそ倒錯的過ぎて想像だとしても遊星の手に余る。
 そうしどろもどろになりつつも言うとヨハンは「参ったなぁ」と言って苦笑した。
「胸はなー、子供を産んでからホルモンバランスが崩れたのかな。ちょっと膨らんじゃったんだ。それまで男寄りだったものが母になったことで女に傾いたらしい。君が会った頃の十代は子供を産む前だ。だからまだ男寄りだったんだな。勿論十代は今でも十分以上に男らしいが」
「質問に、答えてください。どうしてあの人が母になったのか」
 やや茶化して誤魔化すような言葉に遊星が声を低くして返すとヨハンは「君は真面目だな」と言って父親が子にするように目を細めた。
 「端的に言うと、俺がプロポーズしたからなんだが」、そう切り出して彼は続ける。
「言い方がちょっと下世話になって悪いんだが、まあ、俺があいつを女の子にしてしまったんだろうな。あいつは最初、自分なんかは俺には相応しくないのだと言って俺を拒んだ。ただ、最後には俺を受け入れてくれた。男である俺を許容するというのはそれまで男として生きてきた年月を半分否定するようなものだ。その決断を俺は嬉しく思っているが、同時に罪悪感も等しく併せ持っている。彼を彼女にしてしまうことの罪の意識だ。だが、それでも、」
「……」
「俺は十代に焦がれていた。蝋の翼をもがれたイカロスのように十代という太陽に焼かれながらそれでも無理をして飛び続けた。太陽の隣にいたかった。十代を渇望していた。愛してるんだ」
 それは恐ろしくストレートな愛の感情の吐露だった。ともすると遊星には眩しいぐらいまっすぐな感情だった。羨ましかった。そのように誰かを愛して愛されるということが酷く羨ましかった。
「そして十代は母になった。そうすると母性が強くなる。母になることで、何を捨てても子を守ろうとする生き物になる。父親もそのつもりなんだが、母親の想いの強さには敵わないんだって昔言われた。俺も十代に負けないぐらい子供達を愛してるつもりなんだけどなぁ」
「……どうしてあなたのような人が子供を、龍亞達を放っておいたのか少し理解に苦しむ」
 十代は元より、今喋った様子ではヨハンもまた子供達をほっぽり出してどこかへ行ってしまうような無責任さは感じられなかった。彼の言葉の端々には家族への深い愛情というものがきちんと感じられた。子を捨てるような親じゃない。ならば何故五年という長期間に渡って子供を広い家に置き去りにして事務的な連絡しか寄越さなかったのだろう?
「あなたは龍亞と龍可のことをきちんと愛しているのに」
「都合があったんだよ」
「子供より大事なものがですか」
「子供のためだ。子供達を守るためにこそだった」
 まるで意味が通らない。子供を守るためならば何故子供のそばにいてやらなかったのだろう。だが遊星はその疑問を口に出すことは出来なかった。それより深く踏み込むことは許されていないのだった。ヨハンの腕が遊星を遮る。遊星ははっとして口を噤んだ。
「お喋りが過ぎたな。君と話しているとうっかり余計な口を滑らせてしまいそうだよ。……とりあえず、空白の五年間は宇宙警備員をやっていたとでもいうことにしておいてくれ」
「は?」
 ヨハンは寂しそうに目を細めた。
「俺と十代はちょっとわけありなんだ」
「え……」
 遊星が「この人は何を言っているのか」と考えているうちにヨハンは「この話はここでおしまい」と言って立ち上がってしまう。それからくるりと振り向いて、遊星とアキに向かってにこりと笑った。大人の、小ずるい笑顔だった。
「部屋は君達で一つ払っておいたから好きに使って構わない。俺と十代、それから子供達は角を曲がった先の八〇六号室にいる……けど、まあ君の中で整理が付くまで今日一晩ぐらいは十代とかち合わないように調整しとくよ。あー、夕飯は適当にレストランあたりで取ってくれ」
「あ、はい」
「それじゃ、明日の朝よければ二階のレストランで会おう」
