はつものぐいのその後



 入ってたから、そりゃまあ、続きをするだろう。ソルはぎゃあぎゃあ泣きわめく子供の叫び声に舌打ちをしながら腰を打ち付けた。入っていた理由にまったく思い当たるものはないが、他ならない自分の身体が繋がっていたんだから、まあなんか飲み過ぎたとかカッとなったとかの前後不覚があって、こうなったんだろうし。
「うるせえ、耳潰れる」
 大体最初は顔も態度も受け入れていたんだから、事を進めたぐらいで泣き叫ぶというのがどうも納得いかない。ソルが気がついた時には恍惚としはじめていたはずの表情が、今は見る影もなく、わけもなく夜泣きする赤子と同じ色に成り代わってしまっていた。カイは恥も外聞もなく泣き続け、唇を指で塞ごうとしてもはねのけてぎゃんぎゃんわめき散らした。身体だってソルのものに貫かれたまま全身をばたつかせ、暴れ子鹿を相手にしているみたいでひどく疲弊する。
 流石にこんなものを垂れ流していたら周囲の人間がこの部屋に突入を掛けてきてしまう。奥まで強引に突っ込んですぐにそう気がつき、防音結界は張ったが、正直、それをものともしないのではないかというぐらいカイの抵抗は手ひどい。カイに皮膚を噛まれるたび、ソルは何度も舌打ちをしてきつすぎるカイの胎内を仕置きのように抉った。するとカイはますます抵抗の手を強める。最悪の堂々巡りだ。
「いいからいい子にして大人しく犯されてろ、このクソガキ」
「やだやだ、いやです、だってソル、きゅうに、怖い……! 痛いし怖いし優しくないし……優しくないひととは、いや……!」
「あ? なんだ、その言い方は。誰かに優しくしてもらったことがあんのかよ」
「あなたですよ! あなたさっきまでは、あんなに優しかったのに……!」
「いや、知らねえし」
 一瞬「他の男を知っているのか」と身構えて余計に剣呑な声を出してしまったが、そのあたりの心配は杞憂に終わった。ソルの方にはまったく優しくしてやった記憶がないのだが――まあなんだ、幸せな夢でも見ていたのだろう。しかしそれはあくまでも夢なのだ。
「いや、もっと優しくして、きゅうにこないで、ゆっくりして……」
「出来ねえ相談だっつってんだろ……」
 ひたすら自分本位に腰を振り、狭苦しい場所を強引に暴き立てていく。伸縮性に富んだ成長期の身体とはいえ、性行為を知らない肉は既に限界を迎えており、ソルがいきり立ったものを抜き差しするたびに肉が引き攣れる音が派手に繰り返された。部屋の中は、肉が擦れる痛ましい音とじゅぶじゅぶ泡立つ淫猥な水音、カイの悲鳴、ソルのごろつきのような脅し文句でいっぱいだった。最初にカイがとろんとした目で受け入れていなければ文句なしにレイプと呼ぶべき光景だった。
 でもカイは、「抜いて」「やめて」とは決して言わない。カイの訴えは全て、「もっとやさしくあつかって」というお願いに終始していた。性行為自体は、よく分からないが受け入れている。ソルはかわいそうにな、と思ってもいない言葉を舌の根で転がす。ソルがもし、今よりほんの少しでも余裕のある大人だったら、そのお願いを叶えてあげられたのかもしれないが――せんないことだ。あんな中途半端で意識が戻ってきて、ゆっくり睦言なんか掛けてやろうと思えるほどソルは紳士ではない。
「どうして優しくしてくれないの!」
 一切手を緩める調子のないソルにいやいやを繰り返しながら、カイが涙声を必死に振り絞って尋ねる。ソルは鼻で笑う。
「俺が気持ちよくなりたいからに決まってんだろ」
「ずるい、ソル、ばっかり――」
「まあやってりゃそのうちテメェもよくなる」
「いつ」
「坊やが足腰立たなくなって生まれたての子鹿みてぇに俺に縋り付いてくる頃には、多分な」
 うそつき! というきれぎれの言葉は、ソルの分厚い身体に身体ごとべちゃりとプレスされてどこかへ消えて行った。本能的なものなのか、華奢な両足がソルの腰にしがみつき、強すぎる衝撃に備える。それをいいことにしこたま射精して、すっきりするまで粗方全てを吐き出し、ずるりと引き抜いた。
 少しだけ萎えを見せたソルの外性器に引き摺られるようにして、でろりと液体が漏れ出る。どろどろに濁った粘りけのある白に、鮮血が混じってひどい色あいだ。
「破瓜の血みてえ」
 舌なめずりをしてそう呟くと、カイは舌でも噛んで死んでしまいそうなか細い声で、「さっきも言ってたけど、なに、それ……」と漏らしながら生娘の如く潤んだ瞳をソルへ向けた。