最後には二人でキスを



 好きにさせてやったんだから後始末をしろ、とオヤジが言った。カイは目ん玉ひんむいて「なんてことを!」みたいにちょっとだけぷんすかしたけど、オレが全然嫌がらずに「おう」って頷いたので、あわあわと顔を両手で覆って、オヤジはあっという間に身体を寛がせて、そんでまあ今に至る。
「ん……ふ、むぅ、はあ……」
 垂れ下がってきた前髪を耳に掛け直しながら、カイは一心不乱にオヤジをしゃぶっていた。あの小さな口から赤い舌をちろりと覗かせ、クリームでも舐めるみたいにぺろぺろし、かと思えば大きく口を広げてばくんと食らい付いたりする。
 カイは相当こういうのをやり慣れているようで、頷いたはいいもののまるで全然さっぱりどうしたらいいのかわかんなかったオレに、顔を赤くして気恥ずかしそうにしながらも、あれこれ教えてくれた。まずカイは「シン、筋に従って舐めるんですよ」と言ってオヤジのびきびきに浮き出た血管をねっとりと舐めあげた。それから、「根本は両手で支えて、睾丸を刺激してやるのが、ソルは好きみたいで」と小声で付け足す。「あとは、先っぽにキスすると、やたら喜ぶかな……」とこれも消え入りそうな声で続けた。自分が何を言っているのか段々よくわからなくなってきたという調子だった。でもそうしてる間も、カイの指は規則正しく動いてオヤジを隅々まで刺激している。
 とりあえずカイに言われた通りオヤジの筋を辿って、舌をぺって出して舐めると、これがもうなんて言ったらいいのか、絶妙なまずさが舌の上に広がっていった。苦い。ていうか変な味にもほどがある。でもすぐ近くで動いているカイの顔は、ひと舐めするたびに愛おしそうな目つきに変わっていって、オヤジがカイの頭を撫でて「うまいか」と訊ねると心底そう思ってるってふうに頷いた。
「う、うまいかあ……?」
「味蕾がどう感じるかっつうよりは条件付けだ、コイツのは」
 思わずそう口に出してしまったオレに、オヤジが素っ気なく答える。はあ、そんなもんかな。オレが呆けてふーんと頷いていると、オヤジは「テメェもやることに戻れ」とオレの頭を自分のちんちんに押しつけた。オレは仕方ないので、ぴちゃぴちゃ、ちゅぱちゅぱ、と聞こえてくるカイの舌舐めに加わった。まあ別に、オヤジの舐めるのは、そんな嫌でもない。カイのも、舐めろって言われたらフツーに出来る。家族の頬にキスをする感覚と、オレにとってはあんまり変わらなかった。違いと言えばやたら味がまずいぐらいだ。
 とはいえ、オレのやり方は、全然上手くはないらしい。カイに倣って見よう見まねでやってはみてるんだけど、オヤジは時々溜め息をついては「テメェはマジで下手くそだな……」とかなんとか、オレの方を見て言った。
 しょうがねえじゃん、はじめてだし。これがどういう目的のものなのかもよくわかってないし。けど……オレやカイがちろちろ舐めて、こびりついてた液体が拭い取られていくたび、オヤジのちんちんが反応して、でかくなったり震えたりするのは面白い。
 カイが先っぽにキスをして、じゅるりと零れ始めた液を吸い取る。オレはそのすぐそばに唇を寄せ、溝のあたりを吸い上げた。そうしていると、オレとカイとでオヤジにキスをしているのに、まるでオレとカイとでキスをしているみたいでもあって、妙に股間がもぞもぞして不思議な感じがした。