004:正義について/十字架の少年
「もしも奇跡があるのならば、私は、君の存在こそをそう讃えるだろう」
男が言った。彼の前には少年の姿があった。ビスク・ドールのように美しく整った容姿をしている少年は、ともすると少女のように愛らしく、そして弱々しい。彼はか弱いこどもだった。特に何の「特異点」も持たず、ありふれた一人のこどもとしてそこに存在していた。異常なほど強力な法力を秘めているわけでもなく、過剰に正義を信仰しているわけでもない。少し容姿が優れていることを除けばどこにでもいる普通のこどもだ。しかしであるこそ希有だった。
あまねく確率事象の中で、少年と同一個体にあたる存在はいつも特別だった。「バックヤード」に由来する上位権限IDを与えられ、世界を存続させるための秩序が人の形をしていた。そのために彼には存在を維持するための過剰な才能と能力が与えられ、人心の掌握に長け、正義の旗頭の元に人々を導いた。
しかし一方で、彼が特別な、バックヤード由来の生命として人間の指揮を執ることは同時にどうしようもなく人類の滅亡を意味していた。彼は世界を存続させるための秩序そのものであったが、世界の存続と人類の存続はイコールではなかったのだ。「啓示」による進化をそのまま彼が人類に促した場合、99.9999999999999%の確率で人類は滅亡する。男はそれを望まない。だから、人類ではじめてバックヤードにアクセスした男はこの奇跡を手にするまで粘り強く演算を繰り返してきた。
「君は奇跡だ。君のこの確率事象におけるIDは完璧なただの人間のそれとして存在している。だがしかし、完璧なただの人間……バックヤードの庇護を受けない存在である故に君はどうしても死にやすい。計算外の存在になってしまった君を、『啓示』はあらゆる手段を用いあらゆるケースにおいて抹消しようとしてくるだろう。君は小石につまずいただけで死ぬかもしれないし、海へ行っただけで死に至り得る。町へ出かけただけでも死の危険があるし、そして何より、この数時間後、君の住む村を大量のギアが襲いに来て死ぬ。……だから」
男が手に持った十字架を少年の首に掛けた。聖母マリアが象られた重たい十字架。これはドッグタグ代わりであり、そして墓標の代わりだった。十字架はただの少年の墓となり、強引に彼に付与されたこの世界に存在してはならない魂を繋ぎ止める枷となる。
「この十字架を持っていなさい。君がこの世界に縫い止められるまで、絶対に。……いいかい、君は決して死んではならない。因果律干渉体が生まれ出るまでなんとしても生き延びるんだ。けれどそれほどの心配も要らない。そのIDを持っていれば、世界の方が勝手に君を守ってくれる。気をつけるべきは『啓示』のひときわ強力な干渉だ。こればかりは、私の力では操作が出来ないんだ。魔器の力を借りなければ」
男が少年の心臓に手を当てると、ふわりとした、ふたつの青白いひかりが少年の皮膚の下で瞬いた。十字架が光に反応して揺らぎ、スパークを放つ。防衛本能が働こうとしたのだ。まずまずの成功、といったところか。
尤も、男には成功以外の選択肢は残されていない。この万に一つの確率事象を引き当てるために随分と無茶をした。失敗すれば、次はない。
「さあ、生きなさい、『カイ=キスク』。君のパーソナルはたった今書き換わった。君には——生きる力がある」
そのうえ代償として男は表舞台へ出て行く力を当分のあいだ失ってしまったが、この結果を出すためならば安いものだろう。上位権限IDを手に入れた「ただのカイ=キスク」が本当の意味で人間になることが出来た時、初めて人類は破滅を免れる。まずはその第一歩だ。憑かれたように歩いて行く少年を見送りながら男は長い長い溜め息を吐いた。ふたつの魂を持たされた少年が、この先辿ることになる運命に思いを馳せながら。
◇◆◇◆◇