 一方的にそう告げると何か企んでいるような笑顔を残してヨハンは部屋を去った。嵐のようだ、と考えて思わずアキと顔を見あわせる。十代も嵐の中心にいるような人だった。そう思うと、あの二人は似たもの同士だったのかもしれない。
 遊星は一先ず起き上がって着のみのまま寝てしまったためにやや皺の付いてしまった上着をハンガーか何かに掛けようとベッドから起き上がる。
「……ん?」
 起き上がって、ベッドが異様に大きいことに気が付いた。どう見積もっても一人で寝るためのサイズではない。部屋をぐるりと見渡してみると遊星が今収まっているもの以外にベッドはないこと、それどころか満足に寝られそうなソファすらもないことがわかった。一人掛けのソファが机を挟んで二個向きあっていて、無理をすればまあ寝られなくはないだろうが流石に限度というものがある。
「……部屋を、一つと言っていたが」
「ええ」
「これは、あの人一流のジョークなのか?」
 言うまでもなくベッドはダブル――というよりはキングサイズであった。男女二人が収まるのに過不足ない広さだ。だが一つしかない。広く、収まれることは収まれるが一つしかない。
「俺は床で寝る」
「それは、流石に頷けないわ。風邪をひいたらどうするの」
「ならばフロントまで行って隣の部屋も取るか」
 遊星は代案を提案してみる。しかしアキはほんのりと頬を染めてその提案にも首を振った。
「遊星と同じ部屋がいい」
「……参ったな」
 アキの意見を無視するのも気が引けて、遊星は困ったものだと宙を仰ぐ。今晩をどう過ごせばいいのか遊星にはわからなかった。
 何もしない自信はあったが。


 ただいま、とヨハンが部屋のドアを開けると「おっ、お帰り」と出迎える声があった。それに「お帰り」「お帰りなさい」と二部合唱が続く。妻と、それから二人の子供達のものだ。
 子供達はすっかり母に馴染んで、卓上でデュエルをやっている。ハンデとして十代に双子が二人掛りでかかっていっているようだったが、表情を見る限り十代の圧勝だった。どうやら手加減一切無用のスタンスのようだ。大人気ないようだが手を抜かずに相手に本気でぶつかることこそが十代にとっての対戦相手への儀礼、リスペクトの精神であるのだと昔に聞いた気がする。丸藤兄弟から十代が学び継いだものだった。尤もその丸藤兄弟ももういない。
 十代の兄貴分的存在だった丸藤亮も、何かとヨハンにつっかかってきた弟分の翔も何十年か前に死んでしまった。寿命で家族に看取られ安らかに逝ったのだった。
「おー、デュエルか。父さんも混ぜてくれ」
「ヨハンは駄目。流石にバランスが取れなくなる」
「子供達に付いても?」
「俺が勝てなくなる」
「勝つ気まんまんか。流石覇王様は実の子供にも容赦ないぜ」
「え、今何て言ったの?」
「母さんの知られざる過去の話さ。……龍亞、何でそこでこのカード使わなかったんだよ」
 結局ヨハンは龍亞、龍可二人に口出しをして子供サイドについてしまう。十代はぶうぶうと文句を言っていたが黙殺した。
「デュエルは楽しくなきゃなー。再会したばかりの母親にぼこぼこにされたりなんかしたら母親不信になるかもしれないだろ」
「ひっでぇこと言うなぁ。そんなことないよな、なあ龍亞、龍可」
 十代が「未来融合‐フューチャーフュージョン」による「E・HEROエリクシーラー」の召喚を成功させながら口を尖らせて問う。龍亞は話を振られて少し唸っていたがすぐに「微妙」と返事を返した。
「自分でもびっくりするぐらいパパとママには馴染んだけどデュエルはそういうの別だし。流石にここまで徹底的にやられるとなぁ」
 龍亞の言葉に手書きのライフ計算のメモを覗き込んでみると「十代 四〇〇〇」「龍亞 四〇〇〇→一九〇〇→八〇〇」「龍可 四〇〇〇→二五〇〇→四〇〇」と記されており、猛烈な勢いで子供達二人のライフが減少していっていた。その一方で十代は無傷だ。
「ママ、すごく強いのね」
「まあな! 龍可も龍亞も筋はいいぞ。あとは修練次第だな」
