04:神殺しの悪魔

 ヤードの前に不審者がいるらしい。年若い青年、いやまだ少年なのか、とにかくそれぐらいの子供だ。警備員が出ていって捕まえると少年はばたばた慌てて「人を待っているんです」と非常に言い訳がましい顔で釈明したそうだ。
 誰か、と胡散臭そうな声で聞いてやると今度は堂々たる顔になり「エド・フェニックス。今ヤードで《悪魔》――連続殺人事件の特別捜査員として協力をしているプロ・デュエリストでアカデミア本校卒業生の彼です」と答えた。
 ただのおっかけ、ファンにしては妙に詳しい。そう判断され「厄介事・トラブルは自前できちんと処理しろ」と干されてエドは応接室にしぶしぶ足を向けることになった。あまり愉快な気分ではない。知り合いにはその年頃の子供はいないのだ。
 その少年が一体どんなルートで詳細な個人情報を入手し得たのか(当然ながら当局に協力していることは丸藤翔等一握りの個人しか知らないことだし、彼等は簡単にプライバシーを言いふらすような人間でもない)も気になるが何より気分が良くないので顔を見たら一発叱ってやろうと考えてエドは部屋の戸を開けた。

 応接室に先に通されていた少年は、異常なまでにくつろいでいた。まるで当局のその部屋が私室なのだと言わんばかりにリラックスしている。だが問題はそれではなく、その少年がエドのよく知るそういう「ずうずうしい男」と非常に似通っていたことだった。
 まず手始めにエドは己の頭を疑った。それから今一度少年を観察し、どうやら見知った「青い方の馬鹿」ではないようだと結論付ける。少年はあの真青の綺麗な髪色をしていたが、瞳は必要以上に煌めいていた薄いグリーンではなく、灰ねずみだった。毛のくせも然程でもない。そして洋服のどこにもフリルがない。
 そこまで確認してエドはもう一度平静を装うとした。しかし、その目論見は次の瞬間打ち崩された。
「ようエド。物を食べるのが十年ぶりだからかもしれないけど、このお茶請け菓子けっこういけるぜ。十代なんか、カツ丼より喜ぶと思うからもし逮捕出来たら出してやってくれよ。……話、しないか? 例の《石畳の緋き悪魔》のことでちょっとさ」
 ウィンクなんかしてくる。エドは言葉を失いかけたが、なんとか踏み止まり、情けない声を出した。まるで死者の黄泉還りだ。冗談じゃない。
「嘘だろ。まさか、お前……ヨハンなのか?」
 ヨハンみたいな少年はその声ににやにや笑いながら「まあそういうことになるかな」などと言う。そして我がもの顔でカップの中の紅茶を飲み干し、「まあ座れよ」などとのたまった。どちらがホストなのかわかったものじゃない。
「心配しなくても十年前に『ヨハン・アンデルセン』はちゃんと死んでるよ。この体は借りもの。《悪魔》が恐らく十二番目に殺すであろう少年ハンスに訳を話して貸して貰ったんだ。今の俺は幽霊ってわけ。お前のとこに来た理由は他でもない悪魔確保の手助けをするためさ。どうだ? まだ信用出来ない?」
 もっと確たる証拠が欲しいのならそうだな、遊城十代のプロフィールをスリーサイズから座右の銘、ついでに性感帯まで含めて全て答えよう。冗談とも本気ともつかない調子でひらひらと手を振るその姿にエドはホールド・アップを決め込んだ。確かにヨハンでなければ、こんな悪趣味なことは言わないだろう。
 そして遊城十代の個人情報に関しては丁重に不要との旨を突き付けてやった。そんな面倒な情報は知りたくもない。


