エクソシストにラブ・ソングを 02


 私、朱桜司はこれでも現役の聖職者です。
 生まれた時に洗礼を受け、信心深い朱桜の家で育ち、当たり前のように神学校に入って何一つ疑うことなく聖職者の道を志しました。
 生家がExorcist――悪魔狩りの名家でしたので、自然と私もその道に入り、新米Exorcistとして聖教会から任命を受けたのが春先のこと。
 でも、でもですよ……まさかその後半年と経たず、こんな高位の妖異に四面楚歌の目に遭わされるとか、想像がつくはずもなくないですか?
「ス〜ちゃん、またしかめっ面〜。どしたの? 怖い夢でも見た?」
「今まさに恐ろしい現実の中にいますよ……」
「あらあ、司ちゃんてば、本当に心配症ねェ。まあ気持ちはわからないでもないけど……。でもほら、王さまとか、バカみたいに高位の妖異なのよォ。なんとかなるわよ、大抵は」
 鳴上先輩が私の肩をぽんぽん叩いてそう仰いますが、正直胃が痛くて仕方がありません。Leaderは確かに超高位の妖異です、なにしろ聖教会が「特級悪魔」認定しているぐらいなのですから。天使も教会も、力ある妖異しか悪魔とは認定しません。インプにピクシー、レプラコーンなどの「ほっといてもまあまあ害の出にくい妖異」まで全て祓っていては、Exorcistの数が足りませんので。
 でもKnightsの先輩方は、皆さん、全員悪魔認定がついているのです。この方達が本気を出せば、新米Exorcistの私などひとたまりもないでしょう。そのぐらい力の差は歴然としている。ですから私も、正直何度か死を覚悟しました。一番最初は、この方達を祓おうと単身乗り込んでそのまま返り討ちにあった時。それに、私が皆さんを先輩と認めるに至った、あの事件の時も。……この方達は、私ごときExorcistなどいつでも殺せるから、気まぐれに生かしているだけなのではないか、と。
 どうもそうではないらしい、妖異にも人間と同じ情があって、ルールがあり、それに則って暮らしているのだと、最近はわかりつつありますが……。
「うう……そもそもですよ、話し合いで解決なさろうとは思わないのですか? 天祥院のお兄様は、純血天使ではなく人の身から法悦された方です。妖異に対するスタンスも、比較的友好。なにもいきなり殴り込むことはありません」
「それは無理だな。領域侵犯をしてきたのはあっちだ。リッツの眷属に手を出した挙げ句、法悦しようとした。ま、おれが調べたところによると、正確にはよくわからん天使がまだ死期の遠い人間を強引に法悦しようとして、そこにウリエルが途中から割り込んだっぽいんだけど……」
「よくわからない天使……? まさか、そんなはずありませんよ。法悦は基本的に四大天使にしか認められていない行為でしょう。そんなことは神学校初等過程の生徒でも知っています」
「だから変なんだろ。ちょっとは頭使えよ、エクソシスト。せっかくこのおれが誓約してやってるんだから」
「誰も頼んでないんですけど! というか、凛月先輩や鳴上先輩、それに瀬名先輩は私にお力添えしてくださったことがありますけど、Leaderが力を貸してくれたことは一度もないですよ!」
「そりゃ、その時じゃないからだ。……ていうか本当は、おれが出なきゃいけないような『その時』なんか、来ない方がいい。妖精王が求められる権能なんて、作曲だけで十分だよ」
「Leader……」
 急にしんみりとしはじめたLeaderに、私は口を噤みました。
 前に、無理を言って瀬名先輩にせがんだ話では、この世にはかつて大きな戦乱の時代があったそうです。昔……天祥院のお兄様が、まだ人の身であらせられた頃。ちょうどその頃、天使と悪魔のあいだに、大きな抗争があったのだと。
 そしてLeader……妖精王月永レオは、その前線で戦い、果てに一度は隠居を選んだ。瀬名先輩は厳しい面持ちで、けれど確かにそう言いました。