 得意気に言う。龍可は素直に関心していたようだが龍亞は頬を膨らませて「でもさあ」と口を尖らせた。
「ママも確かに強いけど、……デュエル好きなのは覚えてたけどこんなに強いとは思ってなかったけど、遊星も強いよ。すっごい強いよ。なんたって世界を救ったんだ」
「龍亞の手柄じゃないのになんでそんなに偉そうなのよ」
 龍可が呆れ顔で言う。その後に、「でも遊星が世界を救ったっていうのは本当よ」とフォローの言葉が続いた。十代は得心したふうに頷いて「遊星が」と感慨深げに漏らす。子供の成長に思いを馳せているようで違和感を覚え、龍亞はそういえば十代が遊星のことをどうやら知っているふうであったことを思い出した。
「そういえばさあ、結局ママと遊星の関係って何なの」
「昔遊戯さんと三人で世界滅亡の危機に立ち向かった仲だよ」
「……遊戯さん?」
「伝説の初代決闘王。武藤遊戯、っていう名前ぐらいは知ってるだろ」
 その疑問に答えたのは娘の手札を覗き込んでいたヨハンだった。龍亞がえーっ、と大袈裟に驚く横で龍可も目をまん丸くする。なんでなんで、と急かすような龍亞の声にヨハンは「落ち着け龍亞」と宥めるように言ってやってからことのあらましを簡単に話して聞かせた。
「昔、遠い未来からやって来た悪いやつが不動遊星の時代からスターダスト・ドラゴン、父さんと母さんの時代からサイバー・エンド・ドラゴンと究極宝玉神レインボー・ドラゴン、武藤遊戯の時代から青眼の白龍と赤眼の黒竜を盗み出したことがあった」
「あっ、あの過去がどんどん変なふうに書き変わっていった時だわ」
「それでタイムスリップしたそいつを追っかける途中で遊星は母さんと遭遇する。母さんを拾って二人で更に過去へ行き、最終的に遊戯さんと合流し三人でそいつをぶちのめした」
「ワイルドだね」
「なんだかその人逆にかわいそう」
「ドラゴン盗んだ方が悪いんだ。ヨハンのレインボー・ドラゴンを盗むなんて許せない」
 十代が聞き分けのない子供のような拗ねた声を出す。ヨハンのレインボー・ドラゴンという台詞に双子は一瞬考えて、それから「パパの?」と声を揃えた。
「パパのドラゴンが盗まれたんだ? ってことは、なんかすごいモンスターなの? 遊星のスターダストみたいに?」
「そりゃ勿論、すごいぜ。かっこいいし綺麗だし」
「ママが自慢気に話してどうするのよ。龍亞と一緒じゃない」
「龍可のエンシェントフェアリーと俺のパワーツールもすごいんだよ!」
「もう龍亞、言ってるそばから!」
「まあまあ、いいじゃないか。ほら、父さんのマイフェイバリット、見せてやるから」
 その言葉と同時にいつの間にか装着されていたデュエルディスクからやや小さめのソリッド・ヴィジョンが投影されて何体かのモンスターが現れた。白く壮麗なドラゴン、蒼い角を持つ天馬。黄色い勇猛そうな虎に毛並の美しい猫が立ち、それから四つの耳を持つリスに似た不思議な紫色の小動物はヨハンの肩にちょこんと乗っている。
 龍亞と龍可が息を呑むとヨハンと十代は二人で得意気な顔をして悪戯が成功した子供のように笑った。
「龍亞は精霊、見えないんだよな。ディスク通してるから見えてるよな? 俺の家族達。……覚えてるか? 昔一緒に遊んだの」
「う……ん……?」
『るびるび?』
 小動物が愛らしい鳴き声を発しながら龍可の肩に飛び乗る。脳裏にちらちらと走るものがあって、龍可は「ルビー?」と小さく呟いた。幼い頃の、まぶしい光の中の思い出だ。肩の上に今のように乗ってくる「重さ」があった。少し重くて、温かい。生き物の体温。幼い龍可や龍亞の頬にすりすりと体をすり寄せてくる温度。
「……ルビー。ルビー・カーバンクル」
『るびぃ』
 「覚えててくれた?」とでも言うふうにルビーが嬉しそうに龍可の頬を舐めた。舌の高い温度、湿った感触が龍可の頬に伝わる。まるっきり子リスのようだった。だけどルビーは精霊だ。
 どうして感触などというものがあるのだ?
