05 / Extra

※おねしょた筆おろしネタのおまけエロ

 





「んーと。零、俺と赤ちゃんつくろう」
 真月零の姉の真月聖華がそんなことを何の前触れもなく唐突に言い放ったのはまだ零が小学校に通っている頃のことで、彼はほんの十一歳の穢れなき無知な少年にすぎなかった。黒いランドセルを背負った明るいサマーオレンジの髪を持った彼は、自分と同じサマーオレンジの長い髪を垂らす姉を見上げて、困惑の面持ちを隠さない。
 零は聡明だが、姉に過保護に守られて育ってきたため、余計な知識を持っていない。従ってどうしたら赤子が男女間にもたらされるのかということをまだ知らない。そういうふうに育てられたからだ。
 しかし、常識として子供は夫婦の間に生まれ決して姉弟の間に出来るものではないということぐらいはわかっていた。
「……あの。姉さん、僕達、子供ですよ……?」
「うん。それは知ってる」
 ――何が? 疑問符が零の頭の中で明滅した。しかし向こうにそれを思いやる姿勢はまったく見られない。
「でも俺は零と赤ちゃんつくりたいんだ」
 これはだめだ。てこでも動かない。物わかりのいい零は即座にそう諦めを付けて、改めて姉を見た。
 姉は零より五つ年上で、まだぎりぎり中学生である。指定された通りにセーラー服を着ていて、スカートの水色がまぶしい。特に制服に改造のあとはない。ぴっちりとひざ丈のスカートを穿き、その下に紺のソックスをだれさせることなくつけている。
「あの……姉さん、急になんでそんなことを? 何か、理由でもあるんですか?」
 おずおずと尋ねる。弟の零から見ても姉は非常にまじめで、品行方正、容姿端麗、頭脳明晰、と三拍子揃った非の打ちどころのない人間である。まず自分の弟に対してそういうおかしな要求をする人ではない。もしかしたら、何かに脅されていたり、変な薬でも飲まされて気がおかしくなっているのでは? そう考えて問うたのだが、聖華は「勿論、理由ならあるよ」ときっぱり答えてしまった。
「零、今日布団濡らしてただろ」
「え……あ、ああ……お、おねしょ。久しぶりに、しちゃって……ごめんなさい……」
「ううん。あれ、おねしょじゃない。たぶん夢精だな。というわけで今夜はお赤飯です」
「???」
「精通したってこと。零がオトナになったってことだよ」
 ポンポン肩を叩かれる。妙に自信満々で、否定しづらい。「おとな?」とよくわからないふうを装って復唱すると「そう。大人。女の子と赤ちゃん作れるようになったってこと」と極めて真面目な顔で返答された。
「……本気、なんですね」
「大真面目。とりあえず、リビングでってわけにもいかないし俺の部屋に行こうか」
「……わかりました。姉さんがそう言うのなら。よくわかんないけど……僕、頑張ります」
「そっか!」
 実ににこやかな笑顔。零が快諾したことで気分がよさそうだ。
 これを、にべもなく断っていたら一体どうなってしまっていたんだろう。考えるだに恐ろしいことだ。零は改めてこれからも決して姉に逆らわないようにしようという決意を固めた。何をするように指示されても、拒むよりはその通りにしていた方がきっといいはずだ。