「で、何だ。例の殺人鬼はやっぱり十代の馬鹿だってそういう話か?」
「相変わらず呑み込みが早くて助かるよ。間違いなく十代がこの件の犯人だ。一緒に住んでるから間違いようがない。……この少年がじゃなくて、幽霊の俺が、な。それに俺の姿は向こうには見えてない。意志疎通が図れる状態ならそもそも一人も殺させなかったよ」
 エドの目が疑り深いものになったのであらかじめ弁明しておく。ハンス少年にはなんら非がないので、そういう疑いを掛けられるのは好ましいことではない。彼は少し世間ずれしたところこそあるものの普通の少年なのだ。顔がヨハンに似てさえいなければ《悪魔》に関わることも勿論なかっただろう。
「……わかったよ。それで十代の目的はなんだ。お前か?」
「ご命答。十二人の少年から一つずつ臓腑を抜き取って蒐集し、それを捧げて『チェーン・マテリアル』を使うつもりらしい。要するに人体蘇生だ。厳密には、容れものの俺の死体は完璧に保存してあるから魂を器に入れ込んで生き返らせる、ってつもりなのかな? その際俺の死体を維持してる精霊レインボー・ドラゴンが媒介になるから俺は『人間じゃなくなる』、『十代に近くなる』らしいんだがそこら辺はもうどうでもいい感じみたいだな」
「突拍子もないな。正直意味がわからない」
 趣味の悪いコレクションを生贄として死者を蘇らせる。ヨハンの説明を要約するとこうなるがしかし一切が意味不明だった。まず死人は生き返らない。しかも方法が理解出来ない。十二人を殺したからといって人が一人蘇生出来るものなのか?
 歴史上に一人で十二人もの人間を儀式的に殺していった存在などそうそういるものではないから(戦争での大量殺人は、儀式とは呼べないだろう)比較も何もしようがないが。
「だがそれを平然とやってのけるのが《石畳の緋き悪魔》だ」
 エドの表情の機微を読み取ってか、ヨハンがいやに真剣な顔で宣告する。
「そして遊城十代は、もう《赤いヒーロー》じゃない」
「……」
 本当にどうしようもなく馬鹿げた話だったが、ヨハンの話を信じない、そんなものはお前の頭に取り付いた虚言妄言の類だと断ずることはどうしても出来そうになかった。あの遊城十代という人間は――今はもう、人間と呼べるものではないのかもしれないが――能天気なだけの馬鹿に見えてその実絶大なる孤独と弱っちょろくて脆い精神をその内に抱えた男だった。彼にとって心を隅から隅まで許してしまえる唯一の存在であったヨハン、それを失っただけで恐怖支配を敷く虐殺者になった。
 十代という存在の根本を成す部分は酷く脆弱だった。砂の城より杜撰だ。
 あの時は「死んだ」と言いくるめられたことによる一時的なフィードバックみたいなもので、後遺症を残しつつも復帰することが出来た。だが今回はそうもいかないだろう。異世界の時のように都合よく死人共が蘇ることはない。殺人の罪はどこまでも付いてまわるし、そして何より、ヨハン・アンデルセンは確かに息を引きとっているからだ。
 ヨハンは死んだ。もう二度と蘇らない。
 蘇っては、ならない。
「その話を僕に聞かせてお前は一体何をどうしたいんだ?」
「十代を止められないか。既に殺されている八人の命はもう戻らないが、これからの四人はまだ間に合う」
「そんなことはもうとっくにやってるさ。だが皆目見当が付かずにこの有様だ……逆に聞くが、何故十代はきっかり十二人を殺そうとしているんだ? それもお前に似た面影を持つ少年ばかりを」