ロンドンの裏路地は人であふれていた。定住する家を持たぬものたちでごった返し、物乞いをする子供がそこらじゅうに転がっている。ハックニーは昔から治安がさほど良い町ではなかったが、しかしソルの知る限りここまで劣悪でもなかった。世界の情勢を全て塗り替えていったのは、ここ百年を超えて続いたギアの暴力だ。ギアの反逆によりこの世界からは人が減り、それ以上に人の住める土地が減った。結果、流民や貧民が増える。元々貧しかった場所は更に貧窮に困する。
カイが聞いたら疑わしそうに全身を見回すだろうが、この場所においてはソルの身なりは上等の部類に入る。五体満足でしっかりと衣服に袖を通し、ポケットからは金の音をさせているぐらいだ。しかしそれでもソルが襲われないのは、好き勝手に伸びた髪の毛がいかにもな雰囲気を作り出していることと、これ見よがしに見せびらかしているけったいな武器、そして何より彼が絶えず振りまいている気配によるところが大きかった。多少なりとも戦いを知る人間なら、まずソルに喧嘩を売ろうとは考えないだろう。誰も彼も命は惜しいのだ。
しかし、そんな中でソルに近づいてくる者もいる。無学な子供だ。ソルが危険であることに気づけないほど幼い子供が、時たま、金や食い物をせびってソルに寄ってきた。たいていの場合はすぐに母親がやってきて鬼でも見るようなおびえた形相をしながらソルから子供を引き剥がしたが、今度引っかけた子供は数キロ歩いてもそれがない。どうやら完全な孤児のようだ。庇護する者もなく、生き延びる知恵もなく、こんな世界でよくぞ今まで生きてきたものだ。
「Give me money, guy」
子供はしきりに物乞いを繰り返し、ソルのあとを小走りで必死に追いかけてくる。自分の中に苛立ちが増してきているのを感じ、しかしソルはギリギリのところで優しさを発露して手より先に口を動かした。
「……悪いが孤児には構ってやれねえ。キリがねえからな。とっとと元の場所に帰りな、このぐらいならまだ間に合う」
「Give me, please, guy」
「……おい、ガキ。共通言語が喋れねえのか?」
それでも物乞いをやめないので、いよいようざったくなってきて、物理的に追い払ってやろうかと思ったところではたと手を止めた。子供は同じ要求を繰り返しているばかりで、まるで話が通じているそぶりがないのだ。よくよく耳を澄ませてみれば、子供がずっと口にしている言語は、どうやら現在世界共通言語として使われている言葉とは異なっているようだった。言葉が通じないのでは、コミュニティからつまはじきにされてしまっていても無理はない。ソルは心底嫌そうに息を吐くと、足を止めて子供の首根っこを引っ掴み、自分の顔の高さまで持ち上げる。
「……Where is your mother. Died? Are you alone?」
「……Can you speak English? Are you my brethren?」
「Just answer the question. Want to die?」
すると子供は泣き出してしまい、こうなるともう、ろくに会話は続かなかった。このご時世に古語か方言レベルにまで衰退している言葉しか喋れない子供とは、とんだ厄介を引っかけてしまったものだ。この子供の親は、つい最近死んだのに違いなかった。ああ、くそったれが。舌打ちが漏れる。まだ西のマーケットに行っていなかったのに。
しかし子供をここに放り出すことも出来ず、ソルは仕方なく子供から一度手を離すと肩に担ぎ直した。見上げた建物の上、安宿の三階窓からカイが自分を見つけて注視してきている。宿に戻ってくる前に子供をまききれなかった自分の負けだ。ここで子供を放り出せば、宿へ戻ってカイがどれほどくどくどと説教を垂れるかわかったものではない。
「地方貴族の生き残りですかね」
「落ちぶれ貴族の間違いだろ。そのくせプライドだけは捨てられなかったクチのな。おかげで俺はとばっちりだ」