「そうだ、ペガサス。サファイア・ペガサスじゃん。アメジスト・キャットにトパーズ・タイガー。幼稚園の頃あったかい毛に抱き着くの好きだったんだ。……何で忘れてたんだっけ?」
 龍亞も宝玉獣達のことを思い出したようで、懐かしく思いながらも首を捻っている。龍可のサンライトユニコーンを見た時になんとなく覚えた既視感の正体がサファイア・ペガサスなのだということを今唐突に思い出してどうしてかと思案しあぐねている。
 宝玉獣達は子供達がまだ幼い頃、よくデッキから飛び出てきては遊び相手を務めていてくれていたのだった。ヒーローたちは遊び相手ではなく、周囲の巡回と警備に当たっていたから子供達は殆ど今日が初見だっただろうが(イービル・ヒーローなんかもいるし皆力が必要以上に強いから十代は彼らを子供の遊び相手には選ばなかったのだ)、宝玉獣達はそうではない。小動物のルビーは子供達が生まれてからというもの二人の頭もヨハンと十代の肩に加えてよく寝床にするようになっていた。
 勿論、双子が宝玉獣の存在を今の今まで薄ぼんやりとしていたものに感じていたことには理由がある。
 十代とヨハンは意図的に、自分達の認識がぼやけてしまうように子供達と離れてしまう際の情報操作を行っていた。当然、父母と密接な関係にあるモンスター達もその影響で存在が薄くなってしまう。だがそれは苦肉の策なのだ。自分達を愛してくれた子供達への、二人なりの誠意だった。
 或いは嫌われたくないという心からくる防衛本能なのかもしれないが。
 龍可がルビーの名を呼んだことがトリガーになって、双子の中の閉ざされていた記憶がどんどんクリアになっていく。そう時間が経たないうちに二人は父のもう一つの家族である「宝玉獣」のことをしっかりと思い出した。今はまだ四匹しか出ていないが、本来は七匹で一揃いの存在であること。究極宝玉神レインボー・ドラゴン、父のフェイバリットであるそのカードは七つの宝玉獣を束ねる存在で、父は滅多にそのカードを見せてくれなかったこと。だから一番記憶が薄ぼんやりしていて例の事件の時に新聞記事の写真越しで見た時に思い出せなかったのだろうか。
 そっとその体に触れてみると、触れた先には確かな実体があって蘇ってきた記憶の通りに柔らかく、また温かかった。生き物の温度だ。ソリッド・ヴィジョンのはりぼてではない。
「あれ……でもヘンだぞ。サファイア達って精霊だよね?」
「そりゃ勿論」
「だったらあったかかったり柔らかかったりするのっておかしくない?」
 トパーズの毛づやを確かめながら龍亞が尋ねると龍可もルビーを撫でながら同意した。精霊は現実世界ではごく一部の人間にしか見えない。ディスクを通せば誰にでもその姿を見ることは出来るが、それはソリッド・ヴィジョンを通した無機質な姿、投影物にすぎないのだ。精霊界でならば人と同じように接することが出来るがここは精霊界ではない。
「うーん。龍亞、龍可は精霊がディスクなしでも見えるだろう?」
「うん。ちょっと羨ましい」
「実は父さんと母さんは龍可よりすごくて精霊も見えるけれど精霊を実体化させることも出来るんだ」
「ええー?」
 龍亞は疑わしげな表情になる。龍可も、真っ向から否定する態度こそ取っていないもののかなり眉唾ものだと思っているようだった。信じられないが、その気持ちの奥底でそうでもないとこの現象に説明がつかないということを理解しているのだ。
「信じてないなぁ? よし、二人ともお気に入りのカードを出してくれ」
「今デュエル中よ」
「心配要らない。エリクシーラーの攻撃で二人ともすぐに負けだ」
 にこやかな笑顔で言い切られ、どこか煮え切らない気持ちのまま二人はデッキからカードを選び出した。それぞれエンシェント・フェアリーとパワー・ツールを選び出すと「それもいいけど、もうちょっと小さいのない?」と横やりが飛んで来る。仕方がないのでもう一枚ずつ選び出して龍亞と龍可は二枚のカードを十代に渡した。追加のカードはクリボンとD・モバホンだ。