「話が多少曖昧というか、現実味のないものになるけどいいか」
「構わない。現実味なんてものは最初からなかったよ」
 エドの「心底うんざりだ」という顔にヨハンは乾いた笑いを返した。この男はきっと、事件が起きて捜査協力を要請されてから数ヶ月の間にずっとこんな顔をしていたに違いない。
「俺さ、前触れなくぽっくり死んだだろ。あれがさ、一種の呪いのようなものだったんだ。『悪魔は神を殺す』――このからくりに則って、『遊城十代にとっての神になったヨハン・アンデルセン』は死んだ――んだと。十代の意志に関係なく、『そういう摂理』が俺を殺したんだって十代は言ってた。狂言だと思ってても別にいいよ。エドにとって大事なのはそこじゃないからな。
 それで、十代は意図せず殺してしまった俺を何としても蘇らせようと呪術やらなんやら怪しい手段を十年間探し続けた。俺、ずっと隣にいたんだけどな。なんにもしてやれなかったよ。……ともかく十年経ってようやく十代はその手段に足ると信じられる方法に行き付いた、らしい。それが『チェーン・マテリアル』。かつての異世界でユベルが最後に用いて十二のモンスターを生贄に十二の異世界を統合し滅ぼそうとしたカードだ」
「そのカードは一体どういうテキストになってるんだ……」
「融合の補助カードだよ。錬金術を複合応用して拡大解釈を行い、そこに規格外の強力なエネルギーを注ぎ込むことで現実に効果を適用させてるんだ。カード自体がインチキテキストなわけじゃない。異世界で使われた時に力を蓄えてはいるだろうけどな……尤もそれ以上の詳しい原理は俺にはさっぱりわからない。ともかく、十代はカードに捧げる代償を十二の『死』とすることにした。十二人の少年から一つずつ臓器を抜き取り、綺麗なまま搬送してねぐらでガラス詰めにする。わざわざ一度体内に入れて搬送して吐き戻すぐらいだから、ひょっとしたら体内で何がしかの処置をしているのかもしれないけどそれはまあ憶測に過ぎない」
 ぞっとしない話だ。十二人の少年の死体から、一つずつ集められた十二の臓器。それが丁寧にガラスに詰められ蓋をされ、ショウ・ケースにケーキを並べるみたいに整然と、円を描いて陳列される。その中央には最愛の「死体」を抱えた《悪魔》。ネクロフィリアかあいつは、と毒づいた。想像された絵面は死体を愛でる異常性愛者そのものだ。
「ネクロフィリアよりも性質が悪いかもしれないなあ。別にあいつ、死体を愛でる趣味があるとか死体に興奮しているとか、そういうことは全然ないんだ。ただ俺の亡き骸をいつまでも後生大事に抱えて、うっとりしてる。うん、正直怖いよあれは。俺じゃなかったら叫んでキモいと泣いたかもしれない」
「つまりお前はどういう反応を取ったんだ」
「そんなに愛してくれてるのか思うと感極まって、抱き締め返してやるための腕がないのがもどかしくなった」
「全く似合いの変態だなお前らは。二人揃ってどうしようもない馬鹿だ」
「愛してるんだよ。それだけだ」
 ハンス少年の体を借りたヨハンは大真面目な声で告げた。「愛か」、とエドはもたつく言葉を繰り返す。難儀な言葉だ。声にすると口中が何だか妙な感じで気持ちが悪い。お伽噺のような感情だとそう思う。形がなく煩雑で、曖昧模糊としている。
 世の中には「愛」という奇怪な呪いのような言の葉を馬鹿に信奉している連中――ヨハンみたいな――輩もいるが、エド自身はそういうものを信用出来ない種類の人間だった。「愛は世界を救う」、「愛こそ全て」、そんなのは全て耳触りの良い詭弁だ。愛してたってどうしようもないことは山とある。あんなに愛してたのに、敬愛していたのに、エドの父はカードデザイナーであった故に殺された。もう十何年も昔の話だ。