「正直、あなたがちゃんと私の前までこの子を連れてきたのは意外でした」
「計算が狂った。テメェが窓の外を見てなきゃ、テムズ川に捨ててきてた」
子供を連れて帰ると、カイが妙ににやついた顔をして出迎えてくれた。第二次聖騎士団選抜武道大会の終幕からいくらかの時が経ち、身体の回復に伴ってカイはもうすっかりソルの前で取り乱した姿を見せなくなっていた。
約束をした通りソルはカイの前から勝手にいなくなることを控えた。最初の何日かは、動けないカイの代わりに食料の調達へ行くだけでも「そのまま帰って来なくなるんじゃないか」と渋られたが、今は「必ず帰ってきてくれるなら」と笑顔で送り出すようになっている。
一週間ぐらいでカイは自分で出歩けるぐらいまでになっていたが、ソルはカイが外へ出ることをあまりよしとせずに大概のことを自分が行うように調整していた。従ってカイがやることと言えば部屋の掃除や食事の支度、或いはソルが買ってきてくれた新聞や本に目を通すなどといった変わり映えのしないことばかり。そんな中でソルが成り行きとはいえ子供を拾ってきたのは、そんな日々を繰り返していたカイにとっては大いに歓迎されるべき刺激だったのだ。
「言っておくが、引き取るのだけはナシだ。いつまでもここで暮らしてるわけじゃねえんだからな」
「それはわかっている。第一ソル、お前は私が今何の仕事をしているのか忘れたのか?」
「ケーサツだろ。もう何日もサボってるがな」
「もう正式に休暇申請してあるから、サボりじゃない。あれ以来国連も元老院も後始末に奔走していて、国際警察機構内部も大わらわらしい。このごたごたに乗じて、ちょうどいい機会ですから、療養も兼ねて休養を取ってください、と言われている」
「体の良い厄介払いみてえなもんじゃねえか」
「本部にはベルナルドもいるし、信頼のおける部下たちが揃っている。きなくさい隠蔽処理を嗅ぎつけるにはむしろ外野の方が好都合。……お前が私に言ったことだぞ」
カイが腰に両手を当てて言った。なんだかこの二週間ばかりで、カイは余計に小言がうるさくなったような気がする。
ソルがヘッドギアを新しく造り終え、自分の額にまた常時それを装着する頃になるとカイは通信メダルで本部へ連絡を入れた。コールが鳴り止んで着信が向こうで受理されたと思いきやメダルから飛び出してきたのは『カイ様!! ご無事ですか!!!』というベルナルドの大声だ。きぃんと耳をつんざいた男の声に思わずソルは顔をしかめた。あの男、どう戦況が動いても添い遂げるタイプの野郎だとは思っていたが、やはりまだカイに仕えていやがったのか。
「ええ、なんとか。そちらは……どうなっていますか?」
『ああ、カイ様……本当に良かった。例の大会でごたごたがあって以来、関係者は軒並み音信不通になり、大会の結果そのものも有耶無耶にされたままなのです。中にはカイ様がお戻りにならないので、混乱に乗じて暗殺されたなどと言い出す輩さえいました。国際警察機構本部においてでさえ、情報は未だ不透明で……』
「なんですって……!」
『どうやら上層部が情報統制を敷き、子細を握りつぶそうとしているようです。私の方で出来る限りを尽くしてみていますが、不正な権力と圧力が絡んでおり、正攻法で割るのは難しいでしょう。ところでカイ様は、今どちらに? まだ大会会場付近の場所におられるのですか?』
「いえ、現在はロンドンにいます。次元牢脱出の際、不手際でこちらへ飛ばされてしまって。不甲斐ないことに体調が万全ではなく、今は療養に努めています。すぐに本部へ帰還するのは難しそうです」
『ロンドン?! そんな、カイ様、危険です。あの町はここ数年治安が悪化の一途を辿っており、カイ様のような『見るからに身なりの良さそうな人間』が手負いの状態で滞在出来る場所ではありません』