 妖精王の本来の権能は、妖精達を束ねて面白おかしく暮らさせるため、美しい音楽を奏でること。私が過去の文献を調べた限りでは、それ以上でもそれ以下でもありませんでした。でも、おかしいんです。それだけなら、教会がLeaderを特級悪魔に認定する理由がありません。
 ですからこれは、私の推測なのですが……。
 瀬名先輩が多くを語らなかった抗争の頃。きっとLeaderは、血に塗れ、多くの天使を殺したのでしょう。あるいは人を貶めたのです。今のあの方からはとても想像が付きませんけれど、そうでなければ辻褄が合わない。
「……ならば、Leader。どうしてLeaderは、私と契約をしてくださったのですか? 力を使う気がないのであれば、そもそもExorcistと契約する必要もなかったのではありませんか」
 けれどLeaderは、私がそう尋ねるといつも決まってはぐらかすように笑います。
「……わはは! そうかな。そーかも。でもおまえはさ、おれとセナのKnightsに必要な人間かもって、思ったんだよなっ。その予感をおれは信じたいな」
 ――Leader。
 私は確かに若輩者です。でも、そこまで愚かでもないつもりです。
 そんなさみしい顔をして笑うから、私、あなたの元を離れられないのですよ。
 

◇◆◇◆◇


 その昔妖精の王さまは戦いました、右手に剣を、左手に嘆きを、その瞳に涙を。身体の隅々までが傷付き、四肢の全てを御遣いの剣に貫かれ、それでも果てるまで戦い、そして壊れてしまったのです。
「許してくれなくていいよ」
 王さまは砕けた硝子の双眸でそう言いました。
「おまえは信じてくれたけど、愛してくれたのに、おれには――」
 王さまの身体はひびわれ、気高く輝く羽根はひしゃげ、彼の全てが、もはや、限界でした。
「そう。あんたはよく戦ったよ、れおくん。妖精なんて、本当は、戦いに適した生き物じゃないのに。身を擲って魂を削って骨を軋ませ命を磨り減らして。……バカだねえ、ほんと。俺のためにこんなに傷付いてさ……」
 死神は妖精王の身体を抱き上げて振り返ります。その先の視線には人間がいました。彼はその時から、じゅうぶん天にほど近い生き物でしたが、しかしその時はまだ人間だったのです。
「……わかってる。あんたの手に剣を握らせたのは俺。あんたの手を血で染めたのは俺。あんたの無垢で綺麗な魂を穢したのは俺。妖精は愛を運ぶ生き物なのに、そのあんたに愛を捨てさせた……。なら、俺だってたまには死神の努めを果たさないとねえ……?」
 それから死神は、傷付き果てた王さまを吸血鬼とインキュバスに託して断罪の鎌を振るいました。
 ――それは天と地とが争いを続けていた、いつかの過去のお話。


「半信半疑だったんだ、この目で直に見るまでは」
 四大天使の居城である「終わりの塔」、その最上階に辿り着き、大広間の扉を開け放ち、Leaderは静かに口を開かれました。その声には悲哀が満ちていて、しかしどこか、弾むような調子でもありました。
「まさか本当に、今代のウリエルがおまえだったとはな。ん、いやまあ、でも。パワー的に序列最高位のミカエルじゃないっていうのが、逆におまえらしいか。『皇帝』……天祥院英智」
 宣告と共に、Leaderの背から輝く羽根が広がります。妖精の王たる証であるその羽根は、繊細な模様を描いてゆるりとはためき、震え、威嚇するように鱗粉を振りまきました。光の粉が広がる様は、普段私たちのCasteleで見る時はあんなに幻想的で美しいのに、今はただ、恐ろしいものとして私の眼に映ります。
「リッツの眷属に手を出したってのは本当か?」
「うん。衣更くんは、僕のところに欲しいと思ったんだ。だから法悦しようと思った。ごめんね」
「本気なんだな。おれもリッツもセナも、ナルも……みんな敵に回すつもりか? おまえさ」
「君がそのつもりならそうなるだろうね」