 十代が受け取ったカードをしげしげと眺め、懐かしそうにまなじりを下げる。モバホン――ディフォーマーカテゴリのカード――ならびにパワー・ツールの入っているカードパックを買ってきて龍亞に与えたのは他でもない十代だった。丁度龍亞がエレメンタリースクールに上がった時に発売されたパックのカードなのだ。クリボンはもっと思い出深い。出産を記念して、武藤遊戯のクリボーと十代自身のハネクリボーをモデルにインダストリアルイリュージョン社が造りおろした世界に一枚のオリジナルなのだった。
 そんなことを考えているとハネクリボーがすっと現れて視線で「早くやってやれ」と促してくる。十代はハネクリボーを宥めるように撫でて実体化させてやってから四枚のカードをディスクに叩き込んだ。
 クリボンが勢いよく飛び出してハネクリボーの羽にリボンの付いたしっぽを触れ合わせてから龍可の胸に飛び込んでいく。モバホンも龍亞の方に飛んで行ってポーズを取った。パワー・ツールとエンシェント・フェアリーは顕現すると並びたって龍亞と龍可に会釈する。
「エンシェント・フェアリー」
 クリボンを胸に抱えたまま龍可が小さく名前を呼ぶ。その隣で龍亞はパワー・ツールのつるつるしたボディにぺたぺたと触っていた。パワー・ツールも嬉しそうに玩具のボディを動かしている。お互いに触れ合えるのが嬉しくてたまらないらしい。
『お久しぶりですね、龍可』
「……うん。あの、遊星に託した時以来ね、出てきたエンシェント・フェアリーに会えるのは。あなたは普段精霊界で忙しいから。……ねえ、エンシェント・フェアリー」
『なんでしょう、龍可』
「パパとママって何者なの?」
 精霊界の女王であり物知りでもあるエンシェント・フェアリーに龍可は声を顰めて、しかし包み隠すことなく直球で尋ねる。するとエンシェント・フェアリーは間髪入れずにきっぱりと答えを返してきた。でもその回答は龍可にとってはありきたりすぎて綺麗ごとにしか感じられない。
『あなた達二人のご両親ですよ。血の繋がった、確かな家族です。お二人は龍亞と龍可のことをとても深く愛しています』
「……だったら、どうして五年間も私達を放っておいたの」
 龍可は表情を曇らせる。五年のブランクなどまるで始めから存在しなかったかのように十代とヨハン、龍可と龍亞の血の繋がった両親との間にあった再会時特有のよそよそしさというものはあっという間に消えてなくなってしまっていたが、だから二人が子供達を放置していたという事実が消え去るわけではない。
 だが本人達にそれを問い詰めるのは気が引けた。龍可のあまりはっきりとはしていない幼少時の記憶の中のどこにも両親が優しくなかった覚えはなかったし(まあ、時には厳しい時もあったが)、両親が自分達兄妹のことを心から思ってくれているのであろうことは疑うべくもなかった。龍可は生まれつき人の心の機微を察知するのは得意なのだ。
 だからエンシェント・フェアリーに尋ねてみたのだが、彼女の口から出てくる言葉は紋切り型のようで物足りない。
「パパとママが私達のことを可愛がってくれていたのはわかるの。なんとなく覚えてるわ。再会した時の『会いたかった』って言葉にも嘘偽りはないと思う。でも、だったらなおのことどうして? って気持ちが強くなる」
『……お二人にはお二人の事情がおありになります。私はそれを知っていますが――』
 龍亞と何か笑いながら話している両親の方をちらりと見てからエンシェントは龍可にしか聞こえないぐらいひっそりとした声でその言葉を告げた。
『お二人は、そのことを龍可と龍亞には知られたくないと思っているでしょう。私もまた同様に龍可と龍亞に告げるべき内容ではないと考えています。辛い記憶です。龍可もお二人に尋ねることは控えて欲しい。……ただ、これだけは知っておいてください、龍可。お二人は龍可と龍亞のためにこそ、耐えたのです』
「何に?」
『最愛の子供達から離れなければいけない辛さから』
「……そう。ごめんなさい、エンシェントフェアリー。あなたの言う通り、もうこのことに関してはあんまり考えないようにするわ」
 龍可は後ろで何やらはしゃぎだした龍亞の方を振り向いて呟く。
「だってパパとママが私と龍亞にとってとっても大事な人だってことは変わらないもの。大事な人を困らせるのは良くないことよ」



◇◆◇◆◇