「ええ、ロンドン地区の治安維持には我々もずっと手を焼いていますからね。でも、心配ありません。一人ではありませんので」
私を助けてくれてから、彼、なんだかずっと優しいんです。七年前みたいに。そう含みのある声でカイが言うと、カイの腹心の部下はそれだけでカイを助けた相手が誰なのか、全てを悟ったようだった。『それでは、こちらはお任せください』とだけ彼が返すと通信は切れ、ソルは頭を抱える。それが、今から数日前のこと。
「ベルナルドに頼めば、この子の引取先はすぐに見つかるでしょう。ちゃんとした、我々が定期的に視察に行っている児童養育施設の幾つかに空きがあります。タイミングもいいですし、その手続きが済み次第ここを発ちましょう。そろそろ、なまった身体をどうにかしないと」
「ロンドンを出る? いいのか、坊や。テメェの答えはもう見つかったのかよ」
「ええ。……いや、正確には、おおよそは腹が決まった、だけれど。私の正義の中に、『孤児を捨てきれずに拾ってくる人間を殺す』なんて項目はありません。『自分を助けて介抱してくれた人間を殺す』というものも。そういうのは、『恩を仇で返す』と言うんです。栄誉を重んじる騎士のすることじゃない」
「何度も言っているが、俺がギアであることは事実だ。過去の思い出を引きずって無理に人間だと思い込む必要はねえ」
「でも私が決めたことだ。こればっかりは、お前に口出しされることじゃないな」
子供にシャワーを浴びさせ、バスタオルで頭を拭き取りながらそんなことを言う。ソルはそれきり黙り込んでしまい、会話はそこで途切れた。ソルはどうも腑に落ちていないらしい。けれど仕方ないのだ。七年ぶりに訪れた時間の中でカイが感じたのは、ただ、彼の不器用な優しさばかりだったのだから。
◇◆◇◆◇
——私は、正しいことをしていたのではないのですか? 神よ……
『しかし、私は生きなくてはならぬ。自己を否定することだけは避けねばならぬ。では私は何が為に生きる? 私の存在する意義は、人を殺すこと。それは、私に……ギアに定められた、行うべき正しい正義……道義だ』
ギアの女王の言葉はカイを確かに揺らがせた。これまでカイ=キスクの信じてきた正義はきわめて利己的で、一方的で、一面的なものだった。ただ、今まではそれを誰も教えてくれなかっただけだ。カイの謳う正義が、大手を振って人々に信仰されていただけなのだ。
カイを襲った、価値観を根本から揺るがす出来事はそれだけに留まらない。ソル=バッドガイは、カイが信じ、反発しながらも慕っていた男はその正体をギアだと言う。はじめ、カイはそれを信じたくはなかった。ただでさえ見失いかけていた「正義」が、音もなく崩れ落ちて消えてしまうような心地になったからだ。
だからはっきり言ってソルに助けられてからの三日間ほどは、懊悩するばかりで、まともに彼と目を合わせることも出来なかった。それなのに本調子ではないせいでソルに頼らざるを得ない。彼が壊れた抑制装置を造り直している間は、ずっと、その額にありありと浮かぶギアのしるしを見ていなければいけない。
(ずっと、私の存在意義は、ギアを殺すことだけにあったのに)
殺すべきギアの隣で生かされながら、考えたのは聖戦が一番激しかった頃のことばかりだった。世界中にギアへの憎しみがあふれかえって、ギアを殺すことが絶対の正義だと信じて疑われなかった時代。ジャスティスの自己肯定が生きて人を殺すことだったから、彼女の命に従って全てのギアは人を殺した。よってカイの正義は人々を殺すそのギアを殺すことになる。あの頃は、それで全てよかった。
では、もしギアが人を殺さないのだったら? ギアは元々、人間が生み出した生体兵器だったと聞く。それが人の傲慢さを見限るかのように謀反し、聖戦になったのだと。人がいなければ罪深きGEARは生まれなかった。それでも悪しきはギアなのか。それは本当に、神の定めた絶対悪なのか?