「愛という単語を用いるのは大いに結構だが。その愛でもって十代はお前のために八人もの未来ある若者を殺したってそういうことを言いたいのか? それだけ愛されていると喧伝したいのかヨハン。馬鹿げてる、ナンセンスだ。確かにあの男ならそれをやりかねないというそのポイントがナンセンスだ」
「喧伝も宣伝もしたくなんかないね。ばかみたいだって俺だって思うよ。でもあいつ聞かないんだ。十年前にスイッチが入って、それからずっと方法を探してて、ようやくそれを手に入れた。悪魔にもなるさ。遊城十代は、俺が愛して俺を愛してくれた人は、あの日壊れてしまった。あの日からずっと狂ってる」
 憂いる横顔は借りている少年の体には似付かわしくないものだった。「壊れて」、「狂ってる」と紡ぐ声音は寂し気でもある。こんなかたちになってしまっても、かつて親友であった二人はお互いをまだ愛しているのだろう。
 だから片方は、愛しているから殺すのだと言う。もう片方は愛しているから殺させたくないのだと言う。
「……狂愛の殺人鬼か。ヨハン、お前はそいつをヤードが止められると思うか?」
「さあね。やってみなきゃ何にもわからないさ。……分が悪いとは思うけど。あいつにはもう容赦なんて多分ないから旧知のお前でもどうなるか予測は付かない」
「そうと知りつつも止めろって言うんだから虫のいい男だよお前は。……いいから情報を寄越せ。どうせもう乗りかかった舟だ」
「そう言ってくれると助かるよ」
 わざとらしく溜め息を吐いて肩を竦めて見せるとヨハンはほっとしたように胸を撫で下ろした。ずうずうしいこの男なりに気遣いや緊張があったようだ。ヨハンは深呼吸をしてから「それで情報なんだけど」と仕切り直しをする。
「十代がねぐらにしてる場所は、アイルランドの湾岸部にあるんだけどこっちはお勧め出来ない。生身で行けるような場所じゃないからな。本命は九番目の少年の方だ」
「詳細がわかるのか?」
「大まかにはな。次の被害者はイースト・エンドに住む《九番目のハインツ》――ハインツ・ウッドフォールド少年だ。日取りはわからない。ただ名前だけは間違いないはずだ、十代が写真を見て何度も繰り返してたのを覚えてる。俺よりちょっとくすんだ青色の髪の少年だよ」
「……そうか。やっぱり選考基準は『そこ』なんだな……」
 仄めかすように言うと「ああ」とヨハンは沈鬱な声を返した。
「ただ単に俺に似てる少年達が殺されてるんだ。新鮮な臓器ならきっとなんでもいいんだろうな。そんなこと俺はして欲しくないのに。俺のからだに、姿かたちに、そんなふうに執着されたってちっとも嬉しくなんかないっていうのに」
 「からだ」と「かたち」というフレーズが含みを持ってエドの耳を通り抜けていく。ふと思い当たることがあってエドは眉根を顰めた。そういえば最初にヨハンは悪質なジョーク紛いのことを言ってやいなかったか。
 あの、性感帯がどうこうという奴だ。
 そう考えると無遠慮な好奇心がわきあがってくる。例の《悪魔》の噂にも「絶世の美女」という項目があるぐらいだ。男らしいと言える程逞しかったわけではないが、それでも遊城十代は確かに男だった。
 その十代に女と間違われている噂がたつということはつまり、そういうことなのだろうか?