「……ヨハンさん、十代さん。一つ伺いたいことがあるんですが」
「おー、なんだ?」
「どうぞ。その感じだと十代へのショックからは立ち直ったってことで大丈夫か?」
 翌日の朝、レストランに現れた遊星はおはようございますと軽く会釈をしてすぐにそんなふうに言葉を切り出した。
「一晩たって、受け止める決心が付きました。……それもそうなんですが、何故俺とアキをあえて同室にしたんです」
「ああなんだそのことか。龍亞がそこのお嬢さんと君は煮え切らない恋人同士なんだって言ってたし、その方が安く済むし。理由はそのぐらいだけど」
 予期していた質問なので流暢に受け答える。遊星は小さく「……そうですか」と漏らして龍亞の方を見た。龍亞は素知らぬふりで朝食を続けている。
 ヨハンの隣で十代が複雑な顔をしていた。面白半分、同情半分といった感じだ。遊星の後ろに控えているアキは彼ほどその事柄に頓着していないようでにこやかな顔のまま龍亞の方に寄っていく。そして龍亞の頭を撫でた。
「何もしなかったのか?」
「………何をです?」
「いや、それならそれでいいんだけど」
 僅かに顔を顰めた遊星の様子にヨハンはつまらなそうな声でそんなことを言って朝食を取るように勧める。遊星は無言で龍亞達の方へ寄っていってアキを拾い、隣のテーブルに着くと皿を持って食材を取りに出て行った。朝食はバイキングなのである。
 ヨハンはははあ、といま一つ面白くなさそうな顔をした。遊星の冷静に見える頬に一筋汗が垂れていたことで大方の結末を悟ったからだ。
「遊星君はあの調子じゃ手出しなしだなー。せっかくお膳立てしてやったのに」
 ぽつりと漏らすと十代が無然とした表情で「当たり前だろ」と返す。
「ヨハンと違って遊星はさかりのついたけだものじゃないんだよ。遊星は紳士なんだ」
「今は違うぞ」
「昔のヨハンはがっついてた」
「十代、頼むから朝からそういう精神攻撃止めねぇ?」
 十代の声がだんだん女の子特有のねちっこさを帯びてきてヨハンは困ったような声を出す。
「もう随分昔の話だ」
「俺がヨハンのこと好きじゃなきゃ、絶対大変なことになってたぞ」
「……悪いと思ってる」
 仲の良い両親が急に小喧嘩のようなことを始めたので龍亞と龍可も十代とヨハンに視線を向け始めた。だが当のヨハンは十代のこの態度が突発的な思い付き、わりといつもの拗ねた甘えであることを知っているので焦るふうもない。ヨハンは十代の耳に息を吹き掛けるようにして囁いた。
「でもそんなことがどうでもよくなってしまうぐらいに、俺も君もお互いを愛してる」
「うん。不思議かつ幸運なことにな」
 「そうだろ?」といわんばかりの笑顔で十代に爽やかな表情を向けてやると十代は「朝からこっぱずかしい奴」とぷいと顔を背けて返してくる。だがその肩はぷるぷると震えていた。今日は恥ずかしがってるのか笑っているのか。どちらにせよ十代が機嫌を損ねているということはない。十代はヨハンに惚れているのだ。
 かれこれ百年は前からずうっとそうなのだ。
 そしてヨハンは弱味でも握られているんじゃないかというぐらいに十代にべた惚れで愛し抜いていた。ただの人間の、青臭い若僧でしかなかった頃から十代と同じようにずれた時を生きる存在になった今まで途切れることなく彼であり彼女である存在を何よりも深く強く大切に思っていた。
 十代がいたから生きている。比喩ではない。本当のことだ。
「……パパとママって、なんか変」
 龍亞が言う。
「なんか子供っぽいよ。遊星とアキ姉ちゃんの方が大人みたい。まああっちは見てるとそわそわするけどさ」
「いいんだ。こういうことを言えるってのはさ、それだけ父さんと母さんが仲が良いってことなんだからな」
「うーん。そうかもしれないけど」
 龍亞は腑に落ちないようであったがしばらくすると考えるのを止め、トレイを持って追加の朝食を取りに立ち上がった。隣のテーブルで遊星とアキが顔を見合わせている。遊星が何かぽそりと漏らすと、アキが苦笑して遊星の手に自らの手を重ね合わせた。
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