(しかしギアが生きるために人を殺すのだと言うならば、私たちもまた、生きるためにはギアを殺すしかなかったんだ)
聖戦は正義と正義のぶつかり合いだったのかもしれない、と思い始めたのは二日目だ。それまではただの悪だと思っていたものを、カイは認め始めていた。
ジャスティスとて、望んで兵器として生まれたわけではない。二日目にカイが考えたのはそのことだった。
いつかカイのことを、人に従順な兵器だと揶揄したものがいた。幼いカイが次々と戦果を挙げて地位を上げ、次第に重要なポジションを任されるようになり、それに伴って人望もふくれあがっていくのをどうしても快く思えなかった者達。彼らはカイが集めていた羨望のほんの僅かでさえも、末端で命を削っている自分たちが手に入れられないことに憤っているのだとカイにはすぐにわかった。しかしなお悪いことになまじっかカイが図星を言い当ててしまったので——あれは本当に、どうしようもないぐらいにカイの幼さを露呈した出来事だったと思う——彼らは顔を真っ赤にしてカイに四方から飛びかかろうとして、そして返り討ちにあった。
矢面に立ってくれたのはソルだった。彼はカイを庇い、頭に血が上った団員たちを軒並みのしたあと、続けてカイの頭にげんこつを落とした。痛かったが、不思議と怒りはわいてこなかった。思えばカイはその時はじめて誰かに叱られる経験をしたのだった。
『阿呆が。だから坊やはガキなんだよ』
その時ほど、彼に言われた坊やという言葉が身に染みたこともない。
『じょうずに嘘が吐けるようになれ、とは言わねえがな。テメェはヘタクソすぎだ。……テメェの肩に掛かってる命はガキのお遊びで許される数じゃねえだろが』
あの時は確か、そんなことは分かっていると、そう答えたのだったか。
(でも確かにその頃の私は、その意味ではジャスティスと変わらなかったのかもしれない)
凶暴なギアを殲滅し得るだけの力を生まれつきの異能に近い形で持っていた法術使いたちは、法術を扱えない者にそれだけで疎まれたり、道具として扱われたりすることをどうしても避けられない。聖戦が終わってからその動きは特に顕著になり、カイ自身、命を狙われたことも何度かある。戦後、持たざるものから見た自分たちは羨望の的から畏怖の標的となった。カイがギアを恐れたように、誰かがカイを恐れた。
カイが今、国際警察機構に所属する一般市民としてその「人権」を保証され日々を過ごせているのは単なる幸運の結果でしかない。たまたまカイには自分を保証してくれる味方が多くいたし、無碍には出来ないぐらいの功績があった。カイを身近に感じない多くの人々にとって、カイはそもそも自らに牙を向けられるほど近くにいない偶像に過ぎなかったからだ。
(……ソルは)
ソルはもっと、わかりやすく、「悪」として身勝手な正義に祭りあげられる可能性の高い存在だっただろう。彼は粗暴で野蛮で自分勝手だったし、聖騎士団所属の頃から「あの人はすごいけど怖い」ということをほうぼうに言われている節があった。カイが「だけどソルはやさしいひとですよ」と言っても、必ず誰かが「ほんとうですか」と聞き返してくるぐらいだった。無愛想で、言葉少なだから誤解されやすいのだ。彼が聖騎士団を抜けて流れ者の賞金稼ぎに戻っていたのは、とても賢明な判断だった。
……彼がギアであるということを差し引いても。
(ソルにもまた、ソルの正義があるのだろうか)
そこに辿り着いたのが三日目。朝にはもうソルの手の中でヘッドギアは大分完成に近い姿を見せていて、カイがベッドの中で唸っている間に、額の刻印はヘッドギアの下に隠れて見えなくなってしまった。
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