 天祥院のお兄様が言葉を一つ紡ぐ度、Leaderが発する気配が濃くなり、私は否応なく身震いをしました。そのぐらい怯えていました。私の身体を横から凛月先輩が支えてくださいます。暖かく力強い、吸血鬼の指先。私はその指先が背をさするのに合わせて深呼吸をし、息を整え、今一度眼前の光景を脳裏に焼き付けました。
 そこにおわすは、聖教会が崇める四大天使ウリエルその人。古の大戦の際、人の身から法悦され、今の地位にまで上り詰めたと言われる天祥院のお兄様。我が朱桜家とは少なからずかかわりがあり、幼い頃、私の頭を撫でてくださった天使様……。
 ああ、なのに、そのお兄様とLeaderが正面を切ってにらみ合っているだなんて。
 本当にどうして、こんなことになってしまったのでしょう。
「ねえ月永くん、僕は昔から不思議だったんだ。特級悪魔のゴルゴーンが、同時に死を司る神も務めてるなんて、なんだか変わった話だよね」
「べつに。神代の生き物が旧き神の盟約を結んでいるぐらい、変わった話じゃないだろ。テンシ、つまんないこと言うようになったな。それも法悦をばかすかした弊害?」
「ふふ……それはどうかな……」
 天祥院のお兄様が唇に薄ら寒い笑みを浮かべて首を傾げました。その微笑みは、私にとってひどく恐ろしいものでした。ウリエル様のあんなお顔を私は知らない、神学校であんなことは習わなかった。ああ、お許しください先輩方。司は愚かでした。今代のウリエル様はもとを正せば人間です、話が通じると思ったのです、話し合いで解決出来ると、けれど――貴方がたには因縁があったのですね。
 私は首を横へ振ります。Leaderは心優しい方です、お兄様もそれは同じ、けれど愛は敵へ注がれるものではありません。
「月永くん。怒っているのかい? 法悦されて天使になった僕が、同じように人間を法悦することを?」
「……どうかな。人間だったおまえにとどめを刺したのは、たぶんおれだし。それに怒る資格はきっともうおれにはないよ」
「へえ……。僕を憐れんでくれるんだ。君は本当に変わってるよね」
「だって、英智はおれの友達だったから。『人間』天祥院英智は。けどおまえはおれの大切なものに手を出した。なら敵だ。敵なら、あとは単純だよな。友達はどうもできないけど敵は殺せる。皆殺しに出来る。おれは王だ、民を預かるものだ、命を司るものだ。ならおれは――おれの大切なものを守るしかないだろ?」
 Leaderが高らかに手を掲げ、号令をかける。ウリエル様がそれに応えるように羽根を広げられる。
 私はその光景をとても見ていられなくて、駆け出して間に入ろうとして――けれど、何も出来ませんでした。
 一瞬の出来事。お二方の間に強烈な闘気が渦巻き、衝撃波がぶつかり合い、私の身体はその噴出に押し返されました。「かさくん!」瀬名先輩のひっかくような叫び声が私の耳に届きます。「戻って来なさい、司ちゃん! 人間の身体はあんなものに耐えられないんだから!」鳴上先輩の美しい声が私の意識を辛うじて繋ぎ止めます。それから蝙蝠の群れが私のそばへ飛びより、「おいで、ス〜ちゃん」凛月先輩の凛としたお声が私の耳元で囁かれたかと思いきや、蝙蝠達はたちまち凛月先輩のかたちに為り、私を彼方後方へ連れ戻したのです。
「これ、は」
 私は呆然として、連れ戻された「安全地帯」で崩れ落ちました。
 目の前に広がる光景を言葉にして表すのは、酷く難しい事でした。それは、「激突」と言うのも生ぬるくて憚られる、恐ろしい現実だったのです。瓦礫が舞い、火柱が上がり、剥き出しの力と力がぶつかり合う。何もかもが圧倒的に過ぎて、次元が違いすぎる。
 思い知らされるようでした。
 所詮、私はちっぽけな新米Exorcistに過ぎなくて。
 私が寄り添い、少しは親交を深めたと思っていたLeaderは、月永レオは……人間など足の指先にも及ばないような、強大でおぞましい妖異なのだと。
 光が弾ける。炎が舞う。鱗粉が弾け、流れ弾が降り注ごうとするたび、瀬名先輩が舌打ちをして、私たちを防護壁で護ってくださいます。