 普段はあまり入ることのない姉の寝室は割と綺麗に整えられていて、悪く言うと雰囲気のない殺風景な部屋だった。部屋の隅にダブルサイズのベッドが置いてある。零の部屋のベッドも体のサイズに対して大きすぎるきらいがあるが(成長を見越してのことらしい)、それでもシングルサイズだった。
 このベッドは随分前から家にある。となると、その時から彼女はこうなること、こういう状況に連れ込むことを想定していたのだろうか?
(い、いくら僕でも……これがよからぬことだっていうことぐらい、察し、付きますよ)
 口に出して反論することが出来ないまま、ぐいぐいと引っ張られてベッドの上に投げ出される。そういえば小等部の制服を着たままだ。流石にランドセルは廊下に置いてきていたけれど、正直、最早そういう問題ではないような気がする。
 姉の方も中学の制服を着たままだ。彼女はスプリングの効いたベッドにぼふんと倒れ込むと、しばらくそれに埋まってもにょもにょと言っていたが、やがて起き上がって「れーい」零に向かって手招きをした。
「……?!」
 そしてスカートをたくしあげた。
「な、何やってるんですか姉さん?!」
「え。何って。零はほら、俺が純粋培養で育てたからえっちいこと知らないだろ。俺が教えてやんなきゃわかんないかなって」
「そ、そういう……は、はしたない、です、から!」
「今更だなあ。零、俺達これからもっとすごいことするんだぜ?」
 こてん、と小首を傾げる。その仕草が絶妙に愛らしく、ぐっ、と零は息を詰まらせた。これはよくない。流されてしまいそうになる。
 彼女はとても恐ろしいことに、スカートの下に何もつけていなかった。下着が一切ない。剥き出しの肌の色が、スカートの影で濃く彩られてすごくよからぬ感じだ。色付いて勃ちあがりかけた男性器の下に茂みがあって、すっぱいにおいがする。
「触っていいんだよ?」
 にこりと言い放つ。つまりいいから触れということだ。これは選択の余地ではなく義務を強いる命令。零はびくびくと体を怯えさせながら緩慢な動きで姉に近付いていき、そうして、人差し指を彼女が示した場所へ伸ばす。
 触れると、ひちゃり、という湿った音となまぬるい肉の感触がした。てらてらとして、ぬめる。今までにこういうものを触った経験はなく、幾分かの高揚感を覚えた。
「こ、これ……」
「女性器だな」
「え、う、うわ。それって、それって……」
「うん。そんで、この中に男性器を――ペニスを入れて、人間はセックスをする。人間以外の動物も、割と大抵は。そうやって体内受精をするんだ。零は頭いいから、わかるだろ?」
「う、うぅ、でも……」
「なんだよぉ、もうちょっと乗り気になれよ。折角俺が大事な大事なはじめてを弟にあげるって言ってるんだから」
「や、でも、だめですよ! 僕こういうの、むり……!」
「最初は頑張るって言ってたじゃん」
「み、みたら、なんか……怖気づいたんです。ねえ姉さん、あの、普通にご飯食べて普通に宿題したいです。だめです、よお……」
「え? うーん、ダメ、かな」
 にべもない。懇願は一蹴され、その直後、零は股間が冷え渡るのを感じた。ズボンを脱がされ、下着も剥ぎ取られ、情けない部分が丸出しになっている。一瞬の早業だった。
「ね、姉さん!!」
「我ながら、『アレ』がここまでの純情少年に育ったことには並々ならぬ努力を感じるな……うん……でもそのうちグレるんだろうな……それでも俺は零が好きだけど」
 すごく当たり前の話だが、零の幼い性器はその時まだ萎えきっていて、興奮とかそんなものは微塵もなく、怯えと恐怖だけがあった。あの清楚な姉の異常な変貌についていけないのだ。理性を消し飛ばせるほど興も乗っていない。むしろ、どんどん理性が冴えわたってきているふうですらある。
 それと反比例するように聖華の方はなんでもない顔のくせして興奮しているらしく、最早漢らしいとすら言えるほど堂々と曝け出された秘部からつう、と液が太ももを伝って落ちた。
「まあ、いいから……とりあえずこれ剥いちゃうか。零にも、皮かむりの時期とか、あったんだなあ……」
「何をっ、感慨深そうに……ひぐぅ?!」
 姉の取った信じられない光景にそこで零の思考が一度固まる。ヒッ、という呻きが知らず口から洩れ、がくがく震えて姉を見遣る。
 彼女はだらんとぶら下がっている性器を手で掴んだかと思うと突然それを口に入れてしゃぶり出し、舌でそれをなぞりあげ、ペロペロキャンディーでも舐めているみたいに吸い付いて、咥内での奉仕を始めていた。勿論零にはそこで何が起こっているのかを上手く認識することが出来ない。怖い恐いこわい、もういやだ、やめて、そんなふうに纏まりなく乱雑な思考が零の脳内を支配し、ノイズになって掻き乱す。
「でもやっぱ……ん、男の子、だ。きもちいーのは耐え難いよな……」
 じゅるん、という卑猥な音とともに姉の口中から性器が解放される。下を向いて縮こまっていた男性器が力を持ち始め、天を向きかけているのを視界に認めて零は血の気も引くような気分になった。
 零は自慰行為をしたことがない。だから、自身のものとはいえそんな浅ましい姿を見るのは初めてだったのだ。
 正確にはさっき姉の、雌雄同体を示す一対を見ているのだがそれどころではなかった。
「そっか。零にはまだ教えてなかったっけ。零は真面目だから俺の言いつけちゃんと守ってたんだな。あのな、男は興奮するとこうやって性器が勃起するんだよ。固くないと女の子の中にうまく入れられないから」
「い、いれ」
「女の子は……保健の教科書持って来ればよかったな。膣があってその奥に子宮があって、まあとにかく子宮に精子が入って上手く着床すると受精して赤ちゃんが出来る。詳しいことは後で座学でやろっか。まずは実践、な」
 絶対順番がおかしい。というか、何もかもが間違っている。それは、今まで絶対的に姉を盲信していた零が、初めて彼女に向かって不信感を抱いた瞬間だった。姉の言っていることは常に正しいし、生殖のメカニズムもそれできっと間違いないんだろう。理科で習っためしべとおしべの交配のメカニズムとそっくりだからだ。
 しかし同時にそれが倫理にもとることも理解していて、それを訴えようと口を動かすのだが、
「ひっ、う、ぁ、あ、ア、ひぁっ?!」
 意識を白く塗りつぶす電流のような衝撃が零を襲いその決意を水に流した。
 それは耐え難い衝撃で、また未知の快楽で、それまでに考えていたことが全部一発でどこか遠くへ吹き飛んでしまうようなそういうものだった。「えへへ。零のはじめての射精―。けっこういっぱい出たな!」思うところがあって顔をもたげると姉の赤く色づいた頬に、何か白い液が付着している。手や口でしごかれた性器が限界を迎えて射精に至り、その結果精液が付着したのだということを零は理解できないでいた。知らないことはわからない。
 しかしその、飛沫した乳白色の液体を肌に伝わせる姉の姿が恐ろしく性的であることは幼心に感じ取っていた。
「これでまあ粗方準備は整ったんじゃないかな?」
 首を傾げる。可愛らしい。仕草だけは、とても。
 皮を剥かれてグロテスクな見た目に近付いた自らの性器を目にして零は「どうしてここで卒倒することが出来ないんだろう」と泣きたい気持ちになった。


