アラスジ

穏が訪れた筈の綾凪市に「影時間」が出現し、突然の象徴化やシャドウ襲来に戸惑う慎達。大型シャドウに追い詰められ、あわやというところを救ったのは棺桶を背負った死神のようなペルソナを駆る幼い少年だった。シャドウを倒した後気絶してしまった少年を連れ帰り、翌日名を尋ねると少年は自らの名を「神郷湊」であると告げる。
親類にこのような少年はおらず、首を傾げる慎と恂。行くあてがない湊と成り行きで擬似家族関係を築くことになった慎と恂は、これをきっかけに綾凪で起きた影時間の再来や数々の不可思議な現象に巻き込まれていくこととなるのだった。


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 ぼくが目を覚ました時、きみは眠っていた。
 月がすごすごと地球の衛星軌道上に還っていった時、きみは宇宙になり、人間としての死を迎えたのだ。きみはそれを後悔していなかったと嘯く。おかあさん、でもそれは本当のこと?
 《這い寄る混沌》は玩具を求めて二人の人間を牢獄に誘き寄せた。皇帝と月を内包するピアスの青年と、それから太陽を抱く罪人の少年。そうして、やがてやつは気が付いてしまう。月光館学園に残っていた、《彼》の、残滓に。
 舞台は綾凪。役者は十分すぎるぐらいに。繰り返される《影時間》、投影される十年前の幻。ぼくはきみを守護するものになりたい。

 きみが失くした記憶を取り戻すために。