「……Leader。何故笑っていらっしゃるのです。こんな状況で……弾むように破壊を引き起こして、何故?」
 私は何も分からなくって、ただ愕然と膝を突いてその光景を眺めていました。
 四大天使と妖精王が正面突撃をするということの意味が、ようやく身に染みる。
 私の出る幕などどこにもありません。
 どころか、瀬名先輩や鳴上先輩、凛月先輩でさえ、その戦いに加わる隙はありませんでした。
「あのひとは、なぜ私を連れて来たのでしょう」
 ですから、愕然とへたり込んだ私の唇を突いて出たのがその言葉だったのも、仕方のないことだったでしょう。
「なんですか、これ。私なんかお呼びじゃないですよ。お兄様もLeaderも一体何を考えていらっしゃるのですか? 何故出会った途端に殺し合いになってしまったのですか? お兄様が天使で、Leaderが悪魔だからですか?」
「まあ……大体、そんなところかしらねェ。天使と悪魔って、水と油だし。アタシたちも、まさか『神の炎』ウリエルが天祥院英智だとは思ってなかったわけだけど……というかそうだと知ってたら流石に王さまを行かせてないわァ。だってあの二人、ちょっと過去が……根深いから」
「……本当に、私以外はウリエル様のことをご存じなかったのですね」
「うん。エッちゃんが天使になってたのは知ってたけど、まさかウリエルにまでなってるとは俺も想定外。いや、言ってなかっただけかな、あれは。エッちゃん、俺の前ではただの天祥院英智でいられるから気が楽でいいっぽいこと、言ってたし」
「つくづく凛月先輩の交友関係は謎ですね……」
 なんだかすごく仲のよさそうな渾名で呼ばれていますが、知らなかったこと自体は事実のようです。私は諦めて首をふり、次のことを尋ねました。
「それで……Leaderの口ぶりからして、お二人も旧知の仲だったようですが。こんなふうに、いきなり殺し合いになるだなんて。一体昔何があったというのです? 瀬名先輩が、以前話してくださらなかった部分ですか?」
 障壁を張って私たちを守ってくださっている瀬名先輩が、指名されて振り向きます。瀬名先輩は非常にばつの悪そうな顔をし、顔を顰め、最後には首を横へ振って諦めたふうに唇を開きました。
「こうなっちゃ隠し立てする意味もないから言うけど、天祥院が人間だった頃、あの二人は友達だったんだよ。けど王さまは結果的に天祥院を殺した。殺された天祥院の魂を、俺が地獄に堕としてやろうとしたら、まるでかすめ取るみたいに当時のウリエルに法悦されてさ。……あとのことは知らなかったし、調べてもいなかったけど。まさかあいつ自身がウリエルになってるとは、とんだ皮肉もあったもんだよ」
「皮肉、とは」
「天祥院が死ぬ原因を作ったのは当時のウリエルだったの」
 そこまでお聞きして、私は押し黙ると頭を働かせることに集中しました。
 話が複雑で、考えるのには、随分と時間が必要でした。その中で、私は必死になって自分が連れて来られた意味を探ります。情報はもう粗方開示されて、推察の材料は揃っていました。それに、です――Leaderは一見して脳天気でよくわからない変人ですが、あの方は意味のない行動はなさりません。生きているのだから、意味があることをしたい。それが月永レオという方の一つの理念なのです。
 そう考えれば考えるほど、どうもこの状況は、妙であるように思えてなりませんでした。
 そもそも出会い頭にいきなりどんぱちはじめるようなのが、おかしい。おかしすぎます。天祥院のお兄様は、かつて自分が人間だったころの名残か、よしみか、朱桜をはじめとする聖教会の家々を御自らの足で回って子供達に愛と理を説く「人間寄り」の天使です。人間出身であるがゆえに妖異にも一定の理解を示し、「妖異はとりあえず駆逐すべし」みたいな選民思想の一派とは異なります。存外温情のある方なのです。
 それなのに何故、こんなにあからさまな争いを?