◇◆◇◆◇


 その後抵抗虚しく完勃ちにまで持って行かれた性器を強引に膣内に挿入させられ(動けないように固定されて向こうから突き刺された。零は死にたくなった)、意思に関わらず零は童貞を喪失した。ぐにゅぐにゅの肉襞に包まれていく感触の途中に、何かを突き破るような衝撃があって、その時ずっと笑ってた姉がちょっとだけ辛そうな顔をした。痛みがあったらしい。
「痛いんです、か?」
「その……いちおう、俺も処女だったんだよ。零以外とそういうの絶対したくないし。だからまあ……いろいろ。ちょっと特殊な事情があるから本当に初めてってわけじゃないんだけど」
 零にはその言葉の意味がわからなかったが、それを深く考える余裕も与えられず今までに経験のない感覚が下半身を中心にわきおこり、全身を支配しようとする。零の身体も確かに幼かったが、それに対する姉の身体もまだ幼い。十五歳なのだ。だが幼くてもけものはけもので、本能というべきものはしっかり備わっているらしく、もう、零は何が罪で何が許されているのか、そういう事柄を考えることを殆ど放棄しはじめていた。
「そう……そうやって、ン、奥までいれて……そしたら抜いて、な?」
「姉さん……もしかして、気持ちいいんです、か?」
「ん? うん。大好きな零といまくっついて、繋がってるんだよ?」
 ぐずぐずの下半身を指で示して、とても無邪気に彼女は言う。天使を見つけたの、と微笑む聖女みたいだった。でもやってることは痴女だ。
 交接している部分から熱がせりあがっていって、零の喉元まで達している。ずぷ、ぐちゅ、ちゅぐ。肉と肉が擦れ合う猥雑な音に、いやでも性感が高まって小さな身体で必死になって姉を犯した。いつも冷静で凛としていて、強くて恰好のいい姉が零の手によって顔を淫靡に歪めているのだ。「もっと、腰、さあ、」と姉が言うのでその通りに腰を叩きつけると満足そうにキスしてくれた。
「れい」
「あ……ね、さ……」
「れい……あのさ……ゆーまって、よん、で……?」
「……ゆうま?」
 ガツガツと貪るような性行に溺れる最中でそんなことを言われる。請われた通りに「ゆうま」と口に出すとそこで何か性的な興奮を得たらしく、膣がぎゅうと零を締め付けた。
(『ゆうま』って、だれ)
 そんなことを思うが、生クリームを絞り金から絞り出そうとするみたいに膣が収縮してからみつき、射精を促す態勢に入るのでシャボン玉よろしく疑問がはじけて飛んでしまう。そのまま何も考えられなくなる。何も考えないで、理性を擲って、そうして……
「ぁ、へん、なんかへん、です、ねえさ……ゆうまの、中にあるのにおしっこでちゃいそう……!」
「ふ、ぁ、しゃせー、する? いいよぉ? なかで、だしちゃう……?」
「ごめん、なさ……も、ぼくこれとめらんな……!!」
 ぞくぞくと背筋から這い上がっていく快感。それに抗うことが出来ず、最早抵抗の概念なく、身を委ねて零は姉の胎内で射精を迎えた。どくどく脈打って、ひどく熱く、ぼんやりした意識の中で蕩けていくような浮遊感と倦怠感がある。
 心細そうに姉にしがみつくと、姉は優しく抱きとめてくれた。
「びゅくびゅくって、零の精液、子宮んなかきて、すっげーきもちよかった。零は? 零はきもちよかった?」
「ん……ゆーまの、なか、あつくて。やわらかくて。今も……ずっときもちいい……です」
「そっかあ。それはよかった」
 ずるりと性器を引き抜くと、今まで繋がっていたところからこぷりと液が漏れてくる。白くて、どろどろして、少し臭う。セックスの臭いだ、と思った。
「こういうの、俺以外とやっちゃダメだからな? 知ってるって外で言うのも、だめ。約束、守れる?」
 汗ばんだ姉の柔肌に顔を埋めながら頷く。そのまま二人でしばらく抱きしめあった。二人とも慣れないことをしたから、結構疲労してしまっていたらしい。
「じゃ、シャワー浴びて、それからご飯にしようか。お赤飯と、零の好きなからあげ作ってあるから」
 ぽつりと姉がそう切り出したのはすっかり陽が落ちて時計の針が八時をまわったところだった、零が小学校から帰ってきたのは、確か、午後五時ぐらいだった。


◇◆◇◆◇


「――なーんて、時代もあったよなァ」
「うん。あの頃の零は反抗期前で、声変わりもろくにしてなくて、すっごいかわいかった……」
「悪かったな。今じゃすっかりグレてこの通りだよ」
「いいよ。そういう零も好きだし」
 膣内に俺を迎え入れたままの態勢で姉貴が余裕たっぷりに言い放つ。なんとなく癪に触ってごつんと奥に突きあげてやると「ぁん、」とか色気のない声で喘いだ。
「零もすっかり逞しくなって」
「中学生だし。あの日の姉貴と、もう年、同じなんだぜ」
「うーん。それを言われると、感慨深い」
 あれから五年経って、蝶よ花よと育てられてきた俺も姉貴による性教育のおかげで花が恥じらうことを放棄するようなただれた性関係に身を浸すあまりよろしくない感じの弟になった。この関係を、「近親相姦」と呼び世間ではタブー視するのだということを明確に知ったのは姉貴と既に何度も関係を持ったあとで、今更やめたってどうにもならないだろうとその頃には考えるようになっていたしやめる気もさらさらなかった。
 なんのかんのいって姉貴とセックスするのはきもちいい。俺達は怠惰な堕落した姉弟だ。
「猿みてえにがっついて何が感慨深いんだかなァ?」
「零が床じょーずなのが悪いと思うぜ。ほんとに。俺達、ふたりともさ、姉弟のカラダがすきな変態の物好きなんだからさ、ほら。なかだしする?」
「……する」
「えへへ……おいで」
 にへらと笑って手招きする姉貴に逆らわず、強欲に傲慢に肉欲にのめりこんでいく。あれから五年が経ったが、今でもやっぱり姉貴には逆らわないほうが基本的にはいいと思っているし、逆らおうと思う理由も特に見つからないことのほうが多い。
 ただれた姉弟関係。姉貴は俺とするセックスだけが好きなんだって言うし、俺も、姉貴以外を抱きたいと思ったことはない。
「姉貴のオレンジ色の髪、すきだなァ……」
「自分の髪の毛もおんなじ色だろ」
「ピンクのとこも好きだぜ。なんか、エロい」
「えー?」
 ピストン運動を再開する。あられもない、品のない喘ぎ声。この声は俺しか知らない。この身体の肉の味も、汗のにおいも、情欲に濡れた瞳も何もかも俺だけの所有物で。
 それがたまらなく愛おしい。
 子宮口に口づけると歓喜の声をあげてよがった。俺と同じ色の長髪が乱れて、姉貴の白い肌に吸い付き、俺の肉欲を煽る。ねだられた通りに腰を押し進めて掻き抱いた。

 ――そうして俺達は、いつまで続くかわからない短い黄金時代を、原始的な欲求に衝き動かされ、憑かれたように乱暴に謳歌するのだ。





/ぼくらの黄金時代