「……ヨハン。その、もしかして……お前は十代と、性的交渉を持ったりしたのか……?」
「ああ、セックス? したよ」
 あまりにもあっさりと答えが返ってきた。そのどこにも躊躇いがないものだから逆にエドが度肝を抜かれてしまう。
 しかも包んでおいたオブラートをばりばりと剥がされた。こいつは本当にわからない。
「俺は十代以外とそういうことをしたことがないからよくはわからないけど、抱かれてる間のあいつは普通の女の子とそう変わらなかったよ。小さい人間だった。皆が言うような殺人鬼じゃなかったし、悪魔でもなかった。俺の子が産みたいって言って泣いてた。……でも、俺はそれからすぐに死んでしまって」
 悪魔の特別――「神」になった男はそう言って俯く。
「もしそうでなければきっと、十代は本当に俺の子を宿してくれたのかもしれないけど」



◇◆◇◆◇



 イースト・エンド、近頃悪魔が頻繁に現れると噂になってめっきり人通りが少なくなった路地に二つばかり人影があった。
 一つは月明かりを背景にトレードマークの赤いジャケットを翻している。十二年前まではアカデミア本校に存在していた落ち零れ寮、「オシリス・レッド」の真っ赤な制服だ。この世界にあのジャケットをこんなに美しく見せることが出来る存在は一人しかいない。もう一つの人影の正体である丸藤翔はその考え得る限り最悪の予想が当たってしまったことに歯を噛み、唇をきつく結んだ。信じたくなかった。
 剥き出しにされ、そのうえ幾つもの肉塊にバラされた中身を晒すグロテスクな「リバース死体」を足元に横たえて立っているその人物は《石畳の緋き悪魔》やら《魔女メーディア》などと噂される殺人鬼に相違ないのだろう。全身に飛び散った返り血でジャケット以外も赤く染まっている。整った顔もご多分に漏れず血に濡れていた。しかし、それでもその人の美しさというものは損なわれていない。むしろ妖美な印象を与えている。
 《悪魔》が手に持った何かをごくりと丸呑みし、それからこちらに気付いたようでゆっくりと振り向く。びくりと全身が震えたのがわかった。十年前で止まっている記憶の中の姿と何一つ変わらないその人の姿が恐ろしかった。
「アニキ……」
 消え入りそうな声で名前を呼ぶ。「アニキ」と呼ばれるとその人は嬉しそうににへらとだらしなく笑って、すごくにこにこしながらこちらに歩み寄ってきた。死体は放置しっぱなしで、その人自身は血の匂いと死の匂いを色濃くまとったままだった。
「あれぇ、翔じゃん。何年ぶりだ? 十年ぐらい? 結構お前も老けたなぁ。まあ、しょうがないのかな……」
「アニキ……アニキは、変わらないね……」
 翔は下を向いたまま力なく言葉を絞り出す。信じたくはなかったが、しかし現実は冷酷だった。その人は血の匂いと死の匂いと一緒に、あのひなたぼっこをしている猫みたいな独特の匂いもまだ併せて持っていた。翔が学生時代にずっと追いかけていた向日葵の匂いだ。太陽のような《赤いヒーロー》の匂い。
 でももうその人はヒーローなんかじゃないのだ。殺人鬼と呼ばれる存在なのだ。マーダーで、ジェノサイダーだ。
 翔は震える唇を無理に動かして掠れた声を紡ぎ出す。気安いふうに立っているその人がいぶかしむような顔になる。
「おい翔、どうしたんだよ。どっか具合でも悪いのか?」
「……ヨハンのこととなると途端にそうだ。神様みたいにも、悪魔みたいにもなる。ねえ、聞かせてよアニキ。そこで何をしてるの? 答えてよ。アニキ――いいや、《石畳の緋き悪魔》!!」
 アニキと呼ぶのを止めて叫ぶと、《悪魔》は酷く切なそうに目を細め、そしてすっと表情を消した。「翔も、俺のこともうそういうふうにしか見てくれないんだな」。そう漏らして無情な面を上げる。
「その呼び名はあんまり好きじゃないな。ましてや翔に呼ばれるのは、好きじゃない。なあ翔、俺も聞きたいよ。どうしてそんな目で俺を見る? どうしてディスクなんか構えてるんだ? 俺がヨハンを愛することはそんなに――ダメかな?」
 何がいけないのか、何が正しくて何がおかしいのか、ちっともわからないのだというふうにその人は嘯いた。でもそれは嘘だ。欺瞞だ。だってそう問い掛けながら悪魔は、《遊城十代》は泣いていたのだから。
「どうして、みんな、俺を阻もうとするんだ……?」
 本当はその人は、知っているのだ。
 何が正義で何が悪かを。

 遊城十代はいつだってそういうひとだった。