 まるで試練でも課すかのように?
「……先輩方」
「ん」
「仮にですが、あの争いを止めようと思ったら、勝ち目は?」
 試しに尋ねてみます。すると目の合った凛月先輩が、軽く首を捻ってこう答えてくださいました。
「ほぼゼロ。聖職者にこんなこと言っても耳タコだと思うけど、四大天使って言ったら天使の頂点だよ。それと互角で戦ってるうちの王さまがろくでもないのは、ス〜ちゃんならよーくわかるでしょ」
「そうねえ。あんなに力を出してる王さま、久しぶりに見たわァ。でもなんだか、違和感もあるのよね。ウリエルの正体見るまでは、わりと本気でぺしゃんこにするつもりだったっぽいのよ、あの人。だけど今は、まるで何かを試してるみたい」
「……鳴上先輩も、そう思われるのですね」
 その言葉を受け、私はおっかなびっくり立ち上がりました。相変わらず目の前で繰り広げられる桁外れの攻防に足はすくんでいましたが、けどそれでも、何故かその時私には、立ち上がらなければという強い気持ちが生まれていました。
「どうするの、かさくん」
 瀬名先輩が私に尋ねかけます。ゴルゴーンの双眸が、私の視線を捉えて離しません。「私は、」私は肩を震わせて言いました。相も変わらず続く争いは激しく、見るに堪えません。「でも私は、目を逸らしたくありません。逃げたくありません……!」心の底からそう感じているのです、私は私の心から逃れることなど、したくはありません。
「そ。なら、ちょっとがんばろっか。俺たち三人は、今回はそのためについてきたようなもんだしね」
 凛月先輩が目を細めて仰います。ああ、この方も、何か勘付いているのかもしれません。だって天祥院のお兄様をエッちゃんなんて気軽に呼ぶのですから、私なんかよりよほどお兄様を知っているかもしれないこの人が、私が気付くことに気付かない、その道理がありませんものね。
「先輩方。私にお力添え願えますか」
「あら、もちろんよ。だって司ちゃんはアタシのかわいい契約者だもの!」
「俺も俺も〜。使役契約結んであげた、たった一人のエクソシストだもんね」
「あんたみたいなぺーぺー、俺たちがいなきゃ即死だっての。こういう時はちゃんと頼んな」
 先輩方の頼もしい鼓舞に励まされ、私はまず首から提げた十字架を手に取りました。そして聖水を指先にひたし、祝詞の詠唱を始めます。
「めでたし、聖寵充ち満てる聖女、主は御身と共にまします。御身は祝され、内なる主とともに祝せられ、恩寵の天使はこれを言祝ぎます」
 ――ねえ、Leader。これが貴方の課す試練だと言うのなら受けて立ちましょう。
「主よ、罪人なる我らのために、臨終の時を祈ることをお許しください。我が身に契約の証を。第一の証は暁の光に。第二の証は黎明のよすがに。第三の証は夜満ちる星に。私は祈ります。私は願います。私は請います――」
 私は確かに人間です。聖教会のExorcistと言えど、生まれたてのRookeyで、天使や妖精王に比べれば、吹けば飛ぶような弱い生き物に過ぎません。
 けれど。
「――Amen!」
 それ以上にKnightsの朱桜司だということを、今ここであなたの剣に懸けて示